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名古屋・IGアリーナで行われた井上尚弥対ムロジョン・アフマダリエフ戦で、井上がユナニマス判定(全会一致の判定勝利)により勝利し、スーパーバンタム級4団体統一王座を防衛しました。ジャッジスコアは 117-111、118-110、118-110。井上は試合を通じてスピードとテクニックで主導権を握り、アフマダリエフが流れを掴むことを許しませんでした。アフマダリエフは終盤に意地を見せたものの、全体としては井上の圧倒的な内容でした。
この判定勝利は、井上にとって2019年以来の「判定決着」となり、続いていた連続KO勝利はここで途切れる形となりました。
井上尚弥ドキュメンタリー写真集『NAOYA INOUE DOCUMENTARY PHOTO BOOK 2018-2023』 [ 井上 尚弥
補足説明|井上尚弥とアフマダリエフ、そして今回の一戦までの流れ
井上尚弥 ― 世界が認める「モンスター」
- 国籍:日本
- 階級:スーパーバンタム級(元バンタム級4団体統一王者)
- 戦績:30戦30勝(27KO)[試合前時点]
- 特徴:圧倒的な攻撃力と精密なディフェンスを兼ね備え、ほとんどの試合をKOで決着。
- 実績:フルトン、タパレスを下し、スーパーバンタム級4団体統一を達成。世界P4Pランキングでも常に上位をキープ。
ムロジョン・アフマダリエフ ― ウズベキスタンのサウスポー王者
- 国籍:ウズベキスタン
- 階級:スーパーバンタム級(元WBA・IBF統一王者)
- 戦績:15戦14勝(9KO)1敗[試合前時点]
- 特徴:アマチュア時代にロンドン五輪銅メダル。手数と鋭い左ストレートを武器に世界王者に上り詰めた。
パウンド・フォー・パウンド(P4P)をめぐる状況
ボクシング界では「階級を超えて最強は誰か」を示す指標として P4Pランキング が注目されています。
- テレンス・クロフォード(アメリカ):複数階級で無敗を維持し、直近ではカネロ・アルバレスを撃破。現在のP4P1位候補として最有力。
- オレクサンドル・ウシク(ウクライナ):クルーザー級で4団体統一を成し遂げ、さらにヘビー級でも王者に。重量級での成功からP4P上位に位置。
- 井上尚弥(日本):圧倒的なKO率と無敗の戦績により、クロフォードやウシクと並んでトップ3に数えられている。
今回の試合の意味
この一戦は、スーパーバンタム級における「真の最強決定戦」として注目されました。
井上にとっては無敗街道を続ける試練であり、アフマダリエフにとっては世界的スターを倒して再び頂点に返り咲く大チャンス。舞台は東京、日本国内外のファンが熱い視線を送る一戦となりました。
海外の反応
Crawford p4p #1..
クロフォードがP4Pナンバーワンだな…。
What a fight. Those 12 rounds might have been better than any knockout in Inoue’s career. The Inoue we’re used to, I can say maybe someone like Ruben Olivarez, maybe someone like Carlos Zarate chins him. But THIS Inoue? This version? How do you even fight that nonsense. And this ISN’T his go to plan, it’s something he keeps in his back pocket? Fuckin hell.
Between Crawford schooling Canelo and Inoue schooling Akhmadaliev that’s two fights to study for a long time. This is why we want the best to fight the best, the elite to fight the elite, it brings out the very best and one rises while the other shrinks. Boxing’s not dead, no. What a time to be alive.
なんて試合だ。あの12ラウンドは、井上のキャリアでどのKOよりも価値があったかもしれない。いつもの井上なら、ルーベン・オリバレスやカルロス・サラテあたりに顎を砕かれていたかもしれない。でも今回の井上?こんなバージョン?どうやって対処すればいいんだよ。しかもこれが彼の基本戦術じゃなく、隠し持ってるプランだなんて。信じられん。
クロフォードがカネロを圧倒し、井上がアフマダリエフを圧倒。これは長く研究されるべき2試合だ。だからこそ「最強は最強と戦うべき」なんだ。エリート同士が拳を交えると、どちらかがさらに輝き、どちらかが沈む。ボクシングは死んじゃいない。最高の時代に生きてるよ。
I always enjoy the respectful support the vanquished foe receives from the Japanese fans as they leave the arena.
日本のファンが敗者にも敬意を込めて見送る光景、いつ見ても素晴らしいと思う。
Bob Arum sucking Inoue’s youth out of his body as we’re speaking
今この瞬間も、ボブ・アラムが井上の若さを吸い取ってるんだろうな。
Seeing Crawford and Inoue putting up masterclasses on back to back days is a blessing
クロフォードと井上が、連日そろって「教科書レベル」の試合を見せてくれるなんて、まさに祝福だよ。
Bob arum is pretty lucid for 200 years old.
200歳にしては、ボブ・アラムはまだ頭が冴えてるよな。
Yeah maybe MJ gave the judges some robes too cause that was a complete shutout
あれは完全なシャットアウトだろ。もしかしてMJ(アフマダリエフ)が審判にもローブを配ったのか?
