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吉沢亮主演、李相日監督による映画『国宝』が、第98回アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作に決定しました。国内での大ヒットに加え、歌舞伎の女形を題材とする独自のテーマが注目されています
海外の反応
“Hmm solid choice but it probably won’t make the shortlist. No new films from the prestige Academy friendly Japanese directors in 2025 so they went with box office hit Kokuho. Other options were Scarlet, Sham, Yakushima’s Illusion, A Pale View of Hills and the Locarno winner Two Seasons Two Strangers.”
「まあ悪くない選択だけど、ショートリストには残らないだろうね。2025年は“アカデミー賞に強い”日本の有名監督の新作がなかったから、興行的にヒットした『国宝』を選んだんだろう。他には『スカーレット』『シャム』『屋久島の幻想』『遠い山なみの光』、それにロカルノ優勝作の『Two Seasons Two Strangers』なんかが候補だった。」
“I think it will make Shortlist”
「いや、ショートリストには入ると思うよ。」
“It could. Reception has been pretty great.”
「可能性はあるよ。評価はかなり良いからね。」
“It had a great reception in Japan, but a 3-hour biopic about a fictional Kabuki actor sounds a bit too specific to get international acclaim. I think, other films might be more accessible and generate more buzz. There’s limited space on the shortlist and there are already lots of great submissions this year.”
「日本ではすごく評価されたけど、“架空の歌舞伎役者の3時間伝記映画”って国際的に受けるにはちょっと特殊すぎると思う。今年は候補作も多いし、他の作品の方がもっと分かりやすくて話題になりやすいだろう。」
**”Reception for hundreds of international features has been great in 2025. It’s stacked this year.
It could make it, but if I had to guess it won’t make the shortlist.”**
「2025年は国際長編部門に出てくる作品の評価がどれも高い。今年は特に激戦だよ。入る可能性はあるけど、予想するならショートリストには残らないかな。」
“In Japan yes, but at Cannes reception was pretty muted”
「日本では確かに評価されたけど、カンヌでは反応は控えめだったよ。」
“It didn’t really receive any attention at Cannes, probably because it premiered in the Directors’ Fortnight. But it has a good letterboxd score.”
「カンヌではあまり注目されなかったね。たぶん監督週間で上映されたからだろう。でもLetterboxdのスコアは高いよ。」
“Well yeah but even the reviews from Cannes weren’t anything to write home about”
「まあそうだけど、カンヌでのレビューも特に目立つほどじゃなかったよ。」
**”The President’s Cake was in The Director’s Fortnight and it has a very good chance of being nominated. Kokuho mostly resonates with Japanese audiences.
Japan gets a lot of their films in, I think voters will pass on Kokuho. There are much stronger films.”**
「『The President’s Cake』は同じ監督週間出品でもノミネートの可能性が高い。『国宝』は主に日本の観客に響いてる作品で、アカデミーの投票者はスルーするんじゃないかな。他にもっと強い作品が多いし。」
