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日本の衆議院選挙で、高市早苗首相が率いる自民党が大勝し、憲法改正に必要な「3分の2(スーパー・マジョリティ)」を衆議院で確保した。日本で単独政党が衆議院の3分の2を獲得するのは、戦後初めてのことになる。
高市首相は、選挙後の記者会見で「国を強くする重い責任を感じている」と述べ、憲法改正に向けた議論を進める意向を示した。高市氏は以前から、憲法9条の見直しや、自衛隊の位置づけをより明確にする改憲を主張してきた。
ただし、憲法改正には衆議院だけでなく参議院でも3分の2以上の賛成が必要であり、その後に国民投票で過半数の支持を得る必要がある。
出典:Nikkei Asia
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補足説明
現行憲法と「改憲」の手続き
日本国憲法は1947年5月3日に施行され、現在まで一度も改正されていません。先進国の中では珍しい部類に入ります。
改憲の手続きは憲法96条で定められており、衆議院と参議院それぞれで総議員の3分の2以上の賛成によって発議し、その後に国民投票で投票総数の過半数の賛成を得て成立します。
制度上、衆院で3分の2を確保しても、参院の3分の2と国民投票という二つの関門が残ります。
自民党にとっての改憲は「党是」である
今回のニュースを理解するうえで重要なのは、改憲が高市首相個人の政策というだけでなく、自民党が結党以来、一貫して掲げてきた党是(基本方針)である点です。
自民党は1955年の結党以来、憲法改正を政治目標として掲げ続けてきました。しかし現実には、衆参両院での3分の2確保と国民投票という高い制度的ハードルがあり、戦後一度も実現していません。
その意味で今回の衆院選結果は、少なくとも衆議院に限っては、自民党が単独で改憲発議の条件を満たしたという点で、長年「掲げられてはきたが届かなかった目標」に初めて手が届いた出来事とも言えます。
自民党が掲げる「改憲4項目(4つの柱)」
自民党は、改憲の具体的争点として、主に次の4項目を柱として提示してきました。
第一に、9条改正(自衛隊の明記)です。現行9条1項・2項を維持したまま、自衛隊の存在を憲法上に明記するという構想です。
第二に、緊急事態条項の創設です。大規模災害や有事などの非常時に、政府や国会の権限をどう整理するかを憲法上に定めるという論点です。
第三に、教育の充実です。教育支援や教育環境の整備などを、憲法上の理念としてより強く位置付けることを想定しています。
第四に、合区解消・地方自治に関する論点です。参議院選挙区における合区の解消などを通じて、地方の代表性を制度的に確保するべきだという主張が含まれます。
9条と「現実の安全保障」のねじれ
改憲論議で中心になりやすいのが憲法9条です。9条は戦争放棄や武力行使の否認、戦力不保持などを定めています。
一方で現実には自衛隊が存在し、政府は長年にわたり「自衛のための必要最小限度の実力は許される」という解釈で整合を図ってきました。
つまり日本の安全保障は、条文の字面だけで動いているわけではなく、解釈と運用の積み重ねで成立してきた仕組みです。この「条文と現実の差」をどう扱うかが、改憲の議論で繰り返し争点になります。
なぜ今、改憲が前面に出てくるのか
改憲が政治テーマとして再び前面に出てくる背景には、安全保障環境の変化があります。北朝鮮の核・ミサイル、中国の軍事力増強、台湾海峡の緊張、ロシアのウクライナ侵攻などが重なり、日本の周辺が不安定化しているという問題意識が強まっています。
ここに、同盟国である米国の対外関与が政権や国内事情で揺れやすいという見方が加わると、「解釈の継ぎはぎで対応するより、憲法上の根拠を明確にしたい」という主張が支持を得やすくなります。
改憲が必要だという側の論点
改憲に前向きな議論でよく出る論点は、主に次の三つです。
