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2026年2月24日、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始してから4年を迎えた。ゼレンスキー大統領は声明で、ロシアが当初想定した短期決戦は実現せず、ウクライナは国家としての独立と主権を守り続けていると強調した。キーウには欧州の首脳らが訪れ、連帯と支援継続の姿勢を示した。
一方で戦闘は続き、東部ドンバス地域を中心に消耗戦が続いている。領土問題や将来の安全保障をめぐる和平交渉は進展しておらず、終結の見通しは立っていない。欧州各国は支援を継続する一方で、対露制裁や財政支援をめぐる温度差も課題となっている。
出典:AP通信
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補足説明
侵攻から4年の現状
2026年2月24日。ロシアによるウクライナ全面侵攻から丸4年が経ちました。
戦線はなお東部と南部で動いていますが、地図の色はこの1年で大きく変わっていません。ロシアが実効支配する領土はおよそウクライナ全体の2割前後とされます。しかし、その数キロの前進のために、数千、数万規模の人的損失が積み重なっています。
面積はほとんど動かないのに、損耗だけが増え続ける――これが4年目の現実です。
しかし、この戦争は2022年に突然始まったものではありません。背景には、10年以上にわたる政治的・軍事的緊張の積み重ねがあります。
2013〜2014年:政権崩壊とクリミア併合
この戦争の出発点は、2013年11月にあります。
当時のヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領は、EUとの連合協定署名を直前で見送り、ロシアとの経済関係強化を選びました。これに反発した市民がキーウ中心部の独立広場(マイダン)に集まり、抗議は数か月にわたり拡大します。
2014年2月、衝突で多数の死傷者が出る中、ヤヌコビッチ大統領は国外へ逃れ、政権は崩壊しました。
ロシアはこれを「西側が関与した違憲クーデター」と位置づけます。
その直後、ロシア軍はクリミア半島を制圧し、住民投票を経てロシアへの編入を宣言しました。国際社会の多くはこれを違法な併合とみなしています。
さらに2014年春、ウクライナ東部ドネツク州とルハンシク州で親ロシア派武装勢力が蜂起し、政府軍との戦闘が始まりました。
2014〜2021年:「凍りついた戦争」
激しい戦闘の末、2014年と2015年にミンスク合意が結ばれました。
合意は停戦や重火器撤退、東部への特別自治付与などを定めましたが、履行の順序をめぐる解釈の対立は解消されませんでした。
ウクライナは「まず国境管理の回復が先」と主張し、ロシアは「政治的地位の確定が先」と主張しました。
大規模戦闘は減少しましたが、前線では砲撃や狙撃が続きました。2014年から2021年の間に、すでに1万人以上が死亡しています。
つまり戦争は止まったのではなく、「凍りついたまま燻り続けていた」のです。
この未解決の紛争が、2022年の全面侵攻へとつながりました。
NATO問題とロシアの安全保障観
ロシアが特に強く反発してきたのがNATOの東方拡大です。
冷戦後、旧東側諸国が次々と加盟しました。ロシアはこれを、自国の影響圏が縮小し、西側軍事同盟が国境に近づく動きだと受け止めています。
ウクライナがNATOに加盟すれば、
- NATO軍事インフラがロシア国境付近に配置される可能性
- ミサイル防衛や長距離打撃能力の展開
- 黒海の軍事バランスの変化
が生じ得ます。
ロシアはこれを「緩衝地帯の喪失」と捉えました。
一方でウクライナは、2014年のクリミア併合と東部介入こそが脅威であり、NATO加盟は防衛のための選択だと主張しています。
ここに、相互不信の核心があります。
2022年:全面侵攻
2022年2月24日、ロシアは北・東・南の三方向から侵攻を開始しました。
これは東部限定の紛争ではなく、首都キーウを含む全土への攻撃でした。ロシアは「非軍事化」「非ナチ化」「ロシア語話者の保護」を掲げましたが、西側諸国はこれを侵略の口実と見なしました。
当初想定された短期決着は実現せず、戦争は消耗戦へと移行します。
現在の戦況:ハイテクと塹壕の同居
2026年現在、戦場は異様な光景となっています。
ドローンが空を埋め尽くし、AI支援の標的捕捉が行われる一方で、兵士たちは泥まみれの塹壕で数十メートルを争っています。
