DeepSeek「V4」観測で再燃するAI投資不安 知能の低コスト化が揺らす市場の前提

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2026年2月、中国発のAI企業DeepSeekが次世代モデル「DeepSeek-V4」を春節(旧正月)前後に公開するとの観測が広がり、AI業界と投資家の間で警戒感が強まっている。

DeepSeekは2025年初頭に低コスト高性能モデルを投入し、AI関連株や半導体株の値動きにも影響を与えたとされる。今回も同様に、推論コストの低下が既存のAIビジネスモデルやGPU需要の見通しに波及するのではないか、という連想が市場で意識されている。

また、この動きはDeepSeek単体の話ではなく、中国国内で複数企業が同時期にモデル投入を加速させている流れの一部でもある。

出典:Reuters


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補足説明:なぜ今、DeepSeekが再び注目されているのか

2026年2月現在、AI業界と投資界隈でDeepSeekが再び話題になっています。
理由は単純で、次世代モデル「V4」が春節(旧正月)前後に登場するのではないか、という観測が広がっているためです。

ただし、現時点で確定している情報は多くありません。
細かな仕様や性能は公式発表が出るまで推測の域を出ず、SNSやフォーラムでは噂と期待が先行している段階です。


2025年の「DeepSeekの衝撃」は何が本質だったのか

前回(2025年初頭)の市場の動揺は、「性能が上がった」ことよりも、AIのコスト構造に疑問が突き付けられたことが本質でした。

当時の市場は、

・AIの性能を上げるには、巨大なGPU投資が必要
・学習や運用のコストは青天井
・勝つのは資本力のある企業

という前提で動いていました。

そこにDeepSeekが「より低コストでも同等クラスが作れる可能性」を示したことで、AIの成長ストーリーが揺らぎました。
結果として、AI関連株や半導体株が売られる局面が生まれたとされています。


今回のV4で注目されているのは「性能」より「安さの上振れ」

今回のV4をめぐる話題も、方向性は前回と似ています。
つまり焦点は「どれほど賢いか」よりも、

・どれくらい安く使えるのか
・どれくらい効率が良くなるのか

という点に集まっています。

海外フォーラムなどで語られている内容を要約すると、期待されているのは主に次の2点です。


期待されているポイント①:推論コストがさらに下がる可能性

前回のDeepSeekが市場に与えたインパクトは、「AIは高くつく」という前提を揺らしたことでした。
今回のV4でも、同じ方向性の期待が再燃しています。

もしV4が「より安く」「より高性能」になれば、AIを導入する企業側にとっては朗報です。
一方で市場側では、GPU需要やデータセンター投資の見通しが揺らぐのではないか、という連想が働きやすくなります。


期待されているポイント②:長い文脈を扱うコストが下がる可能性

もう一つ注目されているのは、長文処理です。

現在の生成AIは、長い文書を扱えるようになってきた一方で、入力が長くなるほど計算量が増え、コストも上がりやすい構造があります。

DeepSeekは過去に、文字をそのまま大量に処理するのではなく、別の形で効率化する研究も示しており、V4がその方向性を強めてくるのではないか、という期待が語られています。

ここは確定情報ではありませんが、界隈で話題が膨らみやすいポイントになっています。


市場が前回ほど騒がない理由:「驚き」より「織り込み」の段階に入った

今回の空気が前回と違うのは、市場がすでに一度ショックを経験していることです。

2025年の時点では「そんなことが起きるのか」という驚きが大きく、混乱が増幅しました。
しかし今は、

・AIは高性能化し、同時に安くなる
・低コストモデルが出る可能性は現実的

という前提が、すでに投資家側にも共有されつつあります。

そのため今回の焦点は、

「本当に出るのか」
ではなく
「どれほど上振れするのか」

に移っています。


DeepSeek単体ではなく、中国勢全体が面で押してくる構図

さらに今回の話題は、DeepSeek一社の話にとどまりません。

中国国内では同時期に複数企業がモデル投入を加速させており、春節前後に発表が集中する流れも指摘されています。

つまり、DeepSeekは単独の事件というよりも、

「中国AIが低コスト路線で押し寄せてくる流れの象徴」

として見られやすくなっています。


まとめ:今回の騒ぎの正体は「確定情報」ではなく「期待値の揺れ」

現時点でV4の性能や仕様は確定していません。
しかし前回の経験があるため、市場は「もし想定以上だったら」という段階で先回りして反応しやすくなっています。

前回が「前提が壊れた瞬間」だったとすれば、今回は「前提がさらに壊れるかもしれない」という警戒です。

そしてこの警戒の対象は、DeepSeekそのものというより、AI産業全体の投資ストーリーだと言えます。


海外の反応

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


今回のDeepSeekは、前回ほどの衝撃はないと思う。DeepSeekのv3やR1が効いたのは、OpenAI級なのに学習コストが桁違いに安いって点だった。投資家が「そんなに学習が安くなるなら、今みたいに金を突っ込む必要ないのでは?」ってビビったんだよ。

