ニュース
ロイターの報道によると、2月28日、イスラエルはイランに対して先制攻撃を実施し、首都テヘランで爆発が確認された。イスラエル国内では空域閉鎖や公共施設の停止措置が取られ、軍は厳戒態勢に入ったという。イスラエル当局者は、今回の作戦は事前に米国と調整されていたと説明している。
同日、トランプ米大統領は米軍がイランに対する「主要な戦闘作戦」を開始したと表明した。作戦は数日間に及ぶ可能性があるとされ、標的にはミサイル関連施設などが含まれると伝えられている。
AP通信は、イラン側がミサイルや無人機で報復攻撃を行ったと報じており、周辺国でも空域制限や警戒措置が広がっている。今回の攻撃は事実上の米イスラエル共同作戦との見方が強まっており、中東情勢は急速に緊迫している。
今回の記事の重要ポイント(三点)
・2月28日の攻撃は、1月末からの米空母打撃群の前方展開と数週間の緊張の積み上げの延長線上にある
・トランプ大統領は核阻止だけでなく、イラン体制そのものに踏み込む発言を行った
・すでにイランの報復が始まり、衝突は地域規模へ拡大するリスクを帯びている
関連記事
補足説明
1月末の空母打撃群前方展開が意味したもの
前回記事で触れた通り、1月下旬に米国は空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃群をアラビア海周辺へ前方展開させました。随伴艦艇を含めた戦力は約10隻規模となり、艦載機も即応可能な態勢に入っていました。
これは地上部隊の大量投入ではありませんが、海空戦力としては短期間で作戦に移行できる布陣です。外交的圧力を示すと同時に、合意が成立しない場合の軍事オプションを現実の選択肢として提示する意味を持っていました。
交渉と戦力増勢が並走した数週間
核問題を軸とする合意の模索は続いていました。しかし核開発、弾道ミサイル、地域での影響力拡大が複雑に絡み、妥協の余地は限られていました。交渉が継続しているように見える期間であっても、水面下では軍事的緊張が着実に高まっていた状況です。
2月中旬の米イスラエル首脳会談も含め、外交的接触は行われていましたが、最終合意には至りませんでした。結果として、戦力の増勢と政治的決断が結びつく環境が整っていきます。
「核阻止」から体制言及へ踏み込んだ発言
2月28日の作戦開始と同時に、トランプ大統領は「イランが核兵器を手にすることは決してない」と強調しました。さらにイラン国民に対し、「自由の時が来ている」「政府を引き継げ」と呼びかけています。
これは単なる核施設への限定的打撃を超えるメッセージです。体制そのものに言及したことで、今回の軍事行動は戦術的措置にとどまらず、政治的含意を帯びる局面へと拡張しました。
すでに始まったイランの報復行動
米イスラエルの攻撃を受け、イランはミサイルおよび無人機による報復を開始したと報じられています。イスラエル北部への発射に加え、湾岸地域の米軍関連施設を標的とした攻撃も伝えられ、周辺国では空域制限や警戒態勢の強化が進んでいます。
これにより、衝突は単発の攻撃ではなく、応酬の段階へ移行しました。双方が軍事行動を実施したことで、緊張は質的に新たなフェーズに入っています。
地域拡大とエネルギー市場への波及リスク
イランはホルムズ海峡を抱える産油国です。軍事的緊張が高まるだけで、原油市場は敏感に反応します。実際の封鎖が起きなくても、供給リスクへの懸念が価格を押し上げる可能性があります。
日本のように中東依存度が高い国では、原油価格の上昇が電力料金や燃料費に直結します。軍事的当事者ではなくとも、経済的影響は現実的な問題として跳ね返ってきます。
今回の局面の本質
1月末の空母打撃群の前方展開は、抑止の演出にとどまらず、実行能力を伴う配置でした。2月28日の攻撃はその条件が整った上での政治判断であり、さらにイランの報復が始まったことで、衝突は仮定ではなく現実になりました。
今後の焦点は、限定的な応酬で収束するのか、それとも地域規模のエスカレーションへ進むのかという点にあります。この数週間は空白ではなく、軍事的衝突に向けた条件が積み重なっていた時間だったと言えるでしょう。
海外の反応
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
みんなが1か月前から予測してたことが、ついに起きたってわけか。
去年の夏に停戦が発表されたときも、ほとんど全員が長続きしないって言ってたよな。
さあ、始まったなって感じだ。
初めてでもなければ、最後でもないだろうな。
…またか。
イスラエルがイランを攻撃、イランが報復、そしてアメリカがそれを口実に攻撃開始。みんなが予想してた通りだ。
アメリカは最初からこうするつもりだった。
イスラエルに先に攻撃してほしいって実際に言ってなかった?
