高市首相、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦へ 安倍政権から続く“対米外交”の継承

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ホワイトハウスは28日、日本の高市早苗首相がドナルド・トランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦する意向を示したと明らかにした。

報道官のカロライン・レビット氏によると、高市首相は同日、東京でトランプ大統領と会談し、「彼の指導のもとで、世界はより平和を享受し始めた」と述べたという。両者は経済協力や安全保障を中心に意見交換を行ったとされる。

高市氏によるノーベル賞推薦の動きは、日米関係の緊密化を示す一方で、国内外で賛否両論を呼んでいる。


出典:Reuters


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補足説明

今回の日米首脳会談の位置づけ

今回の日米首脳会談は、2025年10月28日に東京で実施されました。高市早苗首相にとっては就任後初めての米大統領との会談であり、経済安全保障、防衛協力、対中政策などが主な議題となりました。

今回のトランプ大統領の訪日は国賓待遇ではなく実務訪問の形式で行われています。前回、トランプ氏が国賓として日本を訪れたのは2019年5月で、当時の安倍晋三首相のもと、令和初の国賓として皇居での晩餐会や大相撲観戦が行われました。今回の訪問はそれと異なり、儀礼的行事よりも政策協議を重視した実務的な内容となっています。

会談後、ホワイトハウスは高市首相がトランプ氏をノーベル平和賞に推薦する意向を示したと発表しました。高市氏は記者団に対し「彼の指導のもとで世界はより平和を享受し始めた」と述べたとされ、この発言は友好の姿勢を示すと同時に、トランプ政権との関係を強調する政治的メッセージとして受け止められています。

ノーベル平和賞の背景とオバマ氏の受賞

ノーベル平和賞は、平和の促進に顕著な貢献をした個人や団体に授与される賞で、推薦は各国の議員、学者、過去の受賞者などが行うことができます。候補者名は50年間非公開とされ、毎年300件を超える推薦が寄せられますが、最終的に受賞に至るのはごく一部に限られます。

過去には2009年、当時のアメリカ大統領バラク・オバマ氏が「核兵器なき世界」を掲げた演説を理由に受賞しました。しかし当時から「実績よりも期待が先行している」との批判があり、受賞を疑問視する声もありました。

トランプ氏はこの点をたびたび引き合いに出し、「オバマは何もしていないのに受賞した。私はそれ以上のことを成し遂げている」と発言しています。こうした経緯から、トランプ氏にとってノーベル平和賞は、外交的成果と自己の正当性を象徴する存在となっています。

国際的な反応と文脈

一方で、今回の推薦発言に対しては、国際社会から懐疑的な見方も多く寄せられています。現在もイスラエルとハマスの停戦交渉、ロシアとウクライナの戦争、さらには米国によるベネズエラ情勢への関与など、世界各地で紛争が続いている状況です。そうした中での「平和賞推薦」という発言は、象徴的な外交ジェスチャーにすぎないとの見方も広がっています。

また、トランプ政権下ではアフガニスタン撤退の混乱や米国内の分断なども生じており、平和的実績との整合性を疑問視する声も根強くあります。今回の高市首相による発言は、日米関係を重視する外交的メッセージとして注目されつつも、国際的には「友好を演出するための政治的行為」として受け止められているのが現状です。


海外の反応

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


世界は今、私の人生の中で最も「全面戦争勃発」に近い状況にあると思う、笑


つまり日本にも今やイカれたリーダーが誕生したってことか。最高だな……


そうとも限らないよ。みんなトランプがバカだって知ってるし、彼とその取り巻きを除けば、誰も本気で彼の発言を重要視してない。彼の自己愛を利用して自分たちの得にするだけ。皇帝は裸だよ。


トランプのような人物から譲歩を引き出したいなら、俺も同じことを直接言うだろう。
アメリカは彼を選んだんだから、世界の指導者たちは彼のエゴを操るのがいかに簡単か知ってる。
多くの指導者は、トランプと会っている時の態度が、実際の彼への評価とは正反対だと思う。
彼がそんな単純なことで操られるなんて、本当に情けない。「偉大な交渉人」だって?笑わせるな。


日本は「酔っ払いの叔父さん」の扱い方をよくわかってるな、笑


どの指導者が本気で支持してるのか、それとも単に報復を恐れてお世辞を言ってるだけなのか、見分けるのは難しい。


誰かマンゴー(=トランプ)にイグ・ノーベル賞をやれよ。本人は違いに気づきもしないだろ。


この調子なら、中国はトランプをノーベル賞に推薦して、TSMC(※台湾の半導体製造企業)の10%を賄賂に渡せば、そのまま台湾に侵攻できるな。


現実として、各国の指導者たちは「彼の気に入ることを言えば自国が得をする」と分かってる。実際に行動に移す必要なんてないんだよ。


高市は日本史上最も人気のある首相になる。
自民党は圧勝し、次の選挙で大勝する。
その時、彼女はトランプと組んで憲法9条を撤廃し、日本を再軍備させる。
そして在日米軍の駐留は大幅に縮小される――
それが未来だ。
(3年後にリマインドしてくれ)


いや、ならないね(笑)


現実逃避乙。


3年後の2028年10月28日にこのコメントを思い出させてやるよ。


考察・分析

外交発言としての戦略的意図

今回の高市早苗首相による「トランプ氏ノーベル平和賞推薦」発言は、単なるリップサービスではなく、外交的継承と戦略的計算を含むものとみられます。
特に注目されるのは、安倍晋三元首相が2018年頃、当時のトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したと報じられた前例です。トランプ氏自身が「安倍首相から最も美しい推薦状をもらった」と語ったことで話題となり、日本政府は「制度上コメントできない」としながらも否定はしませんでした。つまり今回の高市首相の発言は、安倍政権の外交路線を引き継いだものとしての位置づけを持ちます。

