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10月の東京23区における新築小規模戸建ての平均希望価格は8667万円と前月比2.9パーセント上昇し、過去最高を2カ月連続で更新した。前年同月比では17.5パーセントの伸びとなり、特に千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷の都心6区では高級物件の供給が相次いだことで平均価格が1億7997万円に達し、62.6パーセントもの大幅上昇となった。
一方で、世田谷や品川など城南・城西エリアの上昇率は23.2パーセント、城北・城東エリアは6.6パーセントと都心に比べて緩やかで、価格差が広がっている。マンション価格の高騰を背景に戸建て需要が強まっており、首都圏全体でも平均価格は5947万円と上昇したが、横浜市や相模原市など一部都市では下落が見られた。
出典:日経新聞
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海外の反応
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
タワマンの統計と同じ問題だよ。短い期間だけ切り取ると、その月にどんな家が建ったかで平均価格が大きく揺れる。タワマンほど極端じゃないけど、そもそも都心では毎月そんなに戸建てが建つわけじゃないし。
高級エリアの家がたくさん建てられてて、それが平均を押し上げてるんだと思う。それに円安で輸入建材も高い。とはいえ、新築価格が上がってるのは間違いないよ。うちの近所なんて、もう4000万円未満の新築は存在しない。どれも100平米前後の2階建てで駐車場が1〜2台分。自分の時はもうちょい安かったんだけどね。
戸建て価格は確実に上がってるよ。インフレ、人件費、建材費の高騰、それに土地価格。全部効いてる。
海外の反応の続きはnoteで読むことが出来ます。
考察・分析
都心戸建ての「数字が振れやすい構造」
都心部の戸建て価格が大きく跳ね上がる背景には、そもそもの市場規模の小ささがあります。千代田区や港区などの都心6区では、戸建て用地そのものが極めて限られ、年間の供給件数も多くありません。そうした市場では、広めの高級戸建てが数件まとまって売り出されただけで平均値が容易に押し上げられます。
今回の前年比62.6パーセントという数字は衝撃的ですが、これは「都心の新築戸建て」という非常に狭い領域で起きた現象です。公示地価や実際の取引価格の伸びが年数パーセント台にとどまっていることを踏まえると、この数字は市場構造の偏りを強く反映した結果だと考えられます。
ただし、「極端な数字が出やすい」特性がある一方で、都心部でじわじわ価格が上昇し続けているのも事実で、原価や土地の希少性が価格の底を確実に押し上げています。
建築コストとマクロ環境が価格を押し上げ続けている
ここ数年、建築費の上昇は不動産価格にとって無視できない要因になっています。資材高、人件費の増加、円安による輸入建材のコスト増などが重なり、戸建ての原価が以前より高くなりました。
さらに、日本では超低金利が続き、住宅ローンの金利負担が海外と比べて極めて低い水準です。そのため、価格が上がっても需要が大きく落ちにくい環境にあります。人口動態の面でも、地方から東京圏への流入が続いており、「全国的に空き家が増える一方で、都心だけ高騰する」現象が起きやすくなっています。
東京は世界主要都市と比べて「割安」と見られてきた側面があり、海外から見れば今回の価格の伸びも不自然ではないという評価もあります。都市としての需要が集中し、土地が極度に限られたエリアである以上、都心部の価格が大きく下がる局面は考えにくい状況です。
外国人買い占め説より強い「国内の構造要因」
日本では不動産価格が上がると「外国人が買っているからでは」という疑問がしばしば出ます。しかし新築戸建てに関しては、投資目的で扱いやすいタワーマンションとは全く事情が異なります。戸建ては管理負担が大きく、流動性も低いため、海外投資家が積極的に購入する市場ではありません。
実際の買い手は国内の実需層が中心で、ここ数年は株高で資産を増やした高齢世代が相続税対策として不動産を選ぶケースが増えています。また、マンション価格が高騰する中で「同じ価格なら戸建ての方が広い」という判断をする世帯が増え、新築戸建ての需要を高めています。
つまり、今回の価格急騰は外国人マネーよりも、日本国内の人口動態・家計構造・資産背景・税制といった複数の国内要因の延長線上にあると言えます。
都心の住宅市場が示す「二極化」の進行
今回のデータは、東京23区内での二極化がさらに進んでいることを示しています。都心6区が突出して高騰する一方で、城北・城東エリアの伸びは緩やかで、横浜市や相模原市ではむしろ価格が下落しています。
背景には
- 都心部の土地の希少性
- 東京圏への人口集中
- マンション価格の高騰による実需の変化
- 低金利と相続税対策が生む購買力
- 建築コストの継続的な上昇
といった複数の要因が重なっています。
数字の極端さだけに目を奪われると「異常値」に見えますが、長期的な流れとしては都心部の不動産が高値を維持しやすい構造が強まり、結果として「一部エリアだけが極端に上がる」という状態が固定化しつつあります。
こうした背景を踏まえると、今回のニュースは単なる短期の価格変動ではなく、日本の不動産市場が抱える深層的な構造変化を映し出していると捉えることもできます。
この視点を押さえておくと、この後紹介する海外ユーザーの反応がどの点を問題視し、どの点を評価しているのか、より理解しやすくなります。
総括
今回の都心戸建て価格の急伸は、複数の要因が重なり合った結果として生じたもので、市場の構造的な特徴が強く表れています。
都心部では戸建て用地そのものが極めて限られており、供給がわずかに偏るだけで平均価格が大きく動きます。こうした希少性に加え、建築費の上昇や人件費の増加、円安による材料費の高騰など、原価を押し上げる要素が積み重なっています。
また、東京圏への人口流入や超低金利の継続により、都心部では住宅需要が高いまま維持されています。マンション価格の上昇が続く中で、「同じ価格帯なら戸建ての方が広く、築浅の物件が手に入りやすい」という判断が働きやすい環境も整っています。
その結果、都心と周辺区の価格差がより鮮明になり、東京23区内でも住宅市場の二極化が進んでいます。価格の急伸そのものよりも、この地域差の固定化が今後の住宅選択や都市構造にどんな影響を与えていくのかが重要な論点と言えます。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
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相場が上がり続けている環境だからこそ、判断軸を持つための一冊としておすすめです。
参考リンク
東京カンテイ(新築小規模戸建て価格データ)
https://www.kantei.ne.jp/report/category/single_family/
東京都財務局(東京都内の地価公示データ)
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/kijunchi/chikakouji/r6kouji
建設物価調査会(建設資材物価・建築費指数)
https://www.kensetu-bukka.or.jp/indexgraph/shizai.html


