「社会のバグ」を消した先に何が残るのか チームみらいの躍進と最適化社会の罠


はじめに

2026年2月の衆院選で、チームみらいは比例で11議席を獲得しました。

結党から日が浅い政党がここまで議席を伸ばすのは異例です。組織力も歴史も十分とは言えない中での結果であり、今回の選挙の象徴的な出来事の一つでした。

彼らは怒りを煽らず、敵を作らず、既得権との戦争を叫ばない。
代わりに、AI、デジタル化、透明性、効率化といった言葉で政治を語ります。

政治を闘争ではなく、改善可能なシステムとして扱う姿勢

既存政党への疲労感が広がる中で、この語り口が支持を集めたのは不思議ではありません。


「リファクタリング」という発想

チームみらいの核心にあるのは、社会を整理可能なものとみなす視点です。

複雑で不合理な制度は単に整理されていないだけ。
ルールの矛盾は設計ミス。
意思決定はデータで最適化できる。

IT用語でいえば「リファクタリング」。外部の振る舞いは維持したまま、内部構造を整理する。

この発想は極めて合理的で、現代的で、そして魅力的です。

FAXや紙文化に象徴される行政の遅さにうんざりしてきた人にとって、それは爽快な処方箋に映ります。

さらに彼らは、極端な財政ポピュリズムにも距離を取りました。消費税の減税を叫ぶだけでなく、財源との整合性に触れる姿勢も見せています。

ここまでは、きわめて堅実です。

だからこそ、11議席という結果が生まれたのでしょう。


では、この「設計型の新党」は、外からどう見られているのか。

英語圏の掲示板では、期待と警戒が同時に語られていました。
既存野党への失望からの支持、AIという言葉への冷静な懐疑、技術者としての評価、理念の輪郭の曖昧さへの違和感。

熱狂一色ではなく、むしろ距離を取りながら観察している印象です。

その議論の断片を紹介します。


海外の反応

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


チームみらいに投票した人を何人か知ってる。響きが良かったのと、高市に入れたくなかったかららしい。参政党に入れるよりはマシって感じ。

一番の問題は「中道改革連合」がク〇だったことだよ。信用できるリベラル系の野党がいないから、参政党やチームみらいみたいな連中が付け入る余地ができる。


うちの夫がチームみらいに投票したよ。当選した候補の1人は、友達の友達みたいな関係。
普通の人は、ネットに張り付いてる人ほどAIのことを理解してない。だから「AI」って言われると、ただすごそうで未来っぽく聞こえるんだよね。
2015年にトランプの「沼を干上がらせろ(drain the swamp)」が大衆に刺さったのと同じで、単純で気持ちいい解決策に見えるんだと思う。


うちの妻もこの党に投票した。
IT業界のバズワードを並べて、よく分かってない人を「おおっ」と思わせてる政党に見えるんだけど、俺の日本語力じゃ深く理解できるほど読めないんだよな。


AIって言葉だけで異常に興奮する人が多すぎる。
俺はAI業界で働いてて嫌いじゃないけど、スキルもない連中が
「AIが人類を置き換える」「開発者をクビにする」「移民を止めてAIにやらせる」
みたいな煽りで注目を取るのが嫌だ。

しかもチームみらいは具体策も実績もない計画段階なのに11議席を取ってて、組織票かテック票に見えるが、日本にそんな層は多くないだろ。


なんで11議席が組織票に見えるの?
全部比例だし、他の政党に不満を持ってる人が入れたんでしょ。参政党やれいわに失望した層も含めて。
単一争点政党、あるいは政策の幅が狭い政党が注目を集める流れは、日本だけじゃなくて昔からあるよ。


チームみらいって、外国人をAIで置き換えられるとか言ってる党だろ。


それは「外国人を追い出してAIで置き換える」って意味じゃなくて、将来の労働力不足を補うための移民の一部を、AIで代替して負担を減らすって意味だよ。


この自称「AIエンジニア」、東大出てボストン・コンサルで働いてたらしい。
俺がこの人を評価してるのは、党のビジョンがこれだから。

分断を煽らない。
誰かを貶めない。
何事も決めつけない。

参政党みたいに真逆の価値観を持つ政党と比べたら、希望がある。
去年から追ってて投票もした身としては、日本政治で不可能をやったと思う。


安野氏は少なくとも変な人ではない。東大でコンピューター系の修士号を取っている。
ただし、本当に技術の最前線でゴリゴリやってきた「現場の専門家」かと言われると微妙で、経歴はコンサルやスタートアップ寄りだ。
AIの技術者としては自分より優秀かもしれないけど、もし自分が会社の技術責任者だったら、AI開発チームのリーダーを任せたいとは思わない。

個人的には、チームみらいは「新世代の中道系ネオリベ政党」だと思う。
投票できるなら自分は入れないけど、極端な右派よりは客観的にマシだと思う。


経済政策については現実的なことを言ってるから注目されてる面もあると思う。
他の党が「食料品の消費税ゼロ」とか言ってる中で、彼は「福祉を大幅に削らないと無理」と指摘してた。 こういうのが刺さる層はいる。
AIで国の問題を解決するみたいな話は怪しいところもあるけど、一定数が魅力を感じるのは分かる。


冷凍食品売り場にあるくらい冷え切った当たり前の意見で評価されるって、なかなか狂ってるよな。


分断を煽らない。誰かを貶めない。何事も決めつけない。
でもさ、それってちょっとネガティブじゃない?
「するな」って出発点を見てるだけで、目的地がない。 「やれ」はどこにあるんだ?