特に戦場を変えたのが、FPV(First Person View=一人称視点)ドローンです。これは操縦者がゴーグル越しにリアルタイム映像を見ながら操作する小型無人機で、爆薬を搭載し、戦車や陣地に体当たり攻撃を行います。安価で量産が可能なため、大量投入によって高価な装甲車両を無力化できる兵器として広く使用されています。
その結果、戦車や装甲車は露出すれば即座に標的となり、戦場は「透明化」しました。大規模突破は極めて困難になり、前線は細かく分断された消耗戦へと変化しています。
まとめ
この戦争は、
- ソ連崩壊後の勢力圏の再定義
- NATO拡大をめぐる安全保障対立
- 2014年から続く未解決の紛争
- 2022年の全面侵攻
という連続した過程の中で生まれました。
そしていま、焦点は単なる前線の数キロではなく、
- どの国がどれだけ支援を継続できるのか
- 戦後復興を誰が支えるのか
- 停戦が将来の再戦を防げるのか
という「次の秩序」に移りつつあります。
4周年は終点ではなく、むしろ長期戦の構造が固定化したことを示す節目です。
海外の反応
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
この4年間の戦争は、いくつもの誤った前提を暴き出した。
「ウクライナは弱く、統制も取れておらず、全面侵攻には耐えられないだろう」という見方だ。
ロシア軍の“無敵神話”も崩れた。
RUSI(英国王立防衛安全保障研究所)の分析によれば、クレムリンがいわゆる「特別軍事作戦」を開始した際、ロシア軍はわずか10日でウクライナを制圧できると見込んでいたという。
しかし1450日以上が経過した今、その見通しは根本的な誤算だったことが証明されている。
スラヴァ・ウクライーニ(ウクライナに栄光あれ)
ロシアがこれからも痛い目を見るのは間違いないと思う。
でも家族を失い、家を失い、自分自身を失ってしまった人たちのことを思うと……ウクライナの望む形で、できるだけ早く終わってほしいと願わずにはいられない。
プーチンを引きずり下ろすほどの強い動きが起きて、この悪夢が終わることを願うのは甘い考えかもしれない。それでも、希望を捨てきれない。
ロシアのプロパガンダは大したものだ。
西側はいまだに、カール大帝、ナポレオン、ヒトラーを破った“ロシアの蒸気ローラー(Russian Steamroller)”を恐れている。勝利の文脈や、敗北の歴史の長さは無視して。
アフガン戦争やチェチェン戦争についてのメディアの理解も誤っている。ベトナムのように戦術的勝利はあっても戦略的終着点がなかったという話に矮小化される。
しかしウクライナ戦争は違う。ウクライナはキーウやオデーサ周辺でロシアの正規軍の大半を撃退した。多くの戦術的戦闘で優勢に立ち、損害もはるかに少ない。
ロシアが一部地域で前進することはあっても、その代償は極めて大きく、戦略的に見れば“ピュロスの勝利(代償が大きすぎて実質的には敗北に近い勝利)”にしかならない。 この逆転は新しい現象だ。
ロシアがこの種の大量消耗戦に直面したのは第二次大戦以来だろう。
公式ストーリーでは、2022年当時、ウクライナが侵攻に耐えられると信じていた人はほとんどいなかったと繰り返されている。
ロシアはキーウを奪取できると見られていた。後で困難が生じるかもしれないが、という計算だった。
「ロシア国内でしか信じられていなかった」とは違う。
2022年以前、西側政府関係者を含め、多くの西側もそう考えていた。
歴史を書き換え、ウクライナの成果を過小評価している。
私たちはロシアを過大評価し、ウクライナを過小評価してきた。
長い間、ウクライナはソ連時代のジョークのネタや、見下したステレオタイプとして扱われてきた。トランプは今もその古い見方のままなのだろう。
だが注意して見ていた人間にとっては、侵略者をこれほど見事に退けているのは驚異的だ。
4年ではなく、実際は12年だ。戦争は2014年に始まってる。2022年じゃない。
ロシアはまだ全然代償を払っていない。まだ始まりにすぎない。
いいね1000回押したい。本当にその通り。
解決策は一つ。プーチン体制を終わらせ、ロシアが戦争の責任を現指導部に帰したうえで撤退することだ。
悲しいが、平和は往々にしてそういう政治的な整理や“都合のいい幕引き”の上に築かれてきた。
ロシアの新世代が拡張路線を否定し、方向転換を明確にすれば、数年後には国際社会との関係修復が進む可能性もある。
ただし、ウクライナと西側は長期的に備え続けるべきだ。
実際、戦争を主導したのは一部の指導層だった、という見方はある。決断を下したのは最高権力者とその側近だ。
だが戦争は一人では遂行できない。現場で行動する人間がいるからこそ続いている。
マリウポリやブチャでの行為、キーウへの攻撃、捕虜への扱い――それを実行したのは現場の兵士だ。
