世界初、日本が深海レアアース泥の回収に成功 示される日本の選択肢

ニュース

日本政府は、中国への依存度が高いレアアース供給を多様化する取り組みの一環として、南鳥島沖の深海でレアアースを含む泥の採取に成功したと発表した。

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が、地球深部探査船「ちきゅう」を用い、水深約6000メートルの海底から堆積物を回収した。今回の試掘は実験的な位置付けで、回収された泥に含まれる希土類元素の種類や含有量について、今後詳しい分析が行われる。

レアアースは電気自動車や再生可能エネルギー、防衛関連技術などに不可欠な資源で、現在は中国が精製・供給の大部分を占めている。日本政府は、今回の成果を将来的な商業化や経済安全保障強化につなげたい考えで、2020年代後半を見据えた本格的な実証試験を検討している。

出典:Reuters


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補足説明

レアアースとは何か

レアアース(希土類元素)とは、ランタノイド15元素にスカンジウムとイットリウムを加えた、計17元素の総称です。電気自動車のモーター、高性能磁石、風力発電、半導体、通信機器、防衛関連装備など、現代の先端技術に欠かせない材料として使われています。

名前に「レア(希少)」と付いていますが、地球上にほとんど存在しないという意味ではありません。多くの場所に微量ずつ広く分散して存在していること、そして化学的性質が非常によく似ているため、目的の元素だけを分離するのが難しいことが、供給上の制約になっています。

この「分離の難しさ」こそが、レアアース問題の本質とされています。


今回採掘に成功した「レアアース泥」とは

今回、日本が試験的に回収したのは、南鳥島周辺の深海底に堆積した「レアアースを多く含む泥(堆積物)」です。研究論文などでは「REY-rich mud(レアアースおよびイットリウムに富む泥)」と呼ばれています。

この泥は、海洋中のレアアースが長い時間をかけて堆積し、生物由来の粒子などに吸着されて集積したものと考えられています。場所によっては、陸上の鉱石と同等、あるいはそれ以上の濃度が報告されています。


鉱石と比べた場合の利点

海底レアアース泥が注目される理由の一つは、陸上鉱石と比べていくつかの技術的な利点が指摘されている点です。

まず、放射性元素(ウランやトリウム)の含有量が比較的少ない可能性があるとされています。陸上のレアアース鉱山では、これらの元素が副産物として多く含まれる場合があり、廃棄物管理や安全対策が大きな課題となってきました。海底レアアース泥では、このリスクが相対的に小さくなる可能性があります。

次に、物理的な選別の余地がある点です。レアアース泥は均一な鉱石ではなく、レアアースを多く含む粒子とそうでない粒子が混在しています。粒の大きさや比重などを利用して、処理対象をある程度絞り込めれば、後工程の負担を減らせる可能性があります。

こうした点から、「鉱石に比べて精製時の環境負荷が小さくなり得る」と説明されることがあります。


それでも残る本質的な課題

ただし、ここで注意が必要です。

レアアースの分離精製が難しい理由は、元素同士の化学的性質が非常によく似ていることにあります。そのため、最終的には多段階の化学処理を経て、少しずつ元素を分けていく必要があります。

この工程では、多くの薬品やエネルギーを使用し、副生成物や廃液の管理も欠かせません。
これは鉱石であっても、泥であっても、基本的な構造は変わりません。

つまり、海底レアアース泥は「魔法のように簡単にクリーンに精製できる資源」ではなく、精製工程そのものの難しさは依然として残ります。


環境負荷は「消える」のではなく「形を変える」

もう一つ重要なのは、環境への影響が完全になくなるわけではない、という点です。

陸上鉱山では、鉱山周辺の土壌汚染や廃棄物管理が大きな問題になってきました。一方、深海採掘では、海底生態系の攪乱や、堆積物が舞い上がることによる広範囲への影響が懸念されています。

また、回収した泥を精製する工程自体は、最終的に陸上で行う必要があります。つまり、環境負荷が「なくなる」のではなく、場所や形が変わる可能性が高い、というのが現時点での慎重な見方です。