よく分からんけど、ある意味では良さそう。
でも「絶対に分断を煽らない」って誓うのは、重要な問題について何の信念も持たないってことにも聞こえる。


正直ほとんど知らない。ただSNS広告はめちゃくちゃ上手いと思う。
でもこの人の経歴はもっと知りたいな。「AIエンジニア」としての実績って何なんだろ。


グロービスのYouTubeにゲスト出演してるから、それ見ればいいよ。あれで十分分かる。


たぶん「ネオ・テクノクラート」系の政党なんだろう。少なくとも老害政治に新鮮さは持ち込んだ。
外国人の話は覚えてないけど、官僚の紙仕事を減らすとか、ネットで取引を透明化するとか、そういう話はYouTubeでよくしてる。
この人はメディアの使い方が上手い。右派の老人政党より、若者の心を掴む。


考察・分析

ブラジリアという実験

ここで少し、歴史に目を向けます。

ブラジルの新首都ブラジリアは、20世紀半ばにゼロから設計された都市です。上空から見ると巨大な飛行機の形をしており、行政、住宅、商業といった機能ごとに厳密にゾーニングされました。道路は広く、動線は明確で、都市は論理的に整理されています。理論上、無秩序は起きにくい構造でした。

しかし、実際に住んだ人々の体験は設計図通りではありませんでした。歩行者が偶然出会う細い路地はほとんどなく、商店が自然発生的に広がる余地も乏しい。巨大なスケールと均質な空間構成は、効率性と引き換えに生活のにおいを希薄にしました。

ブラジリアは失敗都市ではありません。行政機能は果たしていますし、都市としても成立しています。ただし、「設計としての美しさ」と「人間が住みやすいかどうか」は同じではないということを示した都市でもあります。都市は論理で完成できても、生活は論理だけでは完成しない。その事実を可視化した実験だったと言えるでしょう。


最適化された社会の輪郭

もし社会全体をリファクタリングできるとしたらどうなるのか。

AIが広聴を担い、世論を瞬時に分析し、政策の効果を数値で提示する。予算配分は効率指標に基づき、行政手続きは自動化され、曖昧な裁量は縮小されていく。手続きの遅延や不公平感は減り、透明性は高まるでしょう。

一方で、社会の振る舞いはより均質になります。制度にうまく適合しない生き方は例外処理の対象となり、非効率な選択は改善すべき対象と見なされる。強い感情や少数の声は、データの中では重みを持ちにくい。

それは独裁ではありません。むしろ善意に基づく合理化です。しかし、合理化が進むほど、社会は「測定できるもの」を中心に回り始めます。測定しにくいもの、たとえば遠回りや衝動、非合理な選択といった人間的な側面は、徐々に周縁へと押しやられる可能性があります。

社会がどこまで最適化されるべきか、その境界はまだ明確ではありません。便利さと自由のあいだにある緩衝地帯を、どこまで残すのかという問題でもあります。


「未来」という自己認識

チームみらいは、自らを右でも左でもないと語ります。イデオロギーの対立を更新し、テクノロジーによって課題を処理するという自己認識は、一貫しています。

この点で、彼らを従来型の保守や革新の枠組みで理解するのは適切ではありません。むしろ問いは別の場所にあります。社会は設計可能なシステムなのか、それとも設計しきれない余白を前提とする存在なのか。

設計を進めること自体が問題なのではありません。問題は、設計の射程をどこまで拡張するかです。


総括

チームみらいの躍進は、日本政治に新しい言語を持ち込みました。合理性と透明性を前面に出す姿勢は、既存の政治文化に対する確かな刺激になっています。それ自体は健全な変化です。

ただし、合理性は常に説得力を持ちやすく、疑われにくい。社会を整えることと、社会を均質にすることは、どこかで交差します。

ブラジリアが示したのは、設計が成功しても生活が成功するとは限らないという事実でした。テクノロジーは強力な道具ですが、社会をどこまで委ねるのかは別の問題です。

11議席という数字は、まだ始まりにすぎません。問われるのは、その先でどこまで設計を広げ、どこに余白を残すのかという選択です。それは政党だけでなく、有権者側の判断でもあります。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。


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『アメリカ大都市の死と生』

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彼女が注目したのは、雑多な商店、用途の混在、細い路地、偶然の出会いといった、一見すると非効率で無秩序に見える要素です。そうした「整理されていないもの」こそが、安全や活力、創造性を生み出しているのではないかと論じました。

記事で触れたブラジリアの例をより深く理解するための理論的土台となる一冊です。社会の「バグ」を消そうとする発想が、何を同時に消してしまうのか。その問いに静かに向き合わせてくれます。

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