【せかはん失敗学】条件は良いのに、なぜ噛み合わないのか 中道改革連合から考える「連立」と人生の選択

今回の記事は、「せかはん(世界の反省)|歴史から学ぶ失敗学」シリーズです。

世界の歴史を振り返ると、そこに刻まれているのは、栄光の成功譚よりも、むしろ数え切れないほどの失敗の記録です。
なぜ私たちは、過去の出来事や、目の前で起きているニュースをわざわざ追いかけ、そこから何かを学ぼうとするのでしょうか。

理由はシンプルです。
成功は偶然や時代背景に左右され、再現性が低い一方で、失敗には驚くほどの再現性があるからです。

時代が変わり、技術が進歩し、社会制度が洗練されても、
組織や国家、そして私たち個人がつまずく構造そのものは、ほとんど変わりません。

権力を過信する。
正しさを疑わない。
数が揃えば何とかなると錯覚する。
根本的な価値観の違いを、後回しにしてしまう。

こうした「失敗の型」は、何十年どころか、何百年、時には何千年という単位で繰り返されてきました。

本シリーズでは、日々流れていく政治や国際情勢のニュースを、単なる時事ネタとして消費するのではなく、
過去の歴史や、国家・組織が犯してきた失敗と照らし合わせることで、その背後にある構造を読み解いていきます。

そしてそこで見えてきた教訓を、
私たち一人ひとりの選択、
仕事やキャリア、人間関係、そして「どうすれば消耗せずに生きられるのか」という問いへとつなげていく

それが、「せかはん失敗学」が目指している視点です。


はじめに:歴史は「数合わせ」に冷酷である

日本の政界再編を語るとき、「歴史は繰り返す」という言葉ほど重い警告はありません。
特に野党再編の歴史は、成功譚よりもむしろ、数合わせに走った末の崩壊例で埋め尽くされています。

現在、公明党と立憲民主党を軸とする新党「中道改革連合」が発足しました。
注目すべきなのは、この動きが「自民党が弱体化しているから」ではない点です。
むしろ状況は逆で、高市政権発足後の自民党は高い支持率を維持し、政権基盤は安定しています。

だからこそ、この新党結成は
「追い詰められた野党側の生存戦略」
として理解する必要があります。

小選挙区制度の下で、分散した野党が個別に戦えば勝ち目は薄い。
ならばまとまるしかない。
その判断自体は、数学的には合理的です。

しかし、日本政治の歴史は、こうした合理性だけで組まれた連立に、極めて冷酷でした。
理念や価値観の整理を後回しにしたまま数を優先した組織は、例外なく内部から崩れてきたのです。

本稿では、中道改革連合の成否を占うことを目的としません。
彼らが足を踏み入れた場所が、過去にどのような地雷原だったのか。
その構造を、歴史の失敗事例から冷静に確認していきます。


第一章:権力と引き換えに「自分たち」を失った連立

自社さ連立政権の教訓

1994年、日本政治史上きわめて異例の連立政権が誕生しました。
自民党、社会党、さきがけによる、いわゆる自社さ連立政権です。

この連立が持つ意味は、単なる政権交代劇ではありません。
それは、理念の不整合を抱えたまま権力を優先したとき、組織がどうなるかを示す象徴的事例でした。


宿敵同士の結託

当時、自民党と社会党は、戦後政治における完全な対極に位置していました。
安全保障、憲法観、経済体制、いずれを取っても相容れない存在です。

にもかかわらず、社会党は自民党と手を組み、村山富市氏が首相に就任します。
その代償として、社会党は長年掲げてきた
自衛隊違憲論、日米安保反対
という党是を事実上放棄しました。

