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大阪・難波のラーメン店で、日本語メニューと外国語メニューで価格が異なる「二重価格」が発覚し、国内外で大きな議論を呼んでいる。
問題となったのは、外国人客には高い価格が表示され、日本語メニューを選ぼうとすると店員に制止されるケースもあったとされる点だ。こうした対応に対し、専門家は「外国人価格という形での二重価格は不信感を招き、長続きしない」と指摘している。
出典:Yahoo!ニュース
海外の反応
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
かなり露骨な差別だと思う。ラーメンは、外国人が味に慣れていないから調整が必要な料理じゃない。ほとんどの旅行者はすでにラーメンを食べたことがあるし、具材も他の料理でよく使われているものばかりだ。いわゆる「慣れが必要な味」でもない。
そもそも、味の調整って普通は海外に出店するときに現地の味覚に合わせるためにやるものだろう? 日本以外の世界中すべての国の味覚に合うラーメンなんて、どうやって作るつもりなんだ。隠そうともしていないように見える。
「インバウンド向けに味付けや具材を変えた特別仕様だと言っている」
いやいや、これは専門家レベルの詭弁だろ。
要するに「観光客の好みに合わせて材料や味付けを変えたから、値段が違っても正当だ」って言いたいだけじゃないか。
観光客って、その国の本物の料理を食べに来てるんだろ? なんでわざわざ台無しにする必要があるんだ?
まさにその通り。
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考察・分析

問題は価格ではなく設計
今回の大阪のラーメン店を巡る騒動は、「二重価格そのもの」が原因ではありません。
本質は、二重価格を成立させるための設計条件を満たしていなかったことにあります。
店側は、日本語以外の言語を選択した場合は味や具材を調整した「特別仕様」であり、単なる値上げではないと説明していました。
高付加価値の商品を高く売ること自体は、商行為として珍しくありません。
しかし、現場ではその理屈が機能しませんでした。
付加価値が伝わらなければ意味がない
最大の問題は、客の目には「同じラーメンに見えた」ことです。
第三者が投稿した写真やレビューでは、見た目に明確な違いが分からず、
結果として「仕様が違う」という説明は、後付けの言い訳として受け取られました。
特に券売機という仕組みは、対面での説明や合意を前提としていません。
だからこそ、価格差と商品差が一瞬で理解できる設計でなければ、誤解ではなく不信につながります。
決定打は「選べなかった」こと
炎上を決定づけたのは、
安い方の日本語メニューを選ぼうとした客が制止された
とされる点でした。
たとえ本当に特別仕様だったとしても、
・通常仕様
・特別仕様
この2つが並んで提示され、どちらを選ぶかを客が決められる状態でなければ、
それは「高付加価値販売」ではなく、選択肢の剥奪になります。
この瞬間、議論は値上げの是非から、
「隠された価格」「騙し討ち」という倫理の問題へと一気に転びました。
国際的に通用する二重価格の条件
二重価格は、国際的には珍しい制度ではありません。
ただし、受け入れられているケースには共通点があります。
・線引きは国籍ではなく居住
・価格差は最初から公開
・割引を受ける側が自発的に証明する
つまり、外国人割増ではなく、居住者割引という形です。
一方、言語によって価格が変わる方式は、
安い価格が存在するのに選べないという不満を必ず生み、
現場で線引きが崩壊します。
今回の設計は、この地雷原に自ら踏み込んだ形でした。
返金要求が噴出した理由
観光客は、その土地の相場観を持っていません。
そのため、支払い時には納得していても、後から情報を得た瞬間に
「自分は不当に高い金額を払ったのではないか」
という認知に切り替わりやすい。
支払いの正当性を、その場で確認できなかったことが、
返金要求の連鎖につながりました。
注意書きがあったかどうかではなく、
「自分が納得して選んだ」と言える構造だったかどうか。
ここが決定的に欠けていました。
現実的な落とし所はどこか
インバウンドの急増とコスト上昇で、価格調整が必要なのは事実です。
問題は、やり方です。
トラブルを避ける現実解は、次のような方向になります。
・基本価格は統一し、居住者割引で調整する
・混雑時間帯や繁忙期だけ価格を変える
・多言語対応は価格操作ではなく説明の強化に使う
二重価格を導入するなら、
差を隠さないこと
選択権を奪わないこと
この2点を外した時点で、どんな理屈も通用しなくなります。
総括
今回の騒動が示したのは、二重価格の是非ではありません。
価格の差をどう設計し、どう見せたかという一点に尽きます。
店側は「インバウンド向けの特別仕様」という理屈を用意していましたが、
客がそれを自分の意思で選べない構造だったことで、
付加価値ではなく「隠された価格」と受け取られました。
二重価格は、差を隠さず、ルールを公開し、選択権を客に委ねて初めて成立します。
その前提を欠いた瞬間、値上げの話は信頼の問題へと変わります。
今回の事例は、
価格政策そのものより、設計ミスがブランドを一気に毀損する
という現実を浮き彫りにしたものでした。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
関連書籍紹介
1. 失敗のメカニズムを解剖する
『失敗学のすすめ』 畑村洋太郎
今回のラーメン店騒動は、まさに失敗学で言うところの【虚偽の連鎖】の教科書的な事例です。
当初の目的(利益確保)のために、手段(価格の隠蔽)を誤り、それが露見した際の対応(言い訳・出禁)でさらに傷口を広げる。
このプロセスは、過去のあらゆる組織事故や企業の不祥事と共通しています。
- なぜ人は隠そうとするのか
- 小さな綻びがどうやって致命傷になるのか
本書を読みながら今回のニュースを見ると、店側が踏んでしまった「失敗の地雷」がどこにあったのかが、手に取るように分かります。
組織や個人の行動分析として、非常に学びの多い一冊です。
2. 「正しい値上げ」とは何かを知る
『新・観光立国論』 デービッド・アトキンソン
記事の解説にもあった通り、二重価格や外国人向けの高価格設定そのものは、これからの日本経済にとって必要な戦略の一つです。
しかし、それは「ぼったくり」であってはなりません。
著者のアトキンソン氏は、日本の観光業が安売りに逃げず、高額でも満足される付加価値(おもてなし・体験)を提供すべきだと長年説き続けています。
今回の店がやった「ただ高くする」のと、世界で通用する「価値に見合った対価を貰う」こと。 この2つの決定的な違いは何なのか。
海外からの客観的な視点で日本の観光戦略を説く本書は、感情的な炎上論議から一歩引いて、冷静にビジネスの正解を考える助けになります。
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