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大阪・関西万博は本日閉幕し、184日間の幕を閉じた。運営側は、開催中に浮上した課題を乗り越えつつ、この博覧会を「分断より団結、対立より寛容を重んじる場」として意味づけたい意図を示した。
閉会式はエキスポ会場内の「シャイニングハット」ホールで実施され、名誉総裁を務めた石破茂首相があいさつに立った。石破氏は「分断より団結を、対立より寛容を重んじ、多くの方々に満足していただける素晴らしい博覧会をつくり上げることができた」と述べた。
当初は施設の未完成や集客の伸び悩みが懸念されていたが、蓋を開ければ来場者数は約2,529万人(前日まで)に達するなど、成功裏に終わる見通しとされている。
出典:Nippon.com
補足説明
大阪万博とは
万博(World Exposition, Expo)は、各国や国際機関が技術や文化、社会課題への取り組みを紹介しながら、未来のあり方を考える国際的な催しです。
近年は気候変動やAI、医療、持続可能性など、地球規模の課題をテーマに掲げ、国際的な協力と対話の場としての意味合いがより強くなっています。
1970年に開催された大阪万博(日本万国博覧会)は、「人類の進歩と調和」を掲げた日本初の本格的な万博でした。太陽の塔や動く歩道など、当時としては革新的な展示が並び、約6400万人が来場。戦後の日本が世界に示した「未来への希望」として、今も多くの人の記憶に残っています。
開催までの経緯と課題
2025年の大阪・関西万博は、2018年11月のBIE(国際博覧会事務局)総会で大阪が正式に選ばれました。
テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。AIや再生可能エネルギー、ロボット技術などを活用し、命の尊重と共生を体感できる空間づくりを目指しました。
しかし、会場となる大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)では、建設費の増大やアクセス面での課題が相次ぐことに。
「開幕に間に合わない」「準備が遅れている」といった報道もあり、開催前の世論は必ずしも楽観的ではありませんでした。
さらに、予約システムの不具合や混雑、衛生管理の問題などが取り上げられ、運営体制への不安も残りました。
それでも、地元企業や自治体、ボランティアの努力によって体制は次第に整い、開幕時には主要パビリオンがほぼ出揃う形となります。
会場の雰囲気も「不安」から「期待」へと変わっていきました。
予想を覆した成功の理由
開幕後は当初の懸念をよそに、来場者が連日押し寄せました。
最終的に累計来場者数は約2800万人を超え、運営側は黒字での終了を見込むと発表。
会場の象徴「大屋根リング」やマスコット「ミャクミャク」が話題を呼び、SNS上でも「行ってよかった」という声が多く見られました。
海外メディアの評価も後半から変化し、「混乱を乗り越えた成功例」「市民が支えた万博」といった報道が増加。
1970年以来55年ぶりの大阪開催は、日本の技術力と文化発信力を世界に再び印象づける機会となりました。
結果として、大阪万博は「課題続き」と言われた準備段階から一転し、多くの人々に希望と活気を届けるイベントへと成長したと言えるでしょう。
海外の反応
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
私は万博の大ファンで、こういう旅行をずっと夢見てきたんだ。何年も前から計画して、4月に大阪万博を訪れて本当に楽しかった。
正直、ここまでうまくいくとは思わなかったよ。初期の報道は悲観的だったよね。「来場者1,500万人いけば御の字」とか、「建設が遅れてパビリオンが間に合わない」「リングも未完成」とか、散々な言われようだった。ミャクミャクでさえ笑いものにされてた。
でも結局、全部間違ってた。来場者は2,800万人を超え、ミャクミャクは大人気、万博は大成功。
もちろん不満もあったよ。予約システムとか、ウェブサイトとか。でも総じて見れば、すごくうまくいったと思う。
次の2023年サウジアラビア万博も今から楽しみだ!
今回の教訓は「マスメディアは本当にダメ」ってことだな。
連中は大阪万博が失敗するのを心底望んでたけど、結局黒字で終わったじゃないか。
まったく同感。自分も万博ファンで、1年前からこの旅行を計画してた。4月に行ったけど、開幕とゴールデンウィークの間で一番良い時期だったと思う。
それにしても、初期の報道は本当に悪意に満ちてたよね。なんであんなに失敗してほしそうだったんだろう?
