トケマッチ逮捕とみんなで大家さん集団訴訟 日本で繰り返される「ポンジ型投資」の構造と心理

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トケマッチ元代表を詐欺容疑で逮捕 高級時計シェア事業の破綻

高級腕時計のシェアリングサービス「トケマッチ」を運営していた会社の元代表が、詐欺容疑で逮捕された。
利用者から預かった高級腕時計を適切に管理・運用する意思がないまま契約を結び、時計が返還されない被害が相次いでいたとされる。
行方不明となった時計は千本以上、被害総額は数十億円規模にのぼる可能性がある。

出典:nippon.com(時事通信)


「みんなで大家さん」を巡り集団訴訟 不動産小口化投資に不透明感

不動産小口化商品「みんなで大家さん」を巡り、出資者らが運営会社や関連企業を相手取り、損害賠償を求める集団訴訟を起こしている。
配当原資や事業の実態が不透明で、契約時の説明が不十分だったと原告側は主張している。
行政処分の経緯もあり、事業の継続性が問われている。

出典:The Japan Times


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海外の反応

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


腕時計のタイムシェア以上に、悲惨なものって思いつかないな。


なんで? 高い腕時計を丸ごと買わなくても楽しめる、良いやり方じゃないか。


服や車、アートのレンタルサービスだってあるんだし、腕時計があっても不思議じゃないだろ。
見栄を張りたいだけなのはダサいと思うけど、別に革命的な発想ってほどでもない。


安いカシオの腕時計しか着けない人間だから的外れだったら悪いけど、
彼らは本当に「腕時計そのもの」を楽しんでるのか?
それとも「腕時計好きに見せびらかすこと」を楽しんでるだけなのか?


海外の反応の続きはnoteで読むことが出来ます。


考察・分析

トケマッチとみんなで大家さんは、なぜ同じ構造で人を飲み込むのか

トケマッチは刑事事件として逮捕に至り、みんなで大家さんは民事の集団訴訟が本格化しています。
表面上の結末は異なりますが、投資家の立場から見ると、両者は同じ方向に人々を誘導していました。

結論から言えば、扱う商品や見せ方が違うだけで、どちらも古典的なポンジスキーム型の危うさと重なる構造を持っていたと整理できます。
ここで重要なのは、法的な呼び名を確定することではなく、同じ警戒信号を見抜けるかどうかです。


トケマッチが示したもの シェアリングの皮を被った預託型スキーム

トケマッチ事件の本質は、腕時計の貸し借りそのものではありません。
「高級腕時計を預ければ、月々の安定収入が得られる」という期待を作り、その期待によって新規の預託を集め続ける仕組みにありました。

報道によれば、元代表らは詐欺容疑で逮捕され、被害は数百人規模、腕時計は約1700本、被害総額は28億円以上にのぼる可能性があるとされています。
さらに、預かった時計が売却され、暗号資産の取得やオンラインカジノ関連口座への送金に使われていた疑いも指摘されています。

ここで注目すべきは、被害額の大きさ以上に資産の流れです。
預けた時計が事業として循環していたのではなく、売却されて資金化されていたのであれば、それはシェアリングではなく、預託型の資産流用に近い話になります。

このような仕組みは、新規の預託や参加が止まった瞬間に破綻します。
実際、事件化した時点では、すでに自転車操業が限界に達していたと見るのが自然です。


みんなで大家さんが示したもの 遅効性で進行する同型リスク

一方、みんなで大家さんは、刑事事件ではなく、長期間続いた投資スキームが行き詰まった末に表面化したケースです。
2025年には、出資者1000人以上が、100億円規模の返還を求めて集団提訴に踏み切りました。

この案件の特徴は、「不動産」という実体があることが安心材料として機能しやすかった点です。
不動産は目に見える資産であり、株式や暗号資産より安全だという印象を持たれがちです。
さらに、分配金が一定期間支払われ続けると、人は仕組みの妥当性ではなく、「今まで受け取れた実績」に依存するようになります。