Did I hear that right? Inoue intentionally wanted to make it a 12 rd decision?
聞き間違いじゃなければ、井上はわざと12ラウンド判定にしたかったのか?
Yeah I told him to milk it so I can hit my parlay, dude’s a G
ああ、俺が「判定まで引っ張れ」って言ったんだよ。賭けのパーリーが的中するようにな。アイツは最高だ。
Crawford/Inoue/Usyk still in the top 3 confirmed. How you rank it, depends on you I guess. Each one of them deserve the #1
クロフォード、井上、ウシク。この3人がトップ3ってのは確定だな。順位付けは人それぞれだろうけど、全員ナンバーワンにふさわしい。
anyone could be number 1 and i won’t even be mad. You can slide in Bivol if we’re making a top 4
誰が1位でも文句はないな。トップ4にするならビボルも入れていい。
For me uysk, Crawford then inoue
自分のランキングでは、ウシク、クロフォード、そして井上だ。
Wow did Eddie Hearn even show up to the fight 🤔
エディ・ハーンって、この試合に来てたのか?🤔
Mannnn put your arms down, MJ
MJよ、腕を下ろせって。
Felt like Inoue wanted to prove something today and just technically outclass MJ lol
今日は井上が「何かを証明したかった」感じがしたな。テクニックでMJを完全に凌駕してた(笑)。
Yeah definitely, could search the kill but he just wanted to show his skill and his defense after his previous downs
間違いない。倒しに行こうと思えば行けたけど、あえて見せたのは技術とディフェンス。前回のダウンを経て、それを証明したかったんだろう。
Thats a satisfying win given how MJs fans have been harassing Inoue for years now
MJのファンが何年も井上を叩いてきたことを考えると、今回の勝利は本当に痛快だ。
Felt the judges were generous with MJ
判定はMJに甘かった気がする。
Inoue is like nice robe bro, I won’t knock you out.
井上「いいローブだな、じゃあ今日はKOしないでおくよ。」
I scored it 120 for Inoue. That punch at the end for Akhmadaliev wasn’t enough to win him that round.
俺の採点は120-108で井上だ。最後にアフマダリエフが当てたパンチ?ラウンドを取れるほどのものじゃなかったな。
I cannot wait for the Nakatani fight
中谷戦が待ちきれない!
He said My outboxing’s pretty good, right?
井上「俺のアウトボクシング、なかなかいいだろ?」
Inoue put on a speed and technique clinic. This style will hold well when he goes to 126
井上はスピードとテクニックの教科書を披露した。このスタイルならフェザー級(126ポンド)に上げても十分通用する。
MJ gave inoue a robe, Inoue gave him a beating
MJは井上にローブを渡し、井上はMJにボコボコをお返しした。
Nothing for the highlight reel. But its good to see Inoue pick-up his defence. Looked sharp as ever early rounds and looked to only get faster by the 9th. What a fight.
ハイライト映えするシーンは無かったけど、井上のディフェンスが向上してるのを見られて良かった。序盤からキレがあって、9ラウンド以降はさらにスピードアップしてた。いい試合だった。
There’s plenty for Inoue’s defensive work highlight reel. He had some insane exchanges where he was able to land his own shots while slipping MJ’s by mere inches
いやいや、ディフェンスのハイライトは山ほどあるぞ。ほんの数センチでMJのパンチをかわしつつ、自分のショットを当てる場面がいくつもあった。
both Crawford and Inoue have insane stamina moving like that 12 rounds.
クロフォードも井上も、12ラウンド動き続けるスタミナが尋常じゃない。
MJ just doing Clottey with guard up, get income, go home. Respect.
MJはクロッティみたいにガードを固めて、お金もらって帰るだけって感じだったな。まぁリスペクトはするけど。
Not sure how you even find that many rounds for MJ tbh. Right call at least.
正直、MJにあんなにラウンドを与えた採点がよく分からん。でも結果は妥当だった。
Maybe you give him the 5th? But that’s purely to be generous
せいぜい5ラウンドを取ったくらい?それも相当甘めに見てだな。
Inoue is gonna finally move up?
井上はついに階級を上げるのか?
Naw two more fights at this weight, Picasso and then Nakatani. Inoue v Nakatani will be a banger
いや、あと2試合はこの階級だろ。ピカソ戦と中谷戦。その井上vs中谷はとんでもない試合になる。
Looks like MJ was just happy to get a participation trophy
MJは「参加賞」をもらえて満足してるみたいだったな。
We hold Inoue to such a high standard that him getting clipped to no real effect at the very end of a dominating performance is disappointing lmfao
井上には基準を高く持ちすぎてるから、支配的な内容で勝った試合の最後にちょっと被弾しただけで「ガッカリ」とか言われるんだよな(笑)。
Only Nakatani has a chance to beat Inoue currently.
今の井上を倒せる可能性があるのは、中谷だけだ。
even he would’nt be able to
いや、中谷でも無理だろ。
Inoue got too comfortable and sloppy from round 9. MJ was too scared to let his hands go, I don’t think Junto would let it pass. Junto still has a shot at it.