動員や圧力の中で選択肢がほとんどない兵士もいる。
いや、選択肢がある者もいる。
少なくとも将校層の多くは、自らの意思でその地位にとどまっている。
共感は大切だが、行き過ぎれば現実を直視しなくなる。
ロシアの体制では、過酷な行為や規範を逸脱する行動が昇進や権力につながる構造がある。
その仕組みの中で、自らを順応させてきた人間は少なくない。
これこそが「悪の凡庸さ」と呼ばれる現象だ。
そして問題なのは、あれほどの苦しみや犠牲が、国家の忍耐や誇りの証のように語られている点だ。
巨大な損失が自己正当化の物語に組み込まれている。
そうした価値観そのものが、外からは強い違和感と批判の対象になっている。
考察・分析
戦場の透明化が生んだ「突破不能」という新常態
この4年間の戦争における最大の変化は、前線が単に硬直したのではなく、軍事的な「突破」という行為そのものが成立しにくい環境に変質した点にあります。
無人航空機(UAV)の爆発的な普及により、最前線から数十キロに及ぶ極めて致死性の高い「キルゾーン」が形成されました。観測と攻撃のコストが劇的に下がり、露出した部隊はほぼ即時に捕捉されます。結果として、20世紀型の機甲縦隊による集中突破は、成功確率に対して損失が大きすぎる手段になりました。
この状況は、戦術の問題というより「戦場の物理法則が変わった」と表現した方が実態に近いです。守勢側にとっては、面で陣地を守るよりも、発見した目標を即座に叩く循環を回し続ける方が効率的となり、面積は動きにくいのに損耗だけが激しく増える構造が固定化していました。
民間インフラが戦局を覆す:スターリンク「ホワイトリスト化」の衝撃
しかし2026年2月に入り、長らく膠着していた前線(特に南部ザポリージャ方面など)で、ウクライナ軍が明確に前線を押し返すという重大な戦局の変化が生じています。この劇的な転換の最大の要因は、イーロン・マスク氏率いるスペースX社とウクライナ国防省が連携し、ロシア軍による衛星通信網「スターリンク」の不正利用を物理的に遮断したことにあります。
これまでロシア軍は、第三国経由で密輸した数千台規模のスターリンク端末を前線に大量投入し、ウクライナ側の強力な電子戦(ジャミング)を回避しながら、ドローンの精密操作や部隊間の指揮統制を行っていました。しかし今月、ウクライナ側が登録済みの端末のみ接続を許可する「ホワイトリスト方式(1日1回更新)」を導入したことで、ロシア側の端末は一斉にオフラインとなりました。
これにより、ロシア軍は深刻な打撃を受けました。一部の部隊では9割近くが通信手段を喪失し、ドローン運用と部隊間の連携が事実上崩壊状態に陥っています。代替となるロシアの国営衛星網(ガスプロム・スペース・システムズなど)も帯域不足により機能しておらず、指揮系統の混乱を突いたウクライナ軍が反転攻勢を強めています。
現代戦において、「一介の民間企業が管理する通信インフラのスイッチ」が、国家が動員した圧倒的な砲弾の数や兵力差すらも無効化し、戦争の勝敗そのものを左右するという恐るべき現実がここに示されています。
量から熟練へ、兵力構造が変わる戦争
この通信網を巡る攻防が示す通り、現代戦において兵力の価値は単なる「人数」から「オペレーターの熟練度とテクノロジーの統合」へと完全に移行しました。
AIを活用したドローンスウォームの制御や電子戦、情報融合といった分野は代替が利きません。大量動員で戦線の穴埋めをしようとするロシアの試みは、熟練度の不足によって甚大な損害に直結しています。戦争が長期化するにつれ、この人的資源の枯渇は前線だけでなく、国内経済の労働力不足や社会不安として跳ね返ってきています。
ロシアの戦時経済が抱える「見えにくい限界」
戦時経済は一見すると高い成長数字を作っているように見えますが、その内側では深刻な歪みが広がっています。インフレ対策としての異常な高金利が民間投資を完全に冷え込ませ、熟練労働者は軍需産業に吸い上げられています。
制裁を回避するための迂回調達はコストを押し上げ、財政を維持するための中小企業への搾取的な資金調達は、将来の成長エンジンを削り取っています。決定的な軍事的勝利を得られないまま時間だけが過ぎれば、この「国家の回復力の劣化」が戦略的に自らの首を絞めることになります。
正面戦の膠着が生む、破壊工作とグレーゾーンの拡大
前線での決定打が欠如するにつれ、戦争は周辺領域へと不気味に滲み出しています。欧州全土における物流施設への破壊工作、サイバー攻撃、情報工作、そして政治的分断の煽動が急増しています。
攻撃の実行主体が国家の諜報機関から多国籍な犯罪ネットワークへと「外注」され、責任の所在が曖昧になっている点が厄介です。抑止が効きにくく、決定的な反撃に踏み切れないまま消耗だけが強いられるグレーゾーンの応酬は、戦争長期化の必然的な副産物となっています。
