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1月30日、金と銀の価格が急落し、これまで続いてきた急激な上昇相場が一転して調整局面に入った。金は前日に史上最高値圏まで上昇した後、大幅に下落し、銀やプラチナなど他の貴金属も軒並み売られた。
市場では利益確定の動きが一気に強まり、過熱感のあった貴金属相場が反転した形となった。米国の金融政策を巡る観測の変化や、ドル高の進行も売りを後押ししたとみられている。
今回の下落は、短期間で急騰してきた相場の反動が表面化したものと位置づけられており、価格変動の大きさが投資家心理の不安定さを映している。
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補足説明
投資判断は自己責任でお願いします。
本記事は情報整理を目的としており、最終判断はご自身で行ってください。
1. なぜここまで上がっていたのか
金の急騰を最も強く押し上げたのは、世界的な情勢不安と通貨不安が同時に強まったことです。中東や東欧をはじめとする紛争の長期化に加え、大国間の対立が経済制裁や貿易、エネルギー供給にまで波及し、「何が起きるか分からない」という不確実性が一気に高まりました。
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こうした局面では、株式や国債、通貨といった信用に基づく資産よりも、国家や金融システムの外側にある実物資産としての金が選好されやすくなります。とくに、米国の財政や金融政策を巡る見通しが揺らぐ中で、ドルの長期的な価値に対する警戒感が強まり、価値の保存手段として金に資金が集中しました。
もう一つの土台として、中央銀行による金購入の継続も挙げられます。とくに新興国を中心に、外貨準備の一部を金に振り向ける動きが続いており、短期のブームというより構造的な買いの支えになりやすいと見られています。
このような背景の上に、投機資金や短期資金が加わると、上昇は加速しやすくなります。値動きが値動きを呼ぶ状態になり、短期的には説明のつきにくい水準まで到達することがあります。
2. なぜ一気に崩れたのか
上昇があまりに急だった局面では、相場は小さな材料でも反転しやすくなります。今回は、米金融政策を巡る見通しの変化やドル高方向への意識が強まり、ドル建てで取引される金の買いが弱まりました。あわせて、短期間で大きく上昇していたこと自体が警戒感を生み、利益確定の売りが出やすい状況でした。
さらに、相場にレバレッジ取引が多く入っていたことで下落が加速しました。価格が下がると、一定の損失に達した取引が自動的に整理され、投資家の判断とは関係なく売りが発生します。こうした機械的な売りが連鎖した結果、短時間でも下げが深くなり、今回の急落につながったと考えられます。
3. こういう時はどうするか
まず、自分が金や銀を持つ理由を確認します。インフレ対策や有事への備えとして持っているのか、短期の値幅取りなのかで、取るべき行動は変わります。
長期の備えとして持つ場合は、短期の上下に反応し過ぎないことが基本です。資産全体の一部として比率を決め、想定以上に膨らんだら一部利益確定で比率を戻す、下げで比率が落ちたらルールに沿って戻す、といったリバランスの発想が有効です。
一方、短期狙いでレバレッジを使っている場合は、こうした急変局面は一発退場のリスクが上がります。ポジションを小さくする、損失許容幅を明確にする、想定外の下げに備えて余力を残す、といった守りを優先した方が安全です。
4. インフレへの備え
金はインフレ局面で注目されやすい一方、短期ではインフレ率ときれいに連動するとは限りません。インフレ対策は金だけに寄せず、役割分担で組み合わせた方が安定しやすいです。
例
現金や短期資産は生活防衛と急な出費への備え
分散株式は長期の成長と物価上昇への耐性
インフレ連動債が使える環境なら物価連動を直球で取りにいく手段
金は保険として一定比率で持つ
銀は金より値動きが荒くなりやすく、工業需要や投機資金の影響も受けやすい傾向があります。同じ貴金属でも性格は別物として扱った方が無難です。
海外の反応
以下は、上記Redditスレッド内のコメントを、当ブログ管理人が抜粋・翻訳したものです。(意訳を含みます)
本気で言うけど、銀は今月だけで60%も上がってる。そこから一時的に5%下げただけで、しかも価格は火曜日に見た水準に戻っただけなのに、「何が起きてるんだ?」って騒ぐのはおかしいだろ。
投機的な資産を買うなら、値動きが激しくなるのは最初から覚悟しておくべきだ。
今の時代、正直どの資産も全部投機的だ。企業業績や経済の基礎条件みたいなものが、相場を動かしているわけじゃない。
これが事実だと理解できない人が多すぎる。市場は昔から保証されたものなんて一度もないのに、そう思い込んでいる人が多い。
今のS&P500だって、本当は巨大企業に偏った集中指数なのに、「分散されてるから安全」だと信じている。無知が市場を動かしている状態だ。
