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米紙「ニューヨーク・タイムズ」の報道によると、2019年初頭、当時のトランプ大統領の承認を受け、米海軍特殊部隊SEAL Team 6が北朝鮮に極秘潜入し、金正恩体制の通信を傍受する装置を設置しようとしました。潜水艦から小型潜行艇で上陸した隊員は、岸辺で漁民とみられる小船と遭遇し、これを治安部隊と誤認して射撃。複数の民間人を殺害したとされています。その後、隊員らは遺体を隠すため海中に沈め、作戦は中止となりました。議会への報告は行われず、法的監督の回避が問題視されています。北朝鮮側はこの事件について公式に言及していません。
出典:The Daily Beast, New York Post
海外の反応
Getting out undetected was vital. In Mr. Trump’s first term, top leaders in the Pentagon believed that even a small military action against North Korea could provoke catastrophic retaliation from an adversary with roughly 8,000 artillery pieces and rocket launchers aimed at the approximately 28,000 American troops in South Korea, and nuclear-capable missiles that could reach the United States.
Glad Trump is looking out for the small guys! /s「見つからずに脱出するのが最重要だったんだよ。トランプ政権の1期目、国防総省の首脳は、北朝鮮相手には小規模な軍事行動でも壊滅的な反撃を招きかねないと考えていた。韓国駐留の約2万8千人の米兵に向けられた8,000門の砲やロケット、そして米本土まで届く核搭載可能ミサイルがあるからね。
まぁでも、小さな人々を守るトランプに感謝だな!…皮肉だけどな。」
“The Trump administration did not notify key members of Congress who oversee intelligence operations, before or after the mission. The lack of notification may have violated the law.”
May have… 🙄「トランプ政権は、この作戦の前後に情報活動を監督する議会の主要メンバーに報告しなかった。通知しなかったのは法に違反した可能性がある。
可能性がある、ねぇ… 🙄」
Man, if they went back to doing that level of illegal things I’d freaking throw a parade! What they do now is so over the top this would be a breath of fresh air!
「いやぁ、もしまたあのレベルの違法行為に戻るなら、俺はマジでパレード開くわ!今やってることが過激すぎて、むしろ昔の方が爽やかにすら思える!」
To be fair, they’re almost certainly still doing that level of illegal things as well
「公平に言えば、多分今でも同じくらい違法なことはやってるだろうな。」
Go back to? It’s not a coincidence that JSOC got spun up right after the CIA got its wings clipped by the Church Committee.
「“戻る”って?CIAがチャーチ委員会で権限削られて、その直後にJSOCが立ち上がったのは偶然じゃない。」
That level of illegal … without even bothering to send an FYI to the only co-equal branch of government … it sorta sounds to an outsider like the U.S. has become a rogue state…
「あの“違法レベル”って、核武装した敵国に対して一方的に戦争を始めようとしながら、憲法上の権限を持つ議会にすら一言も知らせないってこと?外から見りゃアメリカは自らも同盟国も危険にさらす“ならず者国家”に見えるよ。」
Normally, POTUS has to notify the ‘Gang of Eight’ … However, in certain conditions he has the authority not to inform them … For them to word it ‘may have violated…’ is actually accurate.
「通常、大統領は『ギャング・オブ・エイト』に情報活動を通知しなきゃならない。でも、秘密作戦の場合は必要ないと判断できる権限もある。だから“違反した可能性がある”って表現は実際には正確なんだ。」
Does this mean we’ll get 3 books and a movie soon?
「ってことは、近いうちに本が3冊と映画1本出るってことか?」
And at least two seasons of a TV show based on the event.
「少なくともドラマ2シーズンは作られるだろうな。」
I’m pretty sure the show SEAL Team already did an episode on this…
「ドラマ『SEAL Team』ですでに似たようなエピソードやってた気がするんだが。」
Why am I not surprised that they opted to just kill everyone on the boat…
「正直、あの船にいた全員を殺すって選択をしたことに全然驚かないんだよな…。」
Because Navy Seals are not really known to be smart or mentally stable.
「だってネイビーシールズって、賢さとか安定した精神面ではあまり知られてないからな。要は“殺すプロ”ってイメージだ。」
Hmm, sounded like a dubious plan … Also doubt the implant would have yielded anything of much value.