第一に、抑止力と同盟運用の観点です。危機の際に何ができるのかを国内外に示し、グレーゾーン事態も含めた対応を円滑にする狙いがあります。
第二に、制度の整合です。自衛隊が長年運用されている以上、曖昧な状態を残すより、権限と責任の枠組みを明確にし、民主的統制の形を整えるべきだという考え方です。
第三に、緊急事態条項の創設です。大規模災害や有事など非常時に、国や自治体がどのような権限で何を決定できるのかを憲法上整理するべきだ、という主張が改憲論の柱として語られることがあります。
護憲派が重視する現実的な懸念
護憲側にも、理念だけではなく現実的な懸念があります。
第一に、改憲の射程が広がるリスクです。9条や緊急事態条項を入り口に、統治機構や権利保障など広範な改変につながる可能性を警戒します。条文の書き換えは一度成立すると後戻りが難しいため、目的の限定と歯止めが重要だという立場です。
第二に、歯止めの弱体化への懸念です。専守防衛、文民統制、国会統制といった運用上の原則が、条文変更や制度設計次第で緩む可能性があります。抑止力を強めるなら、同時に統制や監視の仕組みを強化しなければバランスを失う、という考え方です。
第三に、国民投票の環境です。争点が専門的になりやすい一方で、キャンペーンは感情や分断に引っ張られやすいという懸念があります。論点を絞った透明な議論と、検証可能な情報提供が不可欠だという主張につながります。
海外から見た日本国憲法と改憲
海外から見た日本国憲法、とりわけ9条は「戦後秩序の象徴」として語られやすく、平和主義の特異な例として紹介されることがあります。その一方で、自衛隊の存在や装備、日米同盟の実態を踏まえ、「条文と現実が乖離している」と見る向きも強いです。
対外的な受け止めは地域によって温度差があります。米国では、同盟の役割分担や対中抑止の観点から、日本の防衛面での主体性拡大を肯定的に見る議論が出やすいです。反対に中国や韓国などでは、歴史問題の文脈と結びつきやすく、日本の改憲が「再軍備」や「軍国主義の復活」として警戒される傾向があります。
つまり改憲は、日本国内の制度設計の議論であると同時に、海外に対して日本の国家像を示すメッセージにもなり得るテーマです。
争点は「賛成か反対か」より「何をどう設計するか」
改憲は賛成か反対かの二択に見えやすいですが、実際には「何をどこまで変え、何を歯止めとして残し、統制をどう組み込むのか」という設計の問題です。
安全保障の現実に合わせて根拠を明確にしたいという主張と、戦後憲法が担ってきた規範と歯止めを軽視すべきではないという懸念が、具体の条文と制度設計の中でぶつかる形になります。
海外の反応
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
日本が「専守防衛じゃない」状態になるように憲法を改正するんだろ。さあ空母を引っ張り出す時間だ。
日本はもう、海上でF-35を発艦・回収できる艦を持ってる。でも法律上、それを「空母」と呼んじゃいけないだけ。
世界第7位の軍事力が、もう防衛的じゃなくなるって?
7位って、支出額の話だろ? みんな大学アメフトのランキングみたいに考えてて、「7位なら2位のちょい下のアンダードッグ」くらいに思ってる。
でも軍事力は支出だけじゃない。どこに金を使ってるか、どんな訓練をしてるか、技術がどれだけ先進的か、そういう要素が全部ある。
日本は先進国の経済規模を持ってる以上、防衛費がトップ10に入るのは当然だ。
それは「中国みたいな相手に対してリスクがない」という意味じゃない。
アメリカは、信頼できる軍事同盟国じゃないことを証明してしまった。
日本は自分で自分を守る準備をして、この新しい世界秩序の中で独自の道を見つける必要がある。
まあ、それは間違ってない。でもアメリカは複数の政権にわたって、日本にこういう憲法改正をずっと求めてきたんだよ。
これは太平洋におけるアメリカ外交にとって大勝利だ。
純粋に聞きたいんだけど、なんで高市ってこんなに人気なの?