海外の反応

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


深海採掘は環境にとってかなり悪いと考えられている。海底にはいろんな生物が住んでいるし、採掘で泥の雲を巻き上げるのも有害になり得る。


残念だけど、採掘はどこでやっても悪影響が出る。大規模にやらないと成り立たないからだ。
特にレアアースは話がさらにややこしい。レアアース自体は実はすごくありふれているが、高密度の鉱石としてまとまって存在しないから、採掘はどうしても破壊的になりがちだ。
ただ、ここで最大の問題はそこじゃない。採掘が最大のボトルネックではない。精製だ。
中国はレアアース精製の9割以上を握っている。利益が薄い上に、精製工程が信じられないほど汚いプロセスだからだ。


採掘そのものによる汚染は、陸上でやるなら対策しやすい。
水深6kmの海の底だと、そうはいかない。


しかも効率が悪い。結局、泥は精製しないといけないから、肝心の工程は残ったままだ。
なんで日本はレアアース鉱石を買ってきて精製しないのか分からない。
そのほうが安いし効率的だろ。


日本は、レアアース鉱石の供給でインドと提携してるよ。


日本は環境ダメージを最小化するための技術開発や、生態系の調査も進めている。
中国の脅威に対する自給体制が最優先だ。


これって環境的にめちゃくちゃ悪いんじゃない?


レアアース採掘は一般的に環境負荷が大きい。でも、これが従来手法と比べてどうなのかは分からないな。


海底の生き物を直接かき乱すと思うけど、違ってたらごめん。


そう。しかも巨大な堆積物の雲を作って、それが長時間水中に漂う。


いい加減みんな理解しろよ。レアアースが「レア」なのは鉱床が少ないからじゃない。世界中の鉱山に微量ずつ含まれてるからだ。
本当に希少なのは、それを精製できる能力。


これは見せ物だろ。実際には、そんな深さの海底泥を、意味のある量で採って精製するのは経済的に成立しない。


レアアースは別に希少じゃない。希少なのは、中国が独占してる精製工程だ。


この技術は他国にとってもかなり魅力的だろうな。
実験段階なのか、それとも商用規模の採掘なのか、どっちなんだ?


レアアースの採掘自体は簡単だし、メディアが言うほど希少でもない。問題は精製と加工だ。工程が何百ステップにもなることがあるし、有毒で最悪なプロセスだ。環境規制とも衝突しやすい。
多くの国は設備を止めたが、中国は気にしなかった。それで支配的な地位を取ったんだ。


100年後、魚が4種類くらいしか残っていない世界になったとき、
人類史のこれまで全部と同じくらい、俺たちは愚かに見えるんだろうな。


おめでとう、日本。
中国への依存を減らすための大きな一歩だ。


「レアアースが豊富な泥」だって?
じゃあ俺も金持ちだな。
裏庭にある泥、全部“地球成分たっぷり”だぞ!


『クローバーフィールド』観たことある。
俺たち、もう終わりだ。

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考察・分析

なぜ「採掘成功」が地政学ニュースになるのか

今回のポイントは、レアアース泥そのものの価値というより、日本が供給網の脆弱性を明確に意識し、「代替の選択肢」を実地で示した点にあります。

レアアースは、価格よりも安定供給が重要な資源です。市場では安価に見えても、政治判断や輸出管理によって突然供給が止まるリスクを常に抱えています。深海での回収実証は、採算性の即時確保というより、供給が一国に偏った状態から抜け出すための保険としての意味合いが強い動きです。


今回の成果が示すのは「資源量」ではなく「工学的到達点」

今回注目すべきなのは、約6000メートルという水深から、実際に堆積物を連続して船上に引き上げる工程が成立した点です。これは資源開発としての入口に立ったことを意味します。

一方で、どれだけの量を、どの程度の頻度で、どのくらいのコストで安定運用できるのかは、まだ検証段階にあります。深海という環境では、設備の耐久性、故障時の対応、天候による中断など、陸上資源では想定しにくい制約が多く存在します。

現時点で言えるのは、「掘れることが分かった」段階であり、「使える資源になった」段階ではない、という整理です。


商業化の壁は「掘ること」より「供給網の構築」

仮に深海から安定的に泥を回収できたとしても、それだけで産業は動きません。実際の供給網には、回収、輸送、分離精製、金属化、部材加工、製品化という長い工程が必要になります。

