はじめに:なぜ今、この物語なのか
新成人の皆さん、おめでとうございます。
これから皆さんは、自分の判断と責任で、この資本主義社会を歩いていくことになります。
SNSを開けば、「好きなことで生きていく」「秒速で億を稼ぐ」「FIRE(早期リタイア)」といった、甘美な言葉が溢れています。
「自分も何者かになりたい」「あっち側の世界に行きたい」
そう焦る気持ちは、痛いほどよくわかります。
今回は、そんな皆さんに、ある一つの物語を紹介します。
マンガ『闇金ウシジマくん』に収録されている「フリーエージェントくん編(30〜32巻)」です。
「ウシジマくん? あの怖い借金取りの漫画でしょ?」と思うかもしれません。
しかし、このエピソードの本質は暴力ではありません。
これは、現代社会の「ビジネスの正体」と、
そこで生き残るための「武器の使い方」を描いた、極めて実用的な教科書です。
この物語の主人公・村上仁(むらかみ じん)の天国と地獄を通じて、
賢く生き残るための生存戦略を一緒に考えていきましょう。
第1章:「何者か」になりたかった若者と、最強のビジネス理論
日雇い労働からの脱出
主人公の仁は、高校中退後、日雇いの肉体労働で食いつなぐ若者でした。
仕事がない日は金もなく、将来への不安に押しつぶされそうな毎日を送っていました。
そんな彼が出会ったのが、ネット界のカリスマ・天生翔(てんじょう かける)の動画でした。
「労働者マインドを捨てろ」
「秒速で億を稼ぐ」
天生の言葉は、現状に不満を抱える仁にとって、福音のように響きました。
天生翔は「正論」を語っていた
ここで重要なのは、天生翔という詐欺師が語る言葉は、
ビジネス理論としては、あながち間違っていないという点です。
「人の欲望を刺激しろ」
「集客を仕組み化しろ」
「自分をブランディングしろ」
これらは、現代のマーケティングや行動経済学でも語られる、強力な真実です。
だからこそ、仁のような向上心ある若者が、簡単に引き込まれてしまいました。
仁は、親からもらった大切なお金を使い込み、さらに借金をしてまで、天生の高額塾に入会します。
しかし、そこで売られていたのは「中身のない箱」でした。
天生のビジネスの実態は、
「稼ぐ方法を教える商材を、他人に売って稼ぐ」
という、実体のないネズミ講まがいのサイクルだったのです。
天生翔の理論は、間違っていなかった。
ただし、向ける相手を間違えたのです。
収録巻:『闇金ウシジマくん(30)』
第2章:加害者への転落、そして「損切り」の決断
搾取される側から、搾取する側へ
塾に入っても稼げない仁は、やがて恐ろしい事実に気づきます。
「自分が助かるためには、他人をカモにするしかない」。
彼は借金をして実績を捏造し、地元の友人や、社会経験の浅い若者たち(苅部たち)を勧誘し始めます。
ここで仁は、被害者から加害者へと堕ちました。
天生から学んだ「人を動かすスキル」を、他人を陥れるために使い始めたのです。
暴走、そして破滅
しかし、実体のないビジネスは長く続きません。
仁が勧誘した苅部たちは、商材が売れずに借金に追われ、
やがて犯罪(恐喝)に手を染めるまで追い詰められます。
警察の捜査が迫る中、彼らは錯乱し、仁を拉致監禁して金を要求します。
「金を出すか、死ぬか」
極限状態の中で、仁は人生最大の決断を迫られます。
すべてを捨てる勇気
仁は、自分が必死にかき集めた「金」と、
成功の象徴である「フェラーリ」を、すべて苅部たちに差し出すことを選びました。
それは、自分の命だけでなく、
一緒に捕まっていた天生や、恋人の命まで救うための決断でした。
「こんな業界、もううんざりだ」
彼はその瞬間、虚像の成功者であることをやめました。
プライドも財産もすべてを「損切り」し、一人の人間に戻ったのです。
仁を救ったのは才能ではありません。
「全部捨てる」という、損切りの決断でした。
収録巻:『闇金ウシジマくん(31)』
第3章:手段と目的の逆転 本当の再生
ゼロからのリスタート
すべてを失った仁が、最初に向かったのは実家でした。
彼は、裏切って金を盗んでしまった両親に謝罪します。
そして、かつて嫌がっていた日雇い労働の現場に戻り、
汗水垂らして働きながら、少しずつ親にお金を返し始めました。
しかし、物語はここで終わりません。
武器の使い道を変える
数年後、仁は過疎化が進む田舎で、新しい事業を始めていました。
古民家などの安い物件を活用し、
ニートや学生など「居場所のない若者」を集め、
低コストで生活・労働できる環境を作る事業です。
注目すべきは、仁が使っている手法そのものは、天生塾時代と変わっていない点です。
ネットを使って人を集める。
若者の悩みに寄り添う仕組みを作る。
彼は、かつて学んだマーケティングのスキルという武器を捨てませんでした。
その代わり、武器の向け先を変えたのです。
弱さを肯定する生存戦略
かつては、弱者から金を搾取するために使っていたスキルを、
今度は、弱者が無理なく生きていく場所を作るために使った。
「秒速で億を稼ぐ」ことはできません。
しかし、そこには感謝と、穏やかな生活があります。
天生翔の理論は強力でした。
しかし、それに「誰かを幸せにする」という目的が伴っていなかったから、悲劇が起きたのです。
仁は失敗を経て、ようやく正しい使い道にたどり着きました。
彼は武器を捨てたのではありません。
正しい向きに持ち替えただけなのです。
収録巻:『闇金ウシジマくん(32)』
おわりに:新成人の皆さんへ
村上仁の物語が教えてくれる教訓は、シンプルです。
強力なスキルや理論は、包丁のようなものだということです。
それは、美味しい料理を作ることもできれば、誰かを傷つける凶器にもなります。
これから社会に出る皆さんは、
会社やビジネス書で、多くの「稼ぐノウハウ」や「効率的な理論」を学ぶでしょう。
それらは、非常に魅力的で、切れ味鋭い武器に見えるはずです。
もし、その使い道に迷ったら、仁の最後の姿を思い出してください。
「そのビジネスは、誰かの人生を豊かにしているか。
それとも、誰かの無知につけ込んでいるだけか。」
その問いに自信を持ってイエスと答えられるなら、
どんなに泥臭い仕事でも、それは天生翔の虚像よりも、ずっと価値のある本物の成功です。
皆さんが、自分の手にした武器で、
自分と大切な人の居場所を守れる大人になることを祈っています。
成人、おめでとうございます。
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