市場を本当にクラッシュさせるとしたら、ただの改良じゃなくて、常識を壊すレベルの革新が必要。たとえば中国国内GPUだけでフル学習して、さらにそのGPUを出すと発表したら、NVIDIAは死ぬ。


中国製ハードウェアだけで学習して(推論じゃなくて学習ね)、Gemini 3 Pro級の性能に到達したら、もし本当なら狂ってるレベルだ。


でも効率は今でも上だよ。OpenAIは全然追いつけてない。


ChatGPT5.3の方がまだ上。客は「コスパ最強」じゃなくて「最高のモデル」を求める場合もあるんだよ。


願望だな。


DeepSeek v3やr1は「ChatGPTより上」じゃなかったのに市場は崩れた。
投資家が恐れたのは、OpenAIが学習コストを今の何分の一かにできるなら、これまでみたいに拡大する必要がなくなるかもしれないって点。

市場が気にするのは利益。信頼が揺らげば資金は引く。


そうなったのは、「それが可能だ」って発想が初めて市場に入った瞬間だったからだよ。今はもう市場は「それがあり得る」って知ってる。


市場とかどうでもいい。影響を与える方法は他にもある。


市場が過剰に反応するのは不確実性がある時だけだ。中国モデル全体の台頭は、もう織り込み済み。発表当日にちょい下げるくらいで、前回の暴落みたいなことにはならない。


いや、それを「織り込み済み」で片付けるのは軽すぎる。中国AI産業全体を丸ごと無視するのはナイーブだろ。


市場は操作にも反応する。中国のモデル開発者って、そういうのやらない印象ある。あと、やたら終末論を煽ったりもしない。


V4が来るのは分かってる。でも能力も価格も分からない。
それが予想以上だったら、そこそこ大きい調整が起きても全然おかしくない。株価は期待で動くんだから、期待が裏切られたら価格は調整される。
空売りをする理由にはならないけど、「もう安心」って態度でいるのも違う。


DeepSeekは去年もうバブルを割った。今は死体に化粧してるだけだ。


くそ、市場めっちゃ好調じゃん。


DeepSeekってローカルLLM?つまりハード持ってれば誰でも動かせるの?


そうだよ!


今のところDeepSeekのモデルはオープンウェイト(たぶんオープンソースでもある?忘れた)だった。

だから必要なハードがあれば誰でも動かせる。次もオープンだといいな。


考察分析:DeepSeekが揺らすのは「性能」ではなく「世界の投資前提」

今回のDeepSeek V4をめぐる騒ぎは、AIの性能競争というよりも、AI産業を支えてきた投資前提がどこまで揺らぐのか、という話です。

補足説明で触れた通り、現時点でV4の仕様は確定していません。
しかし市場が反応しているのは、確定情報ではなく「もし上振れした場合、どの前提が崩れるのか」という連想です。

ここから先は、短期の株価ではなく、より長期の構造変化として何が起きるのかを整理します。


ソブリンAIの失敗リスク

最も現実的で、かつ政治的に厄介なのが、各国の「国産AI」構想です。

近年、多くの国が経済安全保障を理由に、巨額の税金を投じて自前のAIや計算基盤を整備してきました。
これは技術政策というより、半分は国家インフラ政策です。

しかし、もしDeepSeekが「安くて強いAI」を広く提供する形を取った場合、国産AIは典型的な失敗パターンに入りやすくなります。

完成した頃には世界標準がさらに先に進み、国産AIが「高コストで微妙」という立ち位置になってしまうからです。

ここで怖いのは、国が撤退できない点です。

一度始めた国家プロジェクトは、民間なら撤退する局面でも、サンクコストと政治的メンツで延命されやすい。
結果として、採算が取れない国産AIを維持し続ける未来が現実味を帯びます。

投資家の目線では、ここは「国家がAI投資の敗者になり得る」という論点です。


世界の分断がAIで進む

DeepSeekの低コスト戦略が刺さりやすいのは、むしろ先進国よりも新興国です。

米国製のAIは高性能ですが、利用料は高く、ドル建てでの決済が基本になります。
一方で中国勢が、より安価な形でモデルやAPIを広げれば、新興国のスタートアップやエンジニアは、実利としてそちらを選びやすくなります。