これは「現実路線への転換」とも表現されましたが、結果的には妥協ではなく変節として受け止められました。


短期安定と長期崩壊

政権運営自体は、短期的には安定します。
自民党の官僚統制力と行政経験が、政権を支えたからです。

しかし、その裏で社会党の支持基盤は急速に瓦解しました。
有権者が見ていたのは、政策の修正ではなく、存在理由そのものの否定だったからです。

その後、社会党は社民党へと再編されますが、かつての影響力を取り戻すことはありませんでした。

この事例が残した教訓は明確です。
権力を得るために「自分たちは何者か」を否定した組織は、必ず長期的に崩れる。


第二章:「排除」が生んだ分裂

希望の党騒動の構造

2017年、もう一つの象徴的失敗が起きました。
希望の党への合流騒動です。

当時の民進党は、党勢低迷の中で大胆な決断を迫られていました。
党を解体し、新たな器に合流する。
これもまた、「数」を求めた判断でした。


踏み絵というOS確認

希望の党が突きつけた条件は、安全保障法制への賛否でした。
これは失言として語られることが多いですが、本質は別にあります。

安全保障は、政党にとって政策の一部ではなく、国家観そのものです。
この点を曖昧にしたまま政権を目指せば、いずれ必ず破綻する。

その意味で、OSの一致を求めた判断自体は、組織論として理解可能でした。


致命的だった順序

問題は、その確認を選挙直前に行ったことです。
結果として野党は分裂し、自民党を利する結果となりました。

ここでの教訓は明確です。
OSの確認を後回しにしたまま数を集めると、最悪のタイミングで分裂が起きる。


第三章:中道改革連合が抱える最大の矛盾

安全保障という火薬庫

では、今回の中道改革連合はどうでしょうか。

最大の論点は、やはり安全保障です。

公明党は、与党として安保法制を成立させた側。
立憲民主党は、その安保法制への反対を起点として誕生した政党です。

この両者が一つの政党になるということは、論理的に次の二択しかありません。

変節か、棚上げか

一つは、どちらかが過去の立場を否定する道。
これは自社さ連立型の変節であり、支持層の離反を招く可能性が高い。

もう一つは、この矛盾を曖昧にしたまま進む道。
それは民主党政権が直面した「決められない政治」を再生産する危険を孕みます。

「中道」という言葉は便利ですが、
中道とは本来、理念なき平均ではありません。
確固たる価値観を持った上での調整能力です。

この点を有権者に説明できなければ、中道改革連合は
「改革」ではなく「野合」と見なされるでしょう。


人生に活かす「失敗学」

さて、ここまで政治と組織の失敗について語ってきました。 しかし、冒頭でも触れた通り、これと全く同じ「失敗の構造」は、実は私たちの個人の人生(転職、結婚、人間関係)でも起きています。

  • 条件だけで選んだ会社で、なぜか評価されない。
  • 「寂しいから」という理由で付き合った相手と、泥沼にはまる。
  • 周りに合わせて自分を押し殺していたら、誰からも信頼されなくなった。

これらはすべて、政治で言う「野合」や「変節」が、あなたの人生で起きている証拠です。

note版の後半パート(有料)では、この歴史的教訓を個人の生存戦略に落とし込み、「人生における致命的なミスマッチ(不幸な連立)を避けるための3つの思考法」について解説しています。

「政治の話」を「自分の話」として回収したい方は、ぜひ続きをご覧ください。

👉 [noteで続きを読む:人生における「無理な連立」を避ける技術]


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関連書籍紹介

歴史の「失敗」をより深く学びたい方へ

今回の新党騒動を、単なる「今のニュース」として消費するのではなく、日本という国や組織が抱える「構造的な欠陥」として理解したい方に、2冊の古典的名著を紹介します。
どちらも、なぜ日本人は「空気」で物事を決め、破滅するとわかっていながら「野合」をしてしまうのか、その答えが書かれています。

1. 日本組織の失敗の原点

『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』
(戸部 良一 ほか著 / 中公文庫)

もはや説明不要の「失敗学」のバイブルです。 大東亜戦争における日本軍の敗因を分析した本ですが、これを読むと「今の野党がやろうとしていること」が、かつての日本軍と全く同じであることに戦慄します。

  • 戦略(理念)の不整合を、精神論や人間関係でカバーしようとする。
  • 都合の悪いデータ(現実的な安保環境)を無視して、「こうあればいいな」という希望的観測で計画を立てる。
  • 「空気」が支配し、論理的な反対意見が封殺される。

今回の中道改革連合が陥りそうな「曖昧な妥協」の正体が、この本には70年以上前から予言されています。政治に限らず、日本の組織で生きる全ビジネスパーソン必読の一冊です。


2. 政治家が「魂」を売るとき

『職業としての政治』
(マックス・ヴェーバー著 / 岩波文庫)

記事の中で、社会党の村山政権を例に「変節」の罪深さを説きましたが、その元ネタとも言えるのがこの講演録です。 社会学の巨人ヴェーバーは、政治家には「情熱」「判断力」「責任感」が必要だと説くと同時に、政治家が陥りやすい最大の罪は「虚栄心(自分を大きく見せたい欲)」であると断じています。

  • 「信念倫理(自分の正義を貫くこと)」
  • 「責任倫理(結果に対して責任を負うこと)」

この二つの間で引き裂かれながら決断するのが政治家の本分です。しかし、単なる「権力欲」や「数合わせ」で動く政治家は、このどちらも持っていません。
現代の政治家たちが、この本に書かれた「悪魔との契約」をどう果たそうとしているのか。冷徹な視点を養うための最高の手引書です。


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