あと、海外での宣伝がまったく無かったのも不思議。アメリカではポスターもパンフも一度も見かけなかった。
Redditも本当にひどかった。批判はいいとしても、あからさまなヘイト投稿が多すぎた。
同感だけど、何のために?目的は何なんだ?
多分、中国とロシアの「反日ボット」だと思う。
確かに不思議だった。普段のReddit的なネガティブさを超えて、妙に怒りっぽい投稿が多かったよな。
そうそう!この話題で大喧嘩になったんだよ(笑)
確かに黒字にはなったけど、その代償は過剰な混雑で、体験そのものが悪化したと思う。
実際に行った人たちに聞いてみろよ。満足度は8〜9割ある。
文句言ってるのは、日本に来るまで一度も外出したことなさそうな奴らだけだ。
私は反対だね。3回行ったけど、完全に悪夢だった。
終わりのない行列、スマホ片手に予約を取ろうと必死になってる人たち(でも誰も成功してない)、まるでゾンビみたいだったよ。
行けてよかったけど、9月の1日25万人の超混雑より、4〜8月の空いてる時期に行けばよかったな。
自分もすごく楽しめたよ。今回で5回目の万博だけど、最高ではないにせよ素晴らしかった。
Reddit(というかSNS全般)は本当にひどいという意見に同意。批判が集まりすぎて、群集心理で叩く人が多い。
多くの人が「現代の万博」というものを理解していない気がする。テーマパークを期待してるけど、そういう場所じゃないんだよ。
万博の醍醐味は、世界中の人と交流して、新しい発見をし、各国がテーマをどう解釈して表現しているかを楽しむこと。
今回もそれが十分にできた。大阪、よくやった!
本当に素晴らしい時間だった!
唯一の後悔は、ミャクミャクに会えなかったこと!
僕たちはミャクミャクの“おうち”まで行って会ってきたよ。楽しかった!
少なくともグッズは買えた?
うん!行けたのは1日だけだったけど、見たかったパビリオンは全部回れて、スタンプも100以上集められた!超ラッキー!
ミャクミャクの整理券はたぶん60人くらいしか取れなかったんじゃないかな?
あの子ほんと可愛いよね。グッズもいっぱい買えたし満足!
万博が終わっても、どこかで彼を残してほしいな!
体験としては最悪だった。黒字にはなったけど、一般来場者を犠牲にした結果だよ。
チケットを10倍も売りすぎた。
本来の万博の目的は「異文化を歓迎すること」なのに、今回のイベントはむしろ日本の評判を悪くしたと思う。
残念だったね。自分たちはすごく楽しめたけど、4月に行ったからまだ空いてたんだ。
運営は最初、チケットの売れ行きを心配しすぎて、後半に売りすぎたんだと思う。
でも日本の評判が落ちたとは全然思わないよ 🙂
いろいろあったけど、行けて本当に良かった。
混雑も待ち時間も天気も全部覚悟してたから、夢洲に着いた時は「まあ、想定内だな」って感じだった(笑)。
建築が好きだから、パビリオンに並ばなくても外観を見て回るだけで十分満足。
大屋根リングはぜひ残してほしいな。大阪、おめでとう!