「なんか怪しい作戦に聞こえるな…。そもそもあの装置を仕掛けても大した情報は得られなかったんじゃないか?」
It’s was a fucking insane plan. And it’s pretty telling they practiced and worked on this for months and fucked up basic shit like not parking the mini-subs the same direction.
「マジで狂った作戦だよ。何カ月も訓練してたくせに、ミニ潜水艇を同じ方向に停めるって基本すらミスったんだから。」
Maybe I’m being a bit naive here, but this article concerns me greatly. This is less than 10 years old, and the same leaders of both countries are in office. This was a direct military action against North Korea which involved enemies on their shore and killing their civilians. And there’s the casual mention of another successful mission in 2005.
If the roles were reversed, we’d have two CSGs parked offshore with air strikes ongoing. I’m concerned this leaked. This is incredibly classified stuff. I’m concerned the NYT published it now. And I’m concerned how North Korea will take this news if they didn’t already know.「少しナイーブに聞こえるかもしれないけど、この記事には本当に懸念してる。10年も経っていない話で、両国とも同じ指導者が今も権力にいる。北朝鮮の海岸に敵が上陸して民間人を殺した、これは直接的な軍事行動だよ。しかも2005年にも同様の成功した任務があったなんてサラッと書いてある。
もし立場が逆なら、空母打撃群が2隻は沖に停泊して空爆が始まってるだろう。こんな極秘情報が漏れたこと自体が心配だし、NYTが今これを公開したのも気になる。北朝鮮が知らなかったとしたら、このニュースをどう受け止めるかも心配だ。」
I mean, what’s anyone going to do? North Korea isn’t going to war against nuclear power just because the US killed a couple of civilians. They know any retaliation will most likely just result in having their hospitals and elementary schools bombed.
This isn’t the first group of civilians the US has randomly murdered and it won’t be the last.「でも、誰が何をできるっていうんだ?アメリカが民間人を数人殺したくらいで、北朝鮮が核保有国相手に戦争を始めるわけない。反撃したら病院や小学校を爆撃されるのは分かってる。
これが米国が民間人を無差別に殺した最初の例じゃないし、最後でもない。」
My thoughts exactly. I despise Trump but I don’t see the point in leaking this at all.
「まったく同感だよ。トランプは嫌いだけど、この件をリークする意味がどこにあるのか全然分からない。」
Wait to see if any former government/intelligence/military folks aside from NYT reporters comments on this supposed operation. A lot of people half-jokingly commented that this might result in many movies, podcasts, and books.
「NYT記者以外の元政府関係者や軍・諜報の人たちが、この作戦についてコメントするかどうか様子を見るべきだな。冗談半分に“映画やポッドキャストや本が山ほど出るぞ”って言ってる人も多いけど。」
It’s not about trump. This op and ones just like it have been going on under every administration. The fascist pigs behind it must be brought to justice.
「これはトランプ個人の問題じゃない。こういう作戦は歴代どの政権でも行われてきた。背後にいるファシストどもは裁かれるべきだ。」
Because people have a right to know when their government is murdering random civilians across the world in cold blood.
「なぜかって?世界中で自国政府が無差別に民間人を虐殺しているとき、それを知る権利が国民にはあるからだ。」
wish they would do something. Because the US fucking with a nuclear power like this is incredibly stupid and should be punished. But likely the DPRK knew already at this point.
Anyway, Kim hes in DC along with half the national guard「何かしらの対応があってほしいよ。核保有国をこんな風に挑発するなんて本当に愚かだし、罰せられるべきだ。でも多分、北朝鮮はすでに知ってたんだろう。
それにしてもキムはワシントンD.C.に来て、州兵の半分まで動員してるんだから。」
It’s as if the only thing the SEALs took away from Red Wings/Lone Survivor was “those guys should have killed those shepherds.”