安倍氏は当時、北朝鮮問題をめぐる米朝首脳外交を支持し、トランプ政権との信頼関係を最重視していました。高市氏も同様に、トランプ政権との連携を通じて日本の安全保障基盤を固めようとしている点で、外交的な一貫性があります。今回の「推薦」は、そうした流れを意識的に踏まえた“継承のメッセージ”といえます。

トランプ外交の「功」と「罪」

過去のトランプ政権を振り返ると、全面戦争を回避した「戦争をしなかった大統領」として一定の評価を受ける一方、国際秩序を動揺させた行動も多くありました。イスラエルとアラブ諸国の国交正常化を実現した「アブラハム合意」は成果として挙げられるものの、イラン核合意からの離脱やNATOとの緊張、議会襲撃事件など負の遺産も残しました。
こうした中で高市首相があえて「平和賞」という文脈で彼を評価したのは、トランプの外交的影響力を再び利用するための現実的判断といえるでしょう。

高市首相の狙いと外交的効果

高市首相にとってトランプ政権との関係強化は、日本の防衛産業政策や経済安全保障を進めるうえで重要です。日本が防衛費を過去最大規模に拡大する中で、米国との連携を再確認する象徴的な場が今回の会談でした。「平和賞推薦」という発言は、トランプの自尊心を刺激しつつ、日米関係の安定を優先する意図があったと考えられます。
特にトランプ氏が「オバマは何もしていないのに平和賞を受けた」とたびたび語ってきたことを踏まえれば、高市首相の発言は彼の心理を熟知した“賛辞外交”とも言えます。

国際社会の受け止め方

一方で、イスラエルとハマスの衝突、ロシア・ウクライナ戦争、ベネズエラをめぐる米国の関与など、世界的に紛争が続く現状において「平和賞推薦」という言葉の響きは軽く聞こえるとの指摘もあります。国際社会では、高市首相の発言を日本の対米戦略の一環として理解しつつも、「政治的ジェスチャーにすぎない」と冷ややかに見る声が多いのが実情です。

総括

高市首相による今回の発言は、安倍元首相の外交遺産を受け継ぎつつ、再びトランプ政権に接近する日本外交の“再構築宣言”でもあります。安倍氏が築いた「個人的信頼関係を軸にした日米同盟」を高市氏が再び形にしようとしていることは明らかで、これが将来の米政権交代を見越した布石である可能性も高いでしょう。

ただし、「ノーベル平和賞」という象徴的な言葉を利用する手法は、政治的に効果的である一方で、国際的な批判を招きやすい両刃の剣でもあります。戦争が続く世界で“平和”を掲げる意味をどう再定義するか。日本の政治リーダーがこの言葉をどう使うかが、今後の外交姿勢を測る指標となるでしょう。



関連書籍紹介

『ぶち壊し屋(上):トランプがいたホワイトハウス2017-2021』

ピーター・ベイカー/スーザン・グラッサー 著(早川書房、2024年9月刊)

トランプ大統領の前政権時代。その4年間を内側から描いたのが、この『ぶち壊し屋』です。
ホワイトハウス主任記者として歴代政権を取材してきた著者が、300件を超える独占インタビューや日記、メールなどの一次資料をもとに、混乱の時代を克明に記録しています。

ツイッターでの暴言、側近の大量更迭、即興的な外交――本書は「なぜトランプがあのように振る舞うのか」を、証言と事実で浮かび上がらせます。
「オバマより多くを成し遂げた」と語った本人像、その背景にある自己愛と衝動、そして周囲が振り回される構図。
今回の高市首相による“平和賞推薦”のニュースを理解するうえでも、トランプという人物像を知る格好の資料です。

アメリカの民主主義を揺るがせた4年間を、現場の記者が見た決定版。政治の裏側に関心がある方には特におすすめです。


『WAR(ウォー) 3つの戦争』

ボブ・ウッドワード 著/伏見威蕃 訳(日本経済新聞出版、2025年1月刊)

「つぎは台湾です。」
「そのとおりだと思う」とトランプは言った――。

ウォーターゲート事件をスクープした伝説的記者ボブ・ウッドワードが描く、現代世界の「戦争」最前線
本書は、ウクライナ、中東、そしてアメリカ国内政治という“3つの戦場”を通して、世界がどのように崩壊の淵に近づいているかを克明に記録したノンフィクションです。

中でも印象的なのは、トランプ、プーチン、習近平といった権力者たちのやり取り。
トランプがバイデン政権後も“影の大統領”のように政治的影響力を保ち、プーチンやネタニヤフ、金正恩とどのように駆け引きしてきたか。
「第三次世界大戦の瀬戸際」と本人が語るほど緊張した国際情勢の裏側を、取材記録と証言で再現しています。

レビューでは、緊張感ある筆致や詳細な取材力を評価する声が多い一方で、翻訳の硬さに戸惑う意見も見られます。
それでも、「この数年の世界の動きを改めて整理できた」「裏で進む政治のリアルを感じる」といった高評価が目立ちます。

今回の記事で取り上げた“トランプ再浮上”の流れをより深く理解したい人にとって、まさに今読むべき一冊です。
国際政治の表と裏、そして「戦争」という言葉の意味を問い直す良書といえるでしょう。


参考リンク

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