考察・分析
経済と観光:夢洲再開発とIRへの期待
今回の万博は、関西の観光と地域経済を大きく動かしました。
コロナ禍で落ち込んでいた訪日客が戻り、会期中は大阪や京都、神戸などのホテルが満室になる日も多く、地域全体がにぎわいを取り戻しました。
万博の跡地となる夢洲(ゆめしま)では、今後「統合型リゾート(IR)」の建設が予定されています。
大阪府と市が進めるこの事業は、アメリカのMGMリゾーツとオリックスが共同で開発を担当し、2030年の開業を目指しています。
カジノのほか、国際会議場や高級ホテル、ショッピングエリアなどを備え、年間およそ2000万人の来訪を見込んでいます。
一方で、依存症対策や地元経済への影響を懸念する声もあります。
「万博で整備したインフラをそのままIRに転用するのでは」という指摘もあり、夢洲が“観光都市・大阪”の未来をどう形づくっていくのかが注目されています。
社会の変化と市民の参加:成熟社会の新しいかたち
2025年の万博では、AIやロボットなどの最先端技術だけでなく、「命」「つながり」「共生」をテーマにした展示が多く見られました。
それは、少子高齢化や孤立など、日本社会が直面する問題に対して、「人間らしい未来」を考えるきっかけを作る試みでもありました。
また、運営には多くのボランティアや学生が参加し、SNSを通じて来場者と交流する姿も目立ちました。
1970年の万博が「成長と技術の時代」を象徴したとすれば、2025年の万博は「共感と参加の時代」を象徴したといえるでしょう。
市民が主体となって支えた今回の万博は、成熟社会における新しい形のイベントモデルを示したとも言えます。
国際社会との関係:多極化する世界での「架け橋」
世界が分断や対立に揺れる中で、大阪万博は「対話と協力の場」としての役割を果たしました。
150を超える国と地域が参加し、欧米やアジアに加えて、中東やアフリカなど多様な国々が自国の文化や技術を紹介しました。
閉会式では、次回開催地であるサウジアラビアのリヤドにBIE(国際博覧会事務局)の旗が引き継がれました。
民主主義国家である日本から中東の新興国へとバトンが渡る構図は、まさに「多極化する世界」を象徴するものです。
日本は今回の万博を通して、政治的対立ではなく、文化と対話で世界をつなぐ“架け橋”としての役割を示したとも言えます。
総括
大阪・関西万博は、準備段階の混乱や批判を乗り越え、最終的に約2800万人の来場者を迎える成功を収めました。
1970年の万博が「成長と挑戦の時代」を映したものであったのに対し、2025年の万博は「共生と再出発の時代」を象徴するものになりました。
今後は、夢洲の再開発と2030年のIR開業に向けて、新たな局面を迎えます。
万博で築いたインフラや国際的な注目を一過性のものにせず、観光・雇用・地域の活力としてどう生かしていくか。
その答えが、大阪の次の10年を左右していくことになりそうです。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
関連書籍紹介
『大阪・関西万博ぴあ 完全攻略編』
開幕と同時に話題をさらった「大阪・関西万博ぴあ」の続編として、会場の全貌を徹底取材した『完全攻略編』。
初版は累計80万部を超えるベストセラーとなり、オリコン上半期BOOKランキング2025で1位を獲得した話題作。
本書では、開幕後のリアルな現場を歩いて得た“万博攻略法”を余すところなく紹介しています。
すべてのパビリオンを新たに実写撮影し、展示内容や見どころを具体的に解説。
来場者2,000人以上の声をもとにした「パビリオン満足度ランキング」も掲載されています。
さらに、リニューアルされた大判会場マップやグルメ・イベント情報、オフィシャルグッズ紹介など、万博体験を網羅する内容に。
閉幕後となった今では、“あの熱気を記録したガイドブック”として、当時の空気を思い出す資料的価値も高い一冊です。
『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書・松本創 編・2024年刊)
一方で、開幕前の段階からあえて「失敗」と断じ、その構造的問題を冷静に検証した一冊もあります。
松本創氏を中心に、記者・建築家・経済学者らがそれぞれの分野から大阪万博の裏側を分析。
政治・メディア・経済・建築・都市政策という切り口で、「なぜ日本は同じ誤りを繰り返すのか」を問い直しています。
「夢洲」という地盤リスク、維新主導の政治構造、「電通・吉本」依存の広報体制、そして“3兆円の経済効果”という根拠の薄い数字――。
開幕前に投げかけられたこれらの警鐘は、今となっては多くの読者にとって重要な再読対象となるでしょう。
成功の熱気が冷めた今だからこそ、この本が示す「検証のまなざし」が意味を持つ時期に来ているのかもしれません。
▼ 出典リンク一覧
The Japan Times|Osaka Expo closes after six-month run, organizers hail success despite early woes


