【書評×海外の反応】『サイコロジー・オブ・マネー』徹底解説 海外の反応と歴史が示す「生き残る投資家」の条件

はじめに

世界中でベストセラーとなったモーガン・ハウセルの名著『サイコロジー・オブ・マネー』
日本でも多くの投資家やインフルエンサーが絶賛しているので、すでに読まれた方や、書店でタイトルを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
\商品券4%還元!/
Yahooショッピング

一般的にこの本は、「インデックス投資のバイブル」や「長期投資の心構えを説いた本」として紹介されることが多いです。 確かにその通りなのですが、私はこの本を読み解くうえで、少し違った視点を持っています。

この本の本質は、「どうすればお金持ちになれるか(攻め)」ではなく、「どうすれば死なずに生き残れるか(守り)」にあります。

今回は、まずこの本が世界でどう受け止められているか(海外の反応)を紹介し、その上で、この本が警告する「心理的な罠」を無視した結果、人間や国家がどのような末路を辿ったのかを「失敗学」として解説していきます。

最初にお断りしておきますが、この記事は過去の失敗事例や詐欺に遭った人々を笑うためのものではありません。むしろその逆です。

これから紹介する事例の当事者たちは、私たちと同じように悩み、当時の状況において自分なりの「合理性」や「正義」に基づいて行動していました。 これは、彼らを笑う話ではなく、明日の私たち自身の話です。


『サイコロジー・オブ・マネー』とはどんな本か

お金の問題は「数学」ではなく「心理学」

著者のモーガン・ハウセルは、金融の世界において最も重要な発見を提示しました。それは、「ファイナンス(金融)は、物理学のようなハードサイエンスではなく、心理学のようなソフトサイエンスである」ということです。

私たちは投資をする時、複雑な数式やチャート分析、マクロ経済の予測が必要だと考えがちです。しかし、著者はこう言い切ります。

「人はスプレッドシート(表計算ソフト)を見て決断を下すのではない。夕食のテーブルで、家族と会話しながら、あるいは会議中に同僚と話しながら決断を下すのだ」

つまり、私たちの資産形成を左右するのは「知能(IQ)」ではなく、恐怖、強欲、見栄、そして社会的なプレッシャーといった「感情」なのです。


「金持ちになる」と「金持ちであり続ける」は別物

本書の中で最も印象的かつ重要なのが、「Getting Wealthy(金持ちになること)」と「Staying Wealthy(金持ちであり続けること)」を明確に区別している点です。

  • 金持ちになるには: リスクを取り、楽観的になり、大胆に行動することが必要です。
  • 金持ちであり続けるには: その逆が必要です。謙虚になり、倹約し、「いつか全てを失うかもしれない」というパラノイア(偏執的な恐怖)を持つことが求められます。

歴史上の多くの成功者が没落するのは、この「モードの切り替え」ができないからです。攻めの姿勢のまま守りのフェーズに入り、自滅してしまうのです。


海外の反応:世界はこの本をどう読んだか

では、この「心理学」のアプローチに対し、世界中の投資家たちはどのような反応を示しているのでしょうか。 米国の掲示板Redditから、読者のリアルな声を翻訳して紹介します。

単なる絶賛だけでなく、「理屈は分かるが、実践するのは難しい」という葛藤や、他の名著との比較など、投資家の生々しい本音が溢れていました。


以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


モーガン・ハウセルのインタビューをいくつか見たんだけど、彼がいつも言っているこの言葉が本当に好きなんだ。
「平均的なリターンを、平均以上に長い期間取り続けることができれば、人生の終わりには投資家の上位10%に入っている可能性が高い」
この言葉を、いつも自分に言い聞かせているよ。


うん、本当に素晴らしい言葉だよね。自分もこれを常に意識しておかないといけないと思う。


「人生の終わりには」ってところがポイントなんだよね。
多くの人は、そこまで待ちたくないんだ。


まあ、でも正直言って、年老いて疲れて、もしかしたら病気になってからしか使えないお金を持ちたい人なんていないと思う。
だから投資をするのは、より良く生きるためであって、誰かに相続させるためだけじゃないはずだ。