“Scarlet could’ve had a shot, if it’s any good at least”
「もし出来が良ければ、『スカーレット』の方がチャンスがあったかもしれないな。」
“Not surprised bc this was a huge hit in Japan, especially for a live action movie. I doubt it will get nominated though”
「日本で大ヒットしたんだから驚きはない。特に実写映画でこれだけヒットしたのはすごい。でもノミネートまではいかないと思うな。」
多くのコメントでは“最終的にはノミネートまでは難しいだろう”との見方が目立ちました。しかし、現時点での評価はあくまで映画祭や日本での上映を踏まえたものであり、本格的な海外公開はこれからです。観客の裾野が広がれば、評価や議論の流れが変わる可能性も十分にあります。日本国内ではすでに大きな成功を収めているだけに、今後の海外公演を通じてどのように受け止められていくのかが注目されます。
女形と日本独自のジェンダー観
映画『国宝』がアカデミー賞の日本代表作に選ばれた背景には、単に興行的な成功だけでなく、作品が題材とする「女形」という存在そのものの国際的な独自性も大きく関わっていると考えられます。歌舞伎の女形は日本文化を象徴するだけでなく、ジェンダーや表現のあり方を考える上で世界的にも注目されている要素です。ここからは、その女形をめぐる歴史と、日本独自のジェンダー観について見ていきます。
歴史的背景
女形は江戸初期、遊女や美少年による歌舞伎が禁止された結果、成人男性が女性役を演じる制度として定着しました。つまりこれは単なる芸術表現ではなく、「性規範と統制」から生まれた文化でもあります。その後、女形は女性らしさの「模倣」ではなく「理想化された女性像」として昇華され、世界的にも稀有な芸能として生き残ってきました。
現代の評価:芸術か性差別か
今日の海外の視点は二面性を持っています。
- 肯定的評価:女形は「ジェンダーを超えた表現」として捉えられ、ドラァグクイーン文化やクィア・シアターと並ぶ「性表現の自由」の象徴とされています。坂東玉三郎の海外公演などは、こうした芸術的評価の代表例です。
- 批判的視点:一方で、女性が舞台から排除された歴史の産物という点から「封建的で性差別的」との指摘もあります。フェミニズム的観点では「女性の表現の場を奪った文化」という批判が根強く残っています。
日本独自の「性を演じる文化」
歌舞伎の女形に限らず、日本には「性別を演じる」文化が複数存在します。
- 宝塚歌劇団:女性だけで構成され、女性が男性役を演じます。女形の“逆バージョン”として、現代まで続く世界的に珍しい制度です。
- サブカルチャー:マンガやアニメでも性を越えるキャラクターは多く登場します。『ベルサイユのばら』のオスカルや『セーラームーン』のセーラーウラヌスなどは、海外でもLGBTQ的文脈で語られています。
- 歴史的同性愛文化:江戸時代の「衆道」に見られるように、同性愛は日本で伝統的に存在していました。ただし近代化とともに西洋型の性規範が導入され、タブー化されたため、芸能やフィクションの中で生き残る傾向が強まりました。
海外との比較
西洋にもシェイクスピア劇における「男性による女性役」はありましたが、女性の舞台参加が可能になると廃れました。その代わりに現代ではドラァグ文化やクィア演劇として「挑発的・反体制的表現」に発展しました。
一方で日本では、女形や宝塚のように「制度として守られ、権威ある芸術」として昇華され続けました。ここに「性を超える表現を芸術の正統とする」という日本独自のジェンダー観があります。
『国宝』が示す意味
この文脈で見ると、『国宝』がアカデミー賞の日本代表作に選ばれたことは、単なる映画の評価を超えて「日本が自国のジェンダー表現を国際舞台で提示する」文化外交的意味を持っています。
海外では「理解は難しいが美しい」「ジェンダー表現の一形態として刺激的」という両義的な受け止めが広がりつつあり、『国宝』は日本独自のジェンダー文化を国際的議論の俎上に載せる作品となっているのです。
国宝と歌舞伎の女形が映す日本独自のジェンダー観|アカデミー賞代表作としての意味
映画『国宝』は、歌舞伎の女形を題材にしながら、日本独自のジェンダー観と文化史を世界に示す作品となっています。欧米では消えた「男性が女性を演じる芸能」が、日本では芸術として継承され、宝塚やアニメのキャラクター表現とも通じる「性を超える文化」として根付いてきました。
アカデミー賞の国際長編映画賞部門で日本代表に選ばれたことにより、『国宝』は映像美や演技だけでなく、ジェンダー表現や文化外交の文脈でも注目を集める作品となっています。今後の国際映画祭やSNSでの議論を通じて、女形を中心とした日本の伝統芸能が、LGBTQやフェミニズムの視点からも再評価される可能性が高いのではないでしょうか。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
・原作「国宝」上下巻セット
・過去のアカデミー賞代表作を配信で観る
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