極右の思想って、経済が不安定な時期に人気が出やすい。
たいていは状況を悪化させるんだけど、未来が見えないほど「劇的な変化を求める気分」は強くなる。
それに、浅い集中力とSNSに異常なほど噛み合うんだよな。あれほど強力なものはない。
それもあるけど、中国と台湾の緊張が高まってるのも大きい。そりゃ普通に怖いだろ。
日本で政党がスーパー・マジョリティ(圧倒的多数)を取るのって、かなり珍しい成果だ。
自民党は50年代からずっと、何らかの多数派か連立で日本を統治してきたけどな。
そうだけど、「多数派」と「スーパー・マジョリティ」は別物だよ。
日本の憲法改正には、国会の両院で3分の2が必要。
自民党は戦後ずっと(実質的に)政権を握ってきたけど、単独でスーパー・マジョリティを持ったことはない。
自民党と公明党の連立でなら、俺の数えた限り4回ある(2005年、2012年=安倍復帰、2014年、2017年)。
ただ、連立を前提に憲法改正をやろうとすると、どこかで意見が割れた瞬間に面倒なことになる。
第二次世界大戦後で、単独の政党がスーパー・マジョリティを取るのは初めてだよ。連立で統治するのとは全然違う。
まあ、そうとも言えるし、そうでもない。自民党って基本、「1つの政党」に見せかけて、実態は中に複数の政党が入ってるようなもんだから。
その中に入ってる複数の政党って、思想的にはどういう分類になるの? 外国人として気になる。
とにかく幅が広い政党で、ネオリベから地方重視、伝統主義者、ナショナリストまで全部入ってるんだよ。
考察分析:2026年、日本の改憲が「現実の政策課題」になった理由
「改憲の是非」ではなく「政治の条件が変わった」という話
今回の選挙結果が示しているのは、単に改憲が支持されているかどうかという話ではありません。
より重要なのは、自民党が結党以来の党是として掲げ続けてきた改憲に対して、少なくとも衆議院に限っては、単独で発議に必要な議席条件が揃ったという点です。
改憲はこれまで何度も論点として浮上してきましたが、現実の政治では「やりたくても進められない」状態が続いてきました。
その最大の理由は、衆参両院での3分の2と国民投票という制度上の壁が、常に立ちはだかってきたためです。
今回の衆院スーパー・マジョリティは、そのうちの一つを突破したという意味で、戦後政治の前提を変える出来事になっています。
「公明党不在」の衝撃:改憲のブレーキが外れた構図
今回の政治状況で見落とされがちなのが、これまでの改憲論議において、公明党が事実上のブレーキ役を担ってきた点です。
過去の自民党主導の改憲論議は、多くの場合、公明党との連立維持が前提でした。
そのため、自民党内により強い改憲志向があっても、政治的に成立しやすい「加憲」や「限定的な修正」に寄りやすい傾向がありました。
しかし、2026年の構図では、そのブレーキが弱まっています。
その結果として、改憲が単なる安全保障論ではなく、統治機構改革や国家の設計変更を含む「国家のOSの書き換え」へ広がっていく可能性が現実味を帯びます。
ここで注目すべきなのは、自民党が掲げる改憲4項目が、9条だけにとどまらない点です。
- 9条(自衛隊の明記)
- 緊急事態条項
- 教育の充実
- 合区解消(参院選挙区など)
これらは別々の論点に見えますが、政治的には「パッケージ化」されやすい性質があります。
つまり改憲が一度動き出すと、論点が連鎖的に広がる可能性があるということです。
防衛は「支出」ではなく「産業政策」になりつつある
海外の反応にあった「7位は支出額の話だろ」という指摘は、かなり本質を突いています。
日本の防衛力は、単に防衛費の総額だけで測れるものではありません。
そして2026年の改憲論議は、安全保障の議論であると同時に、防衛産業を成長戦略として位置付ける議論でもあります。
近年の日本は、経済安全保障という言葉が一般化したことで、防衛やサプライチェーン、半導体、宇宙、サイバー、AIが一つのパッケージとして語られるようになりました。
この流れの中で、改憲は「軍事的な制約の解除」というよりも、国家が長期的に投資すべき領域を再定義する政治テーマになりつつあります。
実際、防衛装備の共同開発や輸出、軍民両用技術の推進は、改憲と完全にイコールではないものの、政治的には同じ方向を向く政策として扱われやすいです。
この視点を入れることで、改憲論議が「右か左か」ではなく、「国家の産業構造と技術戦略」にも直結していることが見えてきます。
世代間の「憲法観」の乖離
もう一つ、2026年という時代ならではの視点に「世代間の憲法観の違い」があります。