個人的には、この本は人々が読むべき最も重要な一冊だと思う。
投資戦略や金融の話はいくらでも読めるけど、結局のところ、挑戦の95%は、毎日毎日、正しい行動とメンタルを保ち続けることだ。
インデックスファンドを選ぶことより、その一貫性を保つ方が、はるかに難しい。

海外の反応の続きはnoteで読むことが出来ます。


理性は「正しい」と言うが、感情は……?

いかがでしたでしょうか。 最後のコメントにある「挑戦の95%はメンタルであり、一貫性を保つことの方が難しい」という言葉。これこそが、本書の核心であり、同時に私たちが直面する最大の壁でもあります。

多くの投資家は、頭では分かっているのです。「待てばいい」「動かさなければいい」と。 しかし、現実の世界には、その強固なメンタルを揺さぶり、破壊しようとする誘惑や恐怖が溢れています。

では、もしその「95%のメンタル」が崩れ、理性を手放してしまった時、人間はどこまで落ちていくのでしょうか? ここからは、本書の教訓を歴史的な「失敗事例」に当てはめて見ていきましょう。


【せかはん失敗学】歴史に見る「心理的破滅」のケーススタディ

本書が警告する心理的な罠。これらに嵌まり込み、個人だけでなく企業、果ては国家までをも破滅させた事例を紹介します。


1. 人は「計算」ではなく「ストーリー」に投資する

――失敗事例:DC Solar事件(米国・2018年破綻)

日本でもしばしば「トケマッチ」のような投資トラブルが話題になりますが、私たちはしばしば「なぜそんな怪しい話に?」と笑ってしまいます。 しかし、もしその商材が時計ではなく、「地球環境を救うクリーンエネルギー」であり、さらに「政府のお墨付き(節税効果)」があったとしたらどうでしょう。

2018年に破綻した米国の「DC Solar」事件は、まさにその隙を突いた事例でした。 彼らの商品は「移動式ソーラー発電機」。これを投資家が購入して貸し出せば、高利回りが得られ、さらに連邦政府の税額控除も受けられるという触れ込みでした。

「環境貢献」「高利回り」「節税」。この完璧なストーリーに、多くの富裕層や企業が酔いしれました。あのウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの関連会社でさえ、税制メリットを享受するパートナーとして資金を投じてしまったほどです。

しかし、実態は完全な虚構でした。 製造されたとされる約1万7,000台の発電機の大半は、存在すらしていませんでした。新規投資家から集めたお金を配当に回す、典型的なポンジ・スキームだったのです。

FBIが踏み込んだ時、創業者の自宅には高級車のコレクションが並び、プロ野球チームのスポンサー契約書がありました。 私たちが魅力的なストーリー(物語)に心を奪われた時、数字を確認するという基本的な能力すら失ってしまうことを、この事件は教えてくれます。


2. 富とは「見えないもの」である

――失敗事例:大サラダ油詐欺事件(米国・1963年)

本書にはこうあります。「富(Wealth)とは、目に見えないものだ。それは買われなかった車やダイヤモンドのことだ」。 しかし、私たちは目に見える「リッチ」な装いにあまりにも弱く、簡単に騙されます。

1963年、アンソニー・デ・アンジェリスという男が「大量のサラダ油(大豆油)を保有している」と主張し、それを担保に銀行から巨額の融資を引き出しました。 銀行の検査官は現地へ行き、巨大なタンクが油で満たされているのを目視で確認しました。担保は完璧に見えました。

しかし、会社が破綻した後に判明した事実は衝撃的でした。 タンクの中身は、その99%がただの「海水」だったのです。

水と油は分離します。彼はタンクに海水を満タンに入れ、上澄みの数メートルだけ本物のサラダ油を浮かせていたのです。検査官が見たのは、その表面だけでした。 さらに彼は、検査官が別のタンクへ移動する間に、地下パイプを使って「上澄みの油」だけを先回りさせて移動させるというトリックまで駆使していました。