「まるでSEALsが『ローン・サバイバー』から学んだのが“あの羊飼いたちは殺すべきだった”ってことだけみたいじゃないか。」
なぜ6年間、米朝双方が沈黙を続けたのか
アメリカ側の事情
外交リスク回避
2019年は、米朝首脳会談(シンガポール、ハノイ)が相次いで開かれ、「歴史的和解」の演出が進められていた時期でした。もしこの潜入作戦が当時明るみに出ていれば、トランプ政権は「対話を呼びかける一方で、裏で民間人を殺害するような軍事行動を実行していた」と批判され、交渉の正統性は一瞬で崩壊していたでしょう。北朝鮮との対話路線だけでなく、韓国や日本といった同盟国に対しても「米国は信用できない二枚舌外交をしている」との疑念を生みかねませんでした。
議会との摩擦回避
米国の大統領は軍の最高指揮官であるものの、大規模な軍事行動には議会の承認が必要とされています。特に秘密作戦の場合、通常は「ギャング・オブ・エイト」と呼ばれる超党派の議会指導者に報告されるのが慣例です。しかし今回の作戦は事前報告も事後説明もなかったとされ、もし公表されていれば「大統領権限の逸脱」として議会から強い反発を受け、トランプ政権に対する弾劾論の材料にさえなり得ました。沈黙は、ホワイトハウスと国防総省にとって「生き残り戦略」だったのです。
軍の威信保持
SEAL Team 6は米軍特殊作戦部隊の中でも最精鋭とされ、その名は米国の軍事的威信と直結しています。その部隊が北朝鮮で作戦に失敗し、しかも民間人を殺害して撤退したと知られれば、軍の信頼性は大きく損なわれるでしょう。米軍にとって「失敗を公表する」という選択肢は最初から存在せず、徹底的に隠蔽するしかなかったと考えられます。
北朝鮮側の事情
監視網の脆弱さを隠す
北朝鮮は「鉄壁の防衛国家」を自称しており、治安維持と監視体制の強さは体制の正統性を支える柱の一つです。そんな国家で米軍が領内に潜入し、民間人を殺害していたと認めることは、「国境は簡単に破られうる」という致命的な弱点をさらすことになります。北朝鮮当局はむしろこの事実を隠す方が得策だったのです。
外交カードとして温存
もし北朝鮮がこの事件を把握していたなら、すぐに公表するのではなく「いざという時に切れるカード」として温存しておく価値がありました。米国が制裁緩和に消極的であれば「実は我々は知っている」と裏で突きつけることも可能であり、交渉の場で大きな leverage(交渉力)を発揮する材料になり得ます。
把握できなかった可能性
一方で、北朝鮮が実際にはこの事件を正確に把握していなかった可能性も否定できません。漁民の失踪を単なる事故として処理したか、あるいは「敵に侵入を許した」という事実を知っていても内部的に封印したか。いずれにせよ、公表すれば体制の弱さを示す結果になるため、沈黙が選ばれたのです。
「沈黙の合意」
結果的に、米朝双方はこの事件を6年間公表しませんでした。そこには「公表すれば相手を非難できるが、自らの弱点も露呈する」という共通のジレンマがありました。
つまり、「互いに黙っている方が得だ」という暗黙の合意が成立していたのです。
この作戦は何のために行われたのか
主目的:北朝鮮の通信傍受
北朝鮮は世界でも最も閉鎖的な監視社会を持ち、外部からの情報収集は極めて困難です。軍や政権中枢の通信は専用回線で行われ、サイバー侵入も容易ではありません。だからこそ米軍は、沿岸部に盗聴器を設置することで内部の通信を直接傍受する狙いを持っていたのです。
核開発の実態把握
米朝首脳会談の裏では、北朝鮮が核開発をどこまで進めているのか、米国は正確な情報をつかめていませんでした。衛星写真で建物の建設は確認できても、そこで何が行われているのかは分からない。潜入による通信傍受は、「核施設で実際に何が進行しているか」を見極める唯一の手段とされました。
軍事的抑止力の誇示
米軍にとっては「SEAL Team 6が北朝鮮領内に侵入できる」という事実自体が大きな意味を持ちます。相手に「自国の安全は絶対ではない」と思わせることは、抑止力としての効果を持ち、外交交渉においても優位性を発揮するはずでした。
体制の不安定化を狙う副次効果
加えて、米軍が「いつでも国内に入り込める」という恐怖を北朝鮮に植え付けることで、金正恩政権の内部に不安や猜疑心を広げる狙いもあった可能性があります。これは冷戦期から繰り返されてきた「心理戦」の一環であり、潜入作戦の副次的な効果でした。