井上は9ラウンド以降、ちょっと気を抜いて雑になった。MJは怖がって手が出なかったけど、中谷なら見逃さないだろ。まだチャンスはある。
Well, then he wont get comfortable
だったら井上も気を抜かないさ。
He will. Inoue is not known for his discipline
いや、抜くよ。井上はそこまで規律的な選手じゃない。
I think it would be a close fight
接戦になると思うね。
Closer than this one thats for damn sure
この試合よりは確実に接戦になるだろうな。
井上尚弥 判定勝利が示す意味
世界ボクシング界における井上尚弥の立ち位置
今回の判定勝利で井上尚弥は戦績を 31戦31勝(27KO)無敗 とし、改めて「現役最強ボクサー」としての評価を揺るぎないものとしました。
スーパーバンタム級で4団体統一を果たした後も、アフマダリエフという実力者を危なげなく退けたことで、この階級における絶対的な強さを示したといえます。無敗の継続は、P4P(パウンド・フォー・パウンド)ランキングでもトップ争いに留まり続ける十分な理由となります。
アフマダリエフの敗北が意味するもの
アフマダリエフは戦績を 16戦14勝(9KO)2敗 とし、世界王者としての再起を狙う立場に回りました。アマチュア時代から世界的に評価されてきた彼にとって、この敗北は大きな挫折となります。ウズベキスタンにとってボクシングは国威を示す競技でもあり、この結果は国内ファンに衝撃を与えると同時に、次世代選手へのプレッシャーを強めるでしょう。
日本のボクシングと国際的影響
井上尚弥の試合は、もはや日本国内の枠を超えた世界的イベントです。名古屋開催でありながら海外メディアやファンの注目を集め、その興行価値はラスベガスやロンドンと並ぶ水準に達しています。今後も「日本が世界ボクシングの舞台となり得る」ことを強く印象づける結果となりました。
今後の展望 ― ピカソ戦、中谷戦への布石
井上尚弥は試合後のインタビューで、次戦として メキシコの新鋭アラン・デビッド・“ピカソ”・ロメロ(33戦32勝23KO1分)との対戦を12月に行うことを正式に発表 しました。攻撃的で観客を魅了するスタイルを持つピカソとの一戦は、激しい攻防が繰り広げられると見られ、世界中の注目が集まります。
さらにリング上で井上は、来年5月に 中谷潤人との日本人頂上決戦を直接約束。中谷は現在、WBC・IBF世界バンタム級の2団体統一王者ですが、ベルトを返上してスーパーバンタム級へ転向する方針を表明しています。もし両者が無敗のまま激突すれば、それは「日本ボクシング史に残る世紀の一戦」となり、世界的にも大きな話題を呼ぶことは間違いありません。
パウンド・フォー・パウンド(P4P)をめぐる評価
2025年9月に行われたクロフォード対カネロ戦では、テレンス・クロフォードが勝利し、その結果P4P1位はクロフォードが濃厚となりました。階級をまたぎ強豪を打ち破り、スーパースターのカネロまで下した実績は現役ボクサーの中でも突出しています。
その下には、クルーザー級4団体統一からヘビー級制覇まで成し遂げたオレクサンドル・ウシクが続き、重量級での成功を評価されP4P上位に位置しています。
現状、井上尚弥は 3位前後 とみられますが、今回のアフマダリエフ戦を判定で制したことで評価を落とす理由はなく、依然としてトップグループに数えられています。さらに今後のピカソ戦や中谷戦で圧倒的な勝利を収めれば、再びP4P1位に返り咲く可能性も十分に残されています。
日本ボクシング界全体への影響 ― 軽量級黄金期
現在の日本ボクシング界は、軽量級で世界的な存在感を発揮しています。井上尚弥が「モンスター」として世界を制する一方で、中谷潤人が2団体統一王者となり、さらにスーパーバンタム級へ挑む流れは、まさに日本ボクシング黄金期の象徴です。
井上と中谷の対決は、単なる個人同士の戦いではなく、日本ボクシングが築いてきた軽量級の強さを世界に示す象徴的な舞台となるでしょう。
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井上尚弥、判定勝利で示した圧倒的強さと日本ボクシングの未来
井上尚弥がアフマダリエフに判定勝利を収めた今回の一戦は、単なる王者防衛にとどまらず、「スーパーバンタム級に敵なし」という評価を世界に印象づけるものとなりました。
次なる焦点は、12月に正式決定した アラン・デビッド・“ピカソ”・ロメロ戦、そして来年5月に対戦することが約束された 中谷潤人との頂上決戦 です。無敗の二人が拳を交えるその瞬間、日本ボクシングは新たな歴史の扉を開くことになるでしょう。
いまや軽量級において、日本は世界をリードする存在となっています。井上が切り拓いた道を、中谷をはじめとする次世代がどう受け継ぎ、さらに広げていくのか。日本ボクシングの黄金期は、まだ始まりに過ぎないのかもしれません。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。