「目に見えるもの」だけを信じた銀行家たちは、文字通り「水」に金を貸していたのです。SNSで見る他人の華やかな生活も、もしかしたらこのタンクと同じかもしれません。


3. 「合理的」な計算よりも、「妥当」な感情が勝つ

――失敗事例:ゲームストップ株騒動(米国・2021年)

本書には「人は合理的(Rational)な生き物ではない。ただ、妥当(Reasonable)であろうとする生き物だ」という一節があります。 人間は、数字上の正しさよりも、感情的な納得感(妥当性)を優先します。通常、それは長期投資を続けるための「人間らしさ」として肯定されますが、時にそれが暴走すると、破滅的な投機を生みます。

2021年、米国のゲーム販売店「ゲームストップ」の株価が、短期間で100倍以上に高騰しました。仕掛けたのはRedditに集まった個人投資家たちです。 彼らの動機は、金儲け以上に「ヘッジファンドへの復讐」「お祭りへの参加」でした。

業績の悪い企業の株を高値で買うことは、計算上は全く「合理的」ではありません。 しかし、格差社会に不満を持つ彼らにとって、ウォール街を見返してやるという行為は、感情的に極めて「妥当」な行動だったのです。

結果、ヘッジファンドに打撃を与えましたが、同時に高値掴みをした多くの個人投資家も、株価暴落とともに資産を失いました。 「ムカつく奴を懲らしめる」あるいは「社会運動に参加する」ために投資口座を使ってしまった代償は、あまりにも高くつきました。


4. マニア(熱狂)とFOMOは、国家さえも破壊する

――失敗事例:アルバニアねずみ講内乱(アルバニア・1997年)

投資の世界には「FOMO(フォーモ)」という言葉があります。”Fear Of Missing Out”の略で、「自分だけが取り残されることへの恐怖」です。 隣人が儲かっているのを見た時、このFOMOが発動し、人はIQに関係なく理性を失います。それが国単位で起きるとどうなるか。

1997年のアルバニアでは、国民の金融知識不足につけ込んだネズミ講が大流行しました。 当時の政府や政治家は、選挙資金や支持欲しさにこれを黙認。それどころか、国民はそれを「政府公認の錬金術」だと信じ込みました。 FOMOに駆られた国民の約3分の2が、家や家畜を売って全財産を投じました。「隣の家が儲かったのに、うちだけやらないわけにはいかない」という心理です。

結果、バブルは弾け、国民の半数が資産を失いました。 怒り狂った市民は「損切り」ではなく「武装蜂起」を選びました。軍の武器庫を襲撃し、政府軍と交戦。死者約2,000人を出し、国が無政府状態に陥る内乱へと発展しました。 集団心理とFOMOが暴走すれば、理性を失うどころか、国家さえも崩壊させてしまうのです。


5. 誤りの余地(安全マージン)を持たない成長は死ぬ

――失敗事例:中国恒大集団と日本のバブル崩壊

最後に、「誤りの余地(Room for Error)」、いわゆる安全マージンを持たずに成長を追い求めた結果、破綻した中国の恒大集団(エバーグランデ)を見てみましょう。 彼らは「不動産価格は永遠に上がり続ける」という前提で、限界まで借金をして急拡大しました。

しかし、2020年に中国政府が「三本の赤線」と呼ばれる融資規制を導入し、方針を転換した瞬間、彼らの資金繰りはショートしました。
たった一つの政策変更、たった一つの想定外の出来事に耐えうる「現金のクッション(余地)」を持っていなかったため、即座にゲームオーバーとなったのです。