S&P500神話の曲がり角 巨大テック集中とインデックス投資リスクを考える – せかはん(世界の反応)
2020年3月の暴落時、20年以上付き合いのある親友に相談されて「長期で見れば市場は上がる」と言ったら、そいつは訴訟の和解金を全額突っ込んだ。
2週間後に「金が減ったのはお前のせいだ」と怒鳴られた。
それ以来、一切連絡を取っていないし、たぶん一生話さない。
最近「金も銀も下がるはずだ」と言ってるインフルエンサーを大量に見るが、真面目に言って、インフルエンサーの話は聞くな。
毎日何千人も適当な予想を出していれば、運だけで当たる人が出るのは当たり前だ。それを見て「この人は当てた」と騒ぐのは、完全な錯覚だ。
例えるなら、200人にコイン投げ6回の結果を予想させれば、誰か1人くらいは全部当てる。
でもその人は天才でも予言者でもなく、ただ運が良かっただけだ。
相場予想も同じで、当たったこと自体に意味はない。
「金を売れって広告を見たから売った」と言うとダサいけど、インフルエンサーに従うのはそれと同じことだ。
ビットコインが5%下がったら終わりだの、株が下がったらユートピアが来るだの、全部極端すぎる。
今は単に全体がリスク回避の流れになっているだけだ。
株式市場の暴落予言と同じで、何年も前から「もうすぐ暴落する」と言い続けている人がいる。いずれ誰かは当たるが、その時にだけ「ほら当たった」と言われる。今はインフルエンサーが再生数のために話を作るから、さらにひどい。
「暴落した」って言うけど、銀は過去6か月で50%以上上がっている。流行ってから飛び乗るのはやめろ。逃したなら、それはもう逃したんだ。
みんな金の話ばかりしているが、俺は入らなかった。金は1年で85%上がったが、同期間で銅関連ETF(COPX)は140%上がっている。俺は5年前にCOPXを仕込んだ。ミームを追わず、割安を探せ。
「逃したなら逃した」というのは、金がもう終わったという意味ではない。ただ、2024年なら良い判断だったが、それが今も良いかどうかは別問題だ。「最近上がった」「みんなが話している」だけで判断するのは危険だ。
去年の夏に鉱山ETFに入って買い増しし、過去1年で57%、直近1か月で23%のリターンが出ている。2025年12月末に入った人でも、この30日でかなり儲かっている。
12月に買った銀は100%上がり、2年前から持っている分はほぼ300%だ。これは暗号資産並みの値動きだ。
だからこそ、今は銀に全財産を突っ込むタイミングじゃない。すでに大きく動いた後だ。
銀は電子機器や送電網で不可欠で、導電性も非常に高い。電力社会が進むなら、今後10年は重要な素材になる。今日の値動きは長期で見れば誤差だ。
最近の銀の上昇のうち、どれくらいが電子機器や送電網の需要によるものだと思っている?
銀はもうピークを迎えた。毎年250%も上がるわけがない。
割安ってどうやって見つけるのか、新参として素直に知りたい。
正直、完全な答えはない。ただ、多くの人は上がってから投資を考えて、高値で買って安値で売る。定期積立をして、みんなが怖がっている時に入る意識を持て。みんなが騒いで「もう上がった」時は警戒しろ。
考察・分析
1. 今回の急落は「金が安全資産ではない」証明ではない
金は長期では価値の保存手段として語られやすい一方、短期では普通にリスク資産のような動きをします。今回の急落を見て「やはり金は安全ではなかった」と感じる人もいるかもしれませんが、そこから直ちに金の役割そのものが否定されたと考えるのは早計です。
重要なのは、価格は下がったが、世界情勢そのものが改善したわけではないという点です。紛争や対立、政治的分断、政策の不透明感が続く中で、有事への警戒が消えたわけではありません。今回起きたのは、政治リスクが解消された結果の売りではなく、短期間で上がりすぎた相場が一度調整されたという側面が強いと見られます。
2. 価格が崩れる時に効くのは、ニュースよりも「ポジション」
相場が急変するとき、表向きのきっかけはニュースでも、下げの深さを決めるのは市場の内部構造です。
今回も、金融政策を巡る見通しや為替の動きが材料として意識されましたが、それだけで金が短時間に大きく動くわけではありません。急騰局面では短期資金が積み上がりやすく、いったん流れが逆になると、利益確定に加えて追随組の手仕舞いが連鎖しやすくなります。この「ポジションの偏り」が、値動きを想定以上に荒くします。
3. 中央銀行の買いは「値動きの理由」ではなく、相場の土台になりやすい
今回見落とされがちなのは、上昇の背景が投機だけではなかった点です。近年の金市場では、投資家の売買とは別に、各国の中央銀行による金購入が続いてきました。
彼らの目的は短期的な値幅取りではなく、地政学リスクや制裁リスクへの備えです。そのため、短期の乱高下で売買が止まる性質のものではありません。もちろん、これが常に価格を支えると断言はできませんが、急落後にどこで買いが入りやすいかを考える上で、無視できない土台になっています。