ここで起きるのは、単なる市場競争ではありません。

インターネットが地域ごとに分断されていったように、AIも次のように分かれていく可能性があります。

・高価だが規制と透明性を重視する圏
・安価で実装優先、規制が緩い圏

これはAIの問題というより、ブロック経済の問題です。

投資家にとっての含意は明確です。
米国テックの成長ストーリーが「世界全体」ではなく「西側圏」に限定されるリスクが増えます。


半導体株が本当に揺れる理由

DeepSeekの話題になると、すぐに「GPUが不要になるのか」という極端な議論が出ます。
しかし現実はゼロイチではありません。

重要なのは、GPUが不要になるかではなく、GPUの成長ストーリーがどれだけ薄まるかです。

株価は「今の需要」ではなく、「将来の期待」で動きます。
もし同じ仕事を、より少ない計算で終えられるなら、必要なGPUの伸び率は鈍ります。

GPUが売れなくなるのではなく、投資家が想定していた伸び方ではなくなる。
この期待値の調整こそが、半導体株を揺らす本質です。


次の勝者は「AIを作る人」から「AIを使う人」へ

2025年までの主役は、NVIDIAに代表される「ツルハシを売る企業」でした。
しかしAIのコストが下がるほど、利益はアプリケーション層へ移動します。

ここが最も重要な構造変化です。

AIが高価な間は、AIそのものが商品でした。
しかしAIが安くなると、AIは差別化要因ではなくなります。

勝つのは、

・AIを業務に組み込んで人件費を削る企業
・AIを組み込んで生活導線を握る企業
・AIを組み込んで既存産業の非効率を壊す企業

です。

そしてここで起きるのは、派手な革命というより、泥臭い「利益率の再配分」です。


日本にとっての現実的な勝ち筋

この話は、日本にとって暗いニュースに見えがちです。
しかし別の見方もできます。

AIが安くなるほど、重要になるのは「新しいモデルを作る力」より「現場に組み込む力」だからです。

日本企業が比較的得意としてきたのは、基礎研究よりも

・業務フローの改善
・品質管理
・現場実装
・既存産業への適用

といった応用側です。

つまり、AIがコモディティ化する世界は、日本が戦える領域が増える世界でもあります。

ただし条件があります。
AIを「導入すること」自体を目的にせず、利益に直結する形で組み込めるかどうかです。


総括:AIが日用品になる世界で、何が価値を持つのか

今回の話題は、新モデルの性能自慢ではありません。
私たちが目撃しているのは、AIが「魔法の高級品」から「水道や電気のような日用品」へ変わっていく過程です。

魔法が解けるとき、バブルは一度崩れます。
しかし、水道や電気が社会の前提になったように、日用品になった後のAIこそが、本当に世界を変え始めます。

投資家としても、ビジネスパーソンとしても、次に問われるのはここです。

知能のコストが限りなくゼロに近づく世界で、あなたの投資先は何で利益を出すのか。
あなたの仕事は何を売って価値を生むのか。

V4が実際にどこまで上振れするかは、公式発表を待つ必要があります。
しかし、AIが安くなり続ける限り、この構造変化は止まりません。

そして、その変化に適応できた側が、2026年以降の勝者になります。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。


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関連書籍紹介

『予測マシンの世紀:AIが駆動する新たな経済』

アジャイ・アグラワル 他(早川書房)

今回のDeepSeek騒動を、単なる技術競争ではなく「経済現象」として捉えるための必読書です。

本書は、AIの本質を「予測」というタスクのコスト低下だと定義します。経済学の原則に従えば、あるものの価格が下がれば、それは大量に使われるようになり、代わりに「補完するもの」の価値が上がります。

世界中の投資家が今、DeepSeekの低コスト化を見て「次に価値が上がるのは何か?」と探し始めている理由は、まさにこのロジックにあります。
AIのコモディティ化が世界経済に何をもたらすのか。その地図を描くための教科書です。


『イノベーションのジレンマ 増補改訂版』

クレイトン・クリステンセン(翔泳社)

現在、米国のハイエンド・高コストAIに対して、中国勢がローコスト路線で仕掛けている戦いは、本書で描かれる「破壊的イノベーション」の典型例に重なります。

破壊的イノベーションの怖さは、「最初は性能で劣って見える」ことです。
しかし、価格と使いやすさが武器になると、やがて市場の中心がそちらへ移り、既存の勝者は身動きが取れなくなります。

なぜ市場関係者が「性能最強の米国製AI」よりも、「安価な中国製AI」の動向に敏感なのか。
その理由を、歴史的法則として理解するための一冊です。


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参考リンク

A year on from DeepSeek shock, get set for flurry of low-cost Chinese AI models(Reuters)

China’s DeepSeek sparks AI market rout(Reuters)

https://twitter.com/michaeljburry/status/2023443180499214692

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