その通り、言ってたよ。
そうだよ、それがアメリカがどれだけ見た目が悪くてもイスラエルを支援する理由だ。
イスラエルは中東におけるアメリカの攻撃犬であり前線基地だ。地中海と紅海のすぐそばという戦略的な位置にある。バイデンが「イスラエルが存在しなければアメリカが作っていただろう」と言ったのはそういう意味だ。
中東の多くの国はアメリカに敵対的だ。イスラエルはその地域で影響力を維持し、兵器を試すための足場だ。その代わりに、ガザやヨルダン川西岸については目をつぶり、武器を供給している。
彼らは実際には地域での前線基地ってわけじゃない。通常はトルコやサウジ、カタールを拠点にするか、地域に停泊させた巨大な“浮かぶ都市”を使う。
ただし、彼らがアメリカ製の武器を買っているのは事実だし、地域における重要な情報源でもある。
トランプは文字通り、こうなるように求めてた。
イスラエルの報道によれば、これはイスラエル単独ではなく、米国との共同攻撃だったらしい。
実際は、アメリカがイスラエルに先に攻撃させて、あとから参戦して「最初に始めたのはイスラエルだ」と責任を押しつける構図だろ。
ホワイトハウス高官は「イスラエルが先にイランを攻撃した方が政治的に都合がいい」と考えているらしい。
「あとから参戦」って20分後のことを言うなら、まあその通りだな。
現在、アメリカは相当数の空爆を実施している。主導しているのはアメリカで、同盟国がそれを支援している形だ。
考察・分析
2026年2月28日 米イスラエル対イラン共同作戦の構造的背景と多角的影響
今回の米国およびイスラエルによるイランへの共同作戦「オペレーション・エピック・フューリー」は、単なる交渉決裂の延長線上にある突発的な武力行使ではありません。数カ月に及ぶ軍事的準備と、各国の冷徹な戦略判断が交錯した末に表面化した構造的帰結と見るべき局面です。
報道にある通り、作戦は事前に調整され、実施時期も一定期間前から想定されていました。これは、外交と軍事が並行して進んでいたことを意味します。交渉が破綻した瞬間に移行できる軍事フェーズが、すでに起動状態にあったということです。
外交は妥協の場であると同時に、軍事行動へ移る最終手続きとして機能する場合があります。今回の交渉過程は、まさにその側面を帯びていました。
地下要塞化が生んだ「物理的なタイムリミット」
なぜこのタイミングだったのか。その背景には、イラン側が進めてきた施設の地下化・要塞化があります。
パルチン軍事施設などでは、厚いコンクリート構造による補強や土砂で覆う防護措置が確認されています。これが完成すれば、地中貫通弾を用いても決定的な打撃を与えることが難しくなります。
攻撃側にとって時間の経過は不利に働きます。標的が強固になる前に行動するという判断が、政治的決断を後押しした可能性は否定できません。外交の停滞と物理的防護の進展が、同じ方向に圧力をかけた構図です。
白昼・週末攻撃の意味
今回の作戦は夜間ではなく白昼に実行されました。夜襲が隠密性を優先するのに対し、白昼攻撃は「見せる」こと自体がメッセージになります。
圧倒的な航空優勢を視覚的に誇示することで、指導部だけでなく国民にも心理的影響を与える狙いがあったと考えられます。
さらに週末というタイミングは、金融市場や行政機能の動きが鈍る時間帯と重なります。市場が閉まっている間に情報が流れれば、週明けに価格変動が一気に拡大する可能性があります。軍事と市場心理は、切り離せない関係にあります。
ロシアの計算とジレンマ
ロシアにとって、米国の軍事的・政治的資源が中東に向かうことは、欧州正面での圧力を相対的に緩和する効果があります。この点では一定の戦略的利益が存在します。
しかし一方で、イランは無人機やミサイル技術においてロシアと連携関係にあります。イランの軍事基盤が大きく損なわれれば、ロシア側にも影響が及びます。利益と損失が交錯する複雑な立場です。
ロシアは表向き強く非難しつつも、直接的な軍事介入には慎重姿勢を維持するとみられます。自国の負担を最小限に抑えながら、米国の戦略的集中力を分散させることが基本線でしょう。
中国のエネルギー安全保障という現実
中国にとってより直接的なのはエネルギー問題です。中東からの原油輸入は、中国経済の根幹を支えています。ホルムズ海峡が不安定化すれば、価格高騰だけでなく供給不安そのものが経済に影響します。