北朝鮮要因が変える戦争の性格と、東アジアへの波及
北朝鮮が数百万発の砲弾や弾道ミサイル、さらには大規模な兵力を投入してロシアを支える構図が定着したことで、この戦争の地域性は完全に失われました。
特に日本周辺にとって警戒すべきは、北朝鮮の軍隊が現代戦の最前線で極めて貴重な実戦ノウハウを持ち帰ることです。スターリンク遮断の隙を突くような電子戦環境下での戦術やAIドローンの運用が北朝鮮軍に統合されれば、朝鮮半島や東アジアにおける危機管理の前提が根底から覆ります。
日本の役割は「武器の代替」ではなく「国家の持久力」を支えること
欧米で支援の継続性に対する不確実性が高まる中、高市早苗政権下の日本は、ウクライナにとって最も強固で不可欠なパートナーとしての地位を確立しています。
平和憲法の制約により殺傷兵器の提供には制限があるものの、日本の役割は決して欧米の代替ではありません。財政支援、越冬インフラ整備、地雷除去といった基盤分野の支援は、前線の戦況以上にウクライナの「国家としての持久力」を直接的に左右します。「今日のウクライナは明日の東アジア」という危機感に基づき、日本は実質的な抑止環境の維持に直結する貢献を続けています。
停戦が難しい理由は、領土よりも「再侵攻を止める仕組み」にある
米国などを中心に停戦圧力が強まっていますが、交渉の争点は表面上の「領土の線引き」ではありません。核心は、将来の安全を担保する「アーキテクチャ(安全の保証の設計)」にあります。
ウクライナにとって実効性のない保証は国家消滅への猶予期間に過ぎず、ロシアにとっても目的未達の停戦は国内統制の危機を招きます。非武装地帯の監視、違反時の自動的かつ壊滅的な制裁、再侵攻を抑止する軍事同盟の担保がなければ、いかなる合意も即座に機能不全に陥ります。
総括
侵攻から4周年という日は、戦争が終わらないことの確認ではなく、「終わらない構造が完全に固まったこと」の確認に近い節目です。
戦場は極限まで透明化し、勝敗は生産や補給、政治の持久力に完全に依存するようになりました。その一方で、2026年2月のスターリンク遮断が示したように、民間テクノロジーの動向一つで硬直した戦局が突如として覆るという、予測不能な脆さも孕んでいます。
いま国際社会に問われているのは、前線を数キロ押し戻す力よりも、疲弊する支援を継続し、戦後の復興を設計し、そして何より「次の侵略を抑止できる新たな秩序」を構築できるかどうかです。停戦とは単にこの戦争を止める交渉であると同時に、今後数十年の世界のルールを決める交渉でもあります。ここが固まらない限り、真の平和が訪れることはありません。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
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関連書籍紹介
終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来
著者:小泉 悠(文春新書)
なぜこの戦争は、ここまで長期化し、固定化したのか。
本記事で整理した「戦局が動かない理由」や「戦時経済の限界」といった構造を、より広い地政学の視点から読み解いてくれる一冊です。ウクライナ戦争を単なる地域紛争ではなく、世界秩序の再編として捉え直すための土台になります。
前線の地図だけを追っていると見えなくなるものがあります。この本は、その“見えない構造”を考え続けるための座標軸を与えてくれます。
ドローン戦入門 無人機は現代戦をどう変えたのか
著者:多田 将、数多 久遠 ほか(イカロス出版)
本記事で触れた「戦場の透明化」や「キルゾーン」という現象を、技術と戦術の両面から理解したい方に最適な一冊です。
なぜ装甲部隊は突破できなくなったのか。なぜ数十万円規模の無人機が数億円規模の兵器を無力化するのか。
ドローンが単なる新兵器ではなく、戦争の前提そのものを変えてしまった理由を、具体的に掘り下げています。現代戦が“別のゲーム”に変わったことを実感できるはずです。
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参考リンク
Ukraine says Starlink terminals used by Russia deactivated on battlefield, Ukraine says (Reuters)
Russian Offensive Campaign Assessment, Dec. 31, 2025 (ISW)