しかし、争点になっているのは、分配金の原資が本当に事業収益だったのかという点です。
もし分配が新規出資で補われていたのであれば、それは典型的なポンジスキームと同じ警戒ラインに入ります。

刑事事件化していないから安全なのではなく、
事件化しないまま長く続いたことで、被害が拡大したという点こそが、この案件の怖さです。


なぜ日本人は、同じ構造に引っかかりやすいのか

両者を結びつけているのは、手口以上に、騙される側の心理です。

第一に、低金利への焦りがあります。
銀行に預けても増えない状況が続き、年利数%という数字が過剰に魅力的に見えてしまいます。
数字が派手でないほど、「現実的」「堅実」と錯覚しやすい点が落とし穴です。

第二に、「日本だから大丈夫」という高信頼社会バイアスです。
日本の会社、日本人運営、長く続いているという情報だけで、警戒心が下がってしまいます。

第三に、広告や権威への依存です。
仕組みが複雑になるほど、人は自分で検証する代わりに、「誰が勧めているか」で判断します。
結果として、リスクの源泉よりも、安心感の演出に引きずられてしまいます。


ポンジスキームという言葉の整理

ここで、ポンジスキームという言葉を整理しておきます。

ポンジスキームとは、
実体のある十分な収益がない、または確認できないにもかかわらず、新規参加者の資金を原資として、既存参加者への支払いを回す構造です。
新規マネーが止まった瞬間に破綻する点が最大の特徴です。

トケマッチは預託型、みんなで大家さんは不動産小口化という体裁であり、法的な分類は異なります。
ただし、投資家保護の観点では、どちらも新規資金の流入が止まれば成り立たない構造であり、同じ警戒ラインに入ります。

ここを構造として捉えることが、最も実用的な自衛策になります。


見抜くための実務的チェックポイント

今回の2件から抽出できる、実務的なチェックポイントを整理します。

  • 収益の源泉が明確か。誰が、何に対してお金を払っているのか。
  • 最悪ケースが具体的に説明されているか。支払い停止時の対応は明確か。
  • 資産の管理は第三者の監督下にあるか。
  • 新規募集を止めても事業が回るか。
  • リスク説明が薄いのに、安心感を強調する表現が多くないか。

特に、「新規が止まると破綻するモデル」は、強い警戒が必要です。


総括 警戒すべきは流行語ではなく、お金の流れ

シェアリング、サブスク、不動産小口化、クラウドファンディング。
言葉自体は中立でも、詐欺は常に流行語の側に寄り添います。

重要なのは、いつも同じ問いです。
配当の原資はどこか。資産はどこにあり、誰が管理し、何が起きれば回らなくなるのか。

この視点を持たない限り、次のポンジ型スキームは、また別の名前で現れます。
今回の2つの事件は、そのことを極めて分かりやすく示しています。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。



関連書籍紹介

1. 欲望のブレーキを学ぶ名著

『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』
(モーガン・ハウセル 著)

「金持ちになる(Getting Wealthy)ことと、金持ちであり続ける(Staying Wealthy)ことは別物だ」

今回の2つの事件に共通するのは、「手っ取り早く資産を増やしたい」という焦りです。
著者のモーガン・ハウセルは、投資で最も重要なのはIQや分析力ではなく、「自分の欲望をコントロールする心理学(ソフトスキル)」だと説きます。

なぜ人は、十分なお金を持っていても、さらにリスクを冒して「怪しい高利回り」に手を出してしまうのか?
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参考リンク

トケマッチ元代表ら2人逮捕 被害28億円超か
https://www.nippon.com/ja/news/yjj2025122600340/

みんなで大家さん 集団提訴 1191人が114億円の返還要求(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900177277.html

分配金遅延の「みんなで大家さん」、被害弁護団が提訴へ(東京商工リサーチ)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201969_1527.html

運営側の行政処分に関する説明(都市綜研インベストファンド側発表)
https://www.minnadeooyasan.com/news/20240625/

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