中国は自国民の退避を進めつつ、表向きは緊張緩和を訴える姿勢を取っています。長期的には、米国が中東対応に追われることはインド太平洋での戦略的自由度を高める側面もありますが、短期的なエネルギーリスクは無視できません。
中国の立場は、理念よりも実利に基づいた安定志向です。
非対称戦と経済への波及
通常戦力では米国・イスラエル側が優位ですが、イランは長年にわたり非対称戦能力を蓄積してきました。代理勢力、ドローン、弾道ミサイル、海上妨害といった選択肢は多様です。
戦闘が拡大すれば、湾岸諸国のエネルギー施設やシーレーンが影響を受ける可能性があります。仮に実際の供給停止がなくても、不確実性の上昇だけで価格は反応します。
原油価格の上昇はインフレ圧力を再燃させ、各国中央銀行の金融政策に波及します。市場のボラティリティ拡大は、投資や企業活動に直接的な影響を及ぼします。戦場は地理的には中東ですが、経済的には世界全体に広がります。
総括:均衡の再編か、長期不安定化か
2026年2月28日の軍事行動は、外交的均衡の限界が露呈した転換点です。力による現状変更が前面に出たことで、地域秩序は再編の段階に入りました。
短期的な軍事的成果は一定程度見込めます。しかし、体制転換という政治目標まで含めるならば、軍事力のみで安定が実現した例は歴史上多くありません。
焦点は、報復の連鎖をどこで制御できるかに移っています。均衡が新たな形で再構築されるのか、それとも慢性的な不安定へと移行するのか。今後数日の判断が、数年単位の帰結を左右する可能性があります。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
▼記事が面白かったら応援クリックお願いします!▼
▲更新の励みになります!▲
関連書籍紹介
戦争の地政学
篠田英朗(講談社/講談社現代新書/2023年3月刊)
今回の記事で触れた「なぜ今なのか」「なぜこの場所なのか」という問いを、構造から理解するための一冊です。
国家は感情で戦争をするわけではありません。地理、同盟、補給線、海峡、抑止力。そうした条件が選択肢を縛り、可能性を狭め、その中で最も合理的な行動が選ばれます。
ホルムズ海峡が持つ意味や、軍事行動が“時間との競争”になる理由も、この枠組みで読むと腑に落ちます。ニュースを「事件」ではなく「構造」として捉え直したい方におすすめです。
イランの地下世界
若宮總(角川新書/2024年5月10日刊)
外から見たイランと、内側で生きるイランはまったく違います。
体制は強固に見えても、社会の内部には複数の層があり、若者の価値観も一枚岩ではありません。本書は、制裁下の経済、革命防衛隊の影響力、抑圧と適応のリアルを、現地取材を通して描いています。
「体制転換」という言葉は簡単に使われますが、それが本当に起こる条件は何か。外圧が内部にどう作用するのか。この視点を持つだけで、今回の情勢の見え方は大きく変わります。
管理人のインプットツール
以下は、普段記事を書く際に実際に使っているインプット環境です。
ご興味があれば、参考までに置いておきます。
・Audible(オーディブル)
移動中や作業中に「耳で読書」。ニュースやビジネス書の消化に便利です。
→ Audible無料体験はこちら
・Kindle Unlimited
気になった本を一気に拾い読みする用途に重宝しています。
→ Kindle Unlimited無料体験はこちら
・AirPods
周囲の音を遮断して、記事執筆やリサーチに集中したいときに使用しています。
→ AirPodsをAmazonで見る
参考リンク
Israel says it launched pre-emptive attack against Iran(Reuters)
Israel’s operation against Iran was coordinated with US, Israeli official says(Reuters)
Trump warns some Americans may die amid US strikes in Iran(Reuters)
The Latest: US and Israel attack Iran as Trump says US begins ‘major combat operations’(AP)
Live: Israel launches pre-emptive attack against Iran(RNZ)