高度経済成長期や戦争の記憶が濃厚な世代と比べ、デジタルネイティブ世代やSNSが日常の中心にある若い世代は、9条を「平和の守り神」と見るよりも「古いプログラム」と見る傾向が強いという分析があります。
この世代交代は、国民投票の結果に大きな変数として作用する可能性があります。
特にSNSを中心とした情報環境では、世代ごとの情報受容の仕方や価値観の形成プロセスが異なり、単純な支持・不支持の二択を超えた政治的な構造変化を生むかもしれません。
国民投票は「情報戦」の最前線になる
衆議院で3分の2を取ることはスタートに過ぎません。
改憲の最終的な壁となるのは国民投票です。
特に2026年という時代背景では、AI生成コンテンツ、ディープフェイク、短尺動画、広告ターゲティングなどが高度に発達し、国民投票は従来の選挙以上に「情報戦」の性質を帯びています。
このため、護憲派・改憲派双方によるネット広告戦や外部勢力の情報操作といった側面が、国民投票の結果に決定的な影響を及ぼす可能性があります。
「台湾有事」と改憲がリンクして見える理由
なぜ改憲が「今」なのか。
この問いに対して、海外の安全保障コミュニティがよく使う言葉が、いわゆる「2027年問題」です。
中国が台湾に対して軍事行動を取る可能性が高まる時期として、2027年前後が繰り返し言及されてきました。
もちろん、未来の戦争は断定できません。しかし、リスクのピークが近づいているという認識は、日米台の政策議論に強く影響しています。
この文脈で見ると、改憲は「戦いたいから」ではなく、「有事の際に法的な空白を作らないためのインフラ整備」として語られやすくなります。
現場の自衛隊が動く際に、条文と解釈のねじれが足かせになることを避けたいという発想です。
これは改憲派の論理としては、かなり現実的で説得力のある部分です。
一方で護憲派から見れば、その論理は「危機を理由に歯止めを外すことにつながる」という懸念にも直結します。
つまり台湾有事の時間軸は、改憲派にも護憲派にも、それぞれの主張を強化する材料として働いてしまう構造があります。
総括:改憲は「賛成か反対か」ではなく、国家設計の議論になる
今回の衆院選結果によって、改憲は理念論ではなく、現実の政策課題として前面に出てきました。
ただし、衆議院の議席条件が揃ったことは、改憲成立を意味するものではありません。参議院の3分の2、そして国民投票という最大のハードルが残ります。
それでも今回のニュースが持つ意味は大きいです。
戦後の日本政治で長年掲げられてきた改憲が、初めて制度上の現実性を持ったテーマになったからです。
改憲の論点は、9条だけではありません。緊急事態条項、教育、地方の代表性など、国家の仕組み全体に広がります。
さらに2026年の改憲論議は、安全保障だけでなく、産業政策、情報戦、そして台湾海峡の時間軸とも結びつきながら進んでいきます。
結局のところ、改憲の争点は「賛成か反対か」ではなく、「何を変え、何を残し、どんな統制を組み込むのか」という設計の問題になります。
日本がどのような国家像を選び、その選択を国民がどのような情報環境で判断するのか。改憲論議は、その核心を問う局面に入ったと言えます。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
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美しく、強く、成長する国へ。―私の「日本経済強靱化計画」
高市 早苗(WiLL BOOKS)
2026年の今、国策の中心に置かれている「経済安全保障」や「危機管理投資」を、高市氏自身がどのような思想で捉えているのかが分かる一冊です。
本書を読むと、彼女が憲法改正を単なるイデオロギー闘争ではなく、日本の生存戦略と経済成長の不可欠なピースとして位置付けていることが見えてきます。
賛成か反対かの前に、まずは一次情報として押さえておきたい本です。
「台湾有事」は抑止できるか-日本がとるべき戦略とは-
笹川平和財団(編)/中央公論新社
海外の反応でも繰り返し言及されていた「台湾海峡の緊張」と、日本の改憲論議がなぜここまでリンクして見えるのか。
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元自衛隊幹部や第一線の研究者が、有事のシナリオを踏まえながら、日本が直面する現実を冷徹に分析しています。
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