4. 「ドル不安」は、崩壊論ではなく分散の流れとして見る
通貨不安という言葉は、極端な議論に引っ張られがちです。しかし現実の動きは、ドルが突然使われなくなるという話ではありません。実際に起きているのは、各国が外貨準備を少しずつ分散させていく流れです。
「ドル一択」から「複数の準備資産を持つ」方向へと重心が移る中で、その一部として金が選ばれる。今回の上昇も、この分散の文脈の中で理解した方が現実に近いでしょう。
5. 個人投資家の論点は「当てる」より「壊れない設計」
今回のような乱高下で最も大きなダメージを受けるのは、ストーリーに乗って比率を上げすぎたケースです。金や銀をインフレ対策や有事の保険として持つのであれば、価格目標よりも、ポートフォリオ内での役割と上限を先に決めることが重要です。
実務的には次の二つに分かれます。
保険としての金
資産全体の中で比率を固定し、上がったら一部を戻し、下がったら(必要であれば)戻す。相場観ではなく、ルールで扱う。
短期トレードとしての金・銀
ニュースやセンチメントに振られやすい局面では、主役は相場観ではなく資金管理です。ここでの失敗は、方向性ではなくポジション量の取りすぎで起きます。
また、インフレへの備えを金だけに寄せるのはリスクがあります。現金や短期資産で生活の安全域を確保しつつ、分散された株式や他の手段と役割分担させる方が、局面変化に耐えやすくなります。
総括
今回の急落は、金と銀の長期的な役割が否定されたというより、急騰で積み上がった短期資金が一度巻き戻された局面と捉える方が現実的です。
そして、国際情勢の不安定さや通貨・金融政策を巡る警戒感という「金が買われてきた根本理由」は、今回の下落だけで消えたわけではありません。
土台が残っている以上、短期的な値動きの荒さに引きずられるのではなく、個人投資家にとっては比率とルールで壊れない設計にすることが何より重要です。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
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関連書籍紹介
敗者のゲーム
チャールズ・エリス
今回の急落で、「話題になっているから買い、下がったから慌てて売った」という経験をした人がいるなら、この本はその行動パターンを根本から見直すための一冊になります。
本書が一貫して示すのは、投資における最大の敵は相場ではなく、投資家自身の感情と過剰な売買だという点です。多くの個人投資家は、短期的な勝ち負けに執着することで、かえって成績を悪化させてしまう。だからこそ、「勝とうとしない」ことが、結果的に勝者への道になると説きます。
相場が荒れているときほど、何もしないという判断が最も難しく、そして最も価値を持つ。今回のような乱高下を経験した直後に読むと、自分の行動を冷静に振り返る視点を与えてくれるはずです。
金を通して世界を読む
豊島逸夫
日本における金(ゴールド)分析の第一人者である著者が、金価格の動きを国際政治、通貨、地政学の視点から読み解いた一冊です。
本書を読むと、金がなぜ有事に買われるのか、なぜ金融市場が不安定になると存在感を増すのかが、感覚ではなく構造として理解できます。金は儲けるための道具というより、世界が不安定になる局面で資産を守るための保険であるという考え方が、丁寧に積み重ねられています。
今回の記事で触れた「情勢不安が金価格を押し上げた」という構図も、この本を通すと、短期的なニュースではなく、長期的な世界の力学として見えてきます。チャートの上下ではなく、その背後にある世界の動きを理解したい人に向いた一冊です。
管理人のインプットツール
以下は、普段記事を書く際に実際に使っているインプット環境です。
ご興味があれば、参考までに置いておきます。
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参考リンク
Reuters: Gold slips on firmer dollar; set best month since 1980 https://www.reuters.com/world/india/gold-slips-firmer-dollar-set-best-month-since-1980-2026-01-30/
World Gold Council: Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025 https://www.gold.org/goldhub/research/gold-demand-trends/gold-demand-trends-full-year-2025
IMF: COFER Data Brief https://data.imf.org/en/news/imf%20data%20brief%20december%2019