なぜ潜入というリスキーな手段が選ばれたのか
衛星の限界
偵察衛星は、施設の建設状況や兵器の配置など「外観」は把握できますが、通信内容や内部の動きは分かりません。北朝鮮は山岳地帯に地下施設を多く建設しており、衛星からは探知不可能な領域が広がっています。
サイバーの困難
北朝鮮は国家レベルでインターネット接続を遮断し、軍事ネットワークは完全に閉鎖環境で運用されています。米国の得意分野であるサイバー諜報(NSAやサイバーコマンドの活動)がほとんど通じず、「物理的に機材を設置する」以外に有効な手段がなかったのです。
人力の必要性
こうした背景から、CIAやNSAでは手が届かない領域を補うのが特殊部隊の役割でした。冷戦期以来、潜水艦から上陸して監視装置を設置する作戦はSEALの伝統的任務であり、今回もその延長線上にありました。
外交交渉の裏付け
2019年の米朝交渉は「北朝鮮が本当に核を止める意思があるのか」を見極める情報戦でもありました。外交の場で譲歩を引き出すには「裏付けとなる諜報データ」が不可欠であり、潜入作戦はそのための切り札と位置づけられたのです。
補足|SEALsとSEAL Team 6の違い
今回の報道では「SEAL Team 6」という名称が繰り返し登場しましたが、これは単なる「米海軍特殊部隊=SEALs」とは異なる、さらに特別な部隊を指します。
SEALsとは
- 正式名称:U.S. Navy SEALs
「SEAL」は Sea(海)・Air(空)・Land(陸) の頭文字で、あらゆる環境で作戦を遂行できることを意味します。 - 米海軍に所属する特殊部隊全体を指し、ベトナム戦争から対テロ戦争まで幅広く投入されてきました。
- チームごとに世界各地で任務に当たり、偵察・潜入・破壊工作・対テロ作戦などを担っています。
SEAL Team 6とは
- 正式名称は Naval Special Warfare Development Group(通称:DEVGRU)。
- 冷戦期に「SEAL Team 1」「SEAL Team 2」などの既存チームとは別に、“ソ連を惑わすため”に実際には存在しない部隊番号をあえて付与し、「Team 6」と命名されたのが始まりです。
- 現在では SEALsの中でも最精鋭の部隊とされ、大統領直轄レベルの超機密作戦に投入されます。
- 2011年のウサマ・ビンラディン殺害作戦を実行したのも、このSEAL Team 6です。
まとめ
つまり、
- SEALs = 米海軍特殊部隊全体
- SEAL Team 6(DEVGRU) = その中の最精鋭で、特に機密度・難易度の高い作戦を任される部隊
今回の北朝鮮潜入作戦に投入されたのは、まさにこの「SEALsの中のSEALs」と呼ばれる存在でした。
総括|暴露が今後の米朝関係に与える波及
この潜入作戦の暴露は、単なる歴史的な失敗談ではありません。
- 米国にとっては、議会監視の不備や軍の行動範囲の不透明さが改めて問題視され、トランプ政権の強権的な安全保障政策が再検証される可能性があります。
- 北朝鮮にとっては、「米国が民間人を殺害した」という事実を宣伝材料にできる一方で、「自国が侵入を許した」という体制の弱さも晒すことになるため、扱いの難しいカードとなります。
- 米朝関係全体にとっては、今後の交渉に影を落とす要因となり、互いの不信感をさらに強めることは避けられないでしょう。
結局のところ、この事件は「米国が北朝鮮情報にいかに飢えていたか」と「北朝鮮が外部からどれほど閉ざされているか」を同時に示す象徴的な出来事です。6年間の沈黙を経て暴露された事実は、米朝関係の脆さと複雑さを浮き彫りにし、今後の安全保障環境に新たな火種を残しました。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
おすすめ書籍
『アフガン、たった一人の生還』(マーカス・ラトレル著)
Redditの反応でも言及された映画「ローン・サバイバー」の原作。実際のSEALs作戦(レッドウィング作戦)の失敗を描いた回顧録。
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