この中で最も難易度が高いのは、分離精製と下流加工です。レアアースは元素同士の性質が極めて似ているため、高度な化学処理と設備が不可欠になります。ここを押さえられなければ、原料があっても最終製品には結び付きません。

つまり、今回の試掘成功は、供給網全体の再構築という長い課題の、最初の一段に過ぎません。


実際に動かしたのは「資源量」ではなく「供給リスク」

国家が資源政策を動かす直接の引き金は、埋蔵量の多寡よりも、供給が止まる現実的な痛みです。部材不足が製造ラインに影響し、企業活動や国防に波及する局面では、採算が合うかどうか以前に「確保できるかどうか」が優先されます。

この文脈で見ると、海底レアアース泥は、単独で採算を取る資源というより、交渉力を持つための選択肢としての性格が強いと言えます。代替手段が存在するだけで、供給を握る側の影響力は相対的に弱まります。


海底だけに賭けない「多層的な戦略」

現実的な資源戦略では、単一の供給源にすべてを委ねることはありません。短中期では友好国との協力や既存鉱山からの調達を続けつつ、長期的に自前の選択肢を育てるという多層構造が合理的です。

深海資源は、その中でも時間のかかるカードです。量の主力になる前に、技術的・制度的な実証を積み重ね、必要な段階で使える選択肢に育てておく、という位置付けになります。


環境問題は「是非論」ではなく「条件設計」の問題

深海開発は、環境への影響が不確実な分野です。重要なのは、賛成か反対かという二択ではなく、どの条件なら進められるのかを具体化できるかどうかです。

影響評価の基準、事前調査の範囲、モニタリング方法、問題が起きた場合の停止条件、第三者による検証など、プロジェクトの設計そのものが社会的受容を左右します。これらが曖昧なままでは、国内外での反発は避けられません。

また、国際的には深海資源開発を巡るルール作りが進行中であり、国内案件であっても、その空気や基準から完全に切り離すことはできません。


国内政治における意味合い

この種のプロジェクトは、短期的な収益よりも象徴性を持ちやすい特徴があります。経済安全保障、技術立国、海洋国家といった物語と結び付きやすいためです。

一方で、象徴として掲げられるほど、具体的な実務が問われる段階では厳しい視線が向けられます。どこまで下流工程を国内で担うのか、費用対効果をどう説明するのか、環境条件をどう設定するのか。ここを示せなければ、評価は容易に反転します。


総括

今回の回収成功は、資源確保のゴールではなく、工学的に入口へ到達したことを示す出来事です。今後の焦点は、量とコストの現実、そして精製から製品化までを含めた供給網をどう設計するかに移ります。

深海レアアース泥は、中国依存を下げるための有効なカードになり得ますが、それは同時に、環境評価と説明責任を伴う選択でもあります。問われているのは夢の資源像ではなく、どの条件で、どの規模で、どこまでを自国と同盟圏で担うのかという、現実的な設計図です。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。


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太平洋のレアアース泥が日本を救う

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今回のニュースの主役である「南鳥島沖のレアアース泥」を発見した、東京大学の加藤泰浩教授による著書です。

なぜ日本の排他的経済水域(EEZ)に眠る泥がこれほどまでに重要なのか、そして中国の独占を崩す鍵がなぜ「深海の泥」にあるのか。

今回の実証成功が、単なる実験ではなく、日本のエネルギー安全保障の「本丸」であることを理解するための必読書です。

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なぜ特定の国が精製工程を独占し、世界を揺さぶる力を手にしたのか。そして私たちが手にするスマホや電気自動車が、どれほどの地政学的リスクと環境負荷の上に成り立っているのかを浮き彫りにします。

今回の日本の採掘成功を、単なる国内の快挙ではなく、「世界規模の資源供給マップを塗り替える一手」として読み解くための広い視座を与えてくれます。


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参考リンク

How China tightened its grip over its rare earth sector(Reuters)

Global Critical Minerals Outlook 2025 Executive summary(International Energy Agency)

FAQs for media(International Seabed Authority)

The Mining Code Draft Exploitation Regulations(International Seabed Authority)

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