これは決して他人事ではありません。 かつての日本もそうでした。
「土地神話」を信じ、日本中が借金をして不動産を買い漁りましたが、総量規制と公定歩合の引き上げという「変化」によってバブルが崩壊し、その後の「失われた30年」を招きました。
いつの時代も、生存に必要なマージンを削り取って得た成長は、砂上の楼閣に過ぎないのです。


おわりに:退場しないこと、それが全て

『サイコロジー・オブ・マネー』を読み終え、そしてこれらの失敗事例を見て、私たちが学ぶべきことは何でしょうか。

それは、最高の銘柄を見つけることでも、誰よりも早くチャンスに飛びつくことでもありません。 「明日、何が起きても退場せずに済むポジションを取る」ということです。

DC Solarの投資家のようにストーリーに酔わず、 サラダ油詐欺のように見えているものを過信せず、 ゲームストップ騒動のように感情で投資せず、 アルバニア国民のようにFOMOに飲み込まれず、 そして恒大集団のようにレバレッジで安全マージンを食いつぶさないこと。

ここに登場した失敗者たちは、誰一人として「愚か」ではありませんでした。 彼らはただ、私たちと同じように欲望を持ち、隣人を羨み、そして「自分だけは大丈夫だ」と信じていただけなのです。

投資の世界において、サバイバル(生存)は、成長の対義語ではありません。「成長の前提条件」です。 市場という戦場で、死なずに生き残った者だけに、複利という名の果実が与えられます。

さて、あなたのポートフォリオには今、「誤りの余地」はどれくらい残されていますか? もし答えに詰まるようなら、ぜひこの本を――今度は「生存マニュアル」として――手に取ってみてください。


\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
\商品券4%還元!/
Yahooショッピング


追記:生き残ったその先へ。「使う」技術を学ぶ

今回の記事では、『サイコロジー・オブ・マネー』を「生存マニュアル」として読み解き、いかにして資産を守り、市場から退場しないかに焦点を当てました。

しかし、著者のモーガン・ハウセルはこうも言っています。 「お金を稼ぐのはサイエンス(技術)だが、お金を使うのはアート(芸術)である」

私たちは「増やし方」や「守り方」については熱心に学びますが、「使い方も練習が必要だ」ということを忘れがちです。 苦労して資産を築いたのに、使うことに罪悪感を持ったり、見栄のためだけに浪費して虚しさを感じたりする人は後を絶ちません。

もしあなたが、今回の記事で「死なない技術」を学んだのなら、次は「豊かな人生を送るための技術」に目を向けてみてください。
2025年11月に発売された続編『アート・オブ・スペンディングマネー』は、まさにその答え、「自由を最大化するお金の使い方」を教えてくれる一冊です。

死なずに生き残ったその先で、私たちは何にお金を使えば幸せになれるのか?
この「問い」への答えを持っておくことこそが、本当の意味での「ゴール」なのかもしれません。

\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
\商品券4%還元!/
Yahooショッピング

管理人のインプットツール

以下は、普段記事を書く際に実際に使っているインプット環境です。
ご興味があれば、参考までに置いておきます。

・Audible(オーディブル)
移動中や作業中に「耳で読書」。ニュースやビジネス書の消化に便利です。
Audible無料体験はこちら

・Kindle Unlimited
気になった本を一気に拾い読みする用途に重宝しています。
Kindle Unlimited無料体験はこちら

・AirPods
周囲の音を遮断して、記事執筆やリサーチに集中したいときに使用しています。
AirPodsをAmazonで見る

参考リンク

【1】DCソーラー事件(米国・2018年)
https://en.wikipedia.org/wiki/DC_Solar

【2】大サラダ油詐欺事件(米国・1963年)
https://www.investopedia.com/terms/s/salad-oil-scandal.asp

【3】ゲームストップ株騒動(米国・2021年)
https://www.bbc.com/news/business-55837519

【4】アルバニアねずみ講内乱(アルバニア・1997年)
https://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2000/03/jarvis.htm

【5】中国恒大集団危機(中国・2021年)
https://www.bbc.com/news/business-58579833

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA