日本で議論が続く「選択的夫婦別姓」|旧姓使用・戸籍制度・分断リスクまで徹底解説

なぜ日本では夫婦別姓が認められないのか?

たかまつななさんはXで、選択的夫婦別姓の導入について「なぜいまだに実現しないのか」と疑問を投げかけ、制度改革の必要性を訴えました。この投稿は多くの共感や議論を呼んでおり、改めて日本社会における夫婦同姓制度の是非が注目されています。



選択的夫婦別姓制度についての海外の反応


flower5214(投稿者)

What are your thoughts on allowing couples to keep their own surnames after marriage?
Japan is known for the fact that, unlike China and South Korea, when a couple marries, the wife follows the husband’s surname. Are there many people dissatisfied with this? I’d like to hear everyone’s opinions on separate surnames for married couples. Thank you.
「結婚しても夫婦がそれぞれ自分の名字を名乗れるようにすることについて、みんなはどう思いますか?
日本は中国や韓国と違って、結婚すると妻が夫の名字を名乗るのが当たり前ですよね。このことに不満を持ってる人って多いのでしょうか? 夫婦別姓について、みなさんの意見を聞かせてください。」


aizukiwi(Kiwi / ニュージーランド女性、日本在住)

I am a New Zealand woman living in Japan. I married a Japanese man, but because I am a foreigner, my name is not officially changed in the family register, so my name hasn’t changed. My child has my husband’s surname, but mine is different. If I want to change it, I can first change it in my own country and then take my new passport, etc., to the city hall in Japan to change it, but it’s troublesome and I’m not at a disadvantage because it’s different.

I often hear that it’s for the sake of the family to have the same surname, but our family is already different, and there is no problem. Changing my name, which is known in my work, and having to change all my documents and identification is quite troublesome, so I think it would be nice if I could choose. Incidentally, the reason I have to have the same surname now is because of the “family register”. All the names listed in the family register must be the same, so it can be my husband’s or mine, but I have to choose one.

「私はニュージーランド人で日本人男性と結婚しています。でも外国人なので戸籍上の名字は変わらず、夫と子どもは同じ姓、私だけ別姓なんです。変えたければ母国でまず改名して、新しいパスポートを持って日本の市役所に行く必要があるけど、正直面倒だし、不便もないからそのまま。

“家族は同じ名字であるべき”ってよく聞くけど、うちは既に別姓で何も問題なし。仕事で知られている名前を変えるのも大変だし、全ての書類や身分証を変えなきゃいけないのは本当に面倒。だから選べる制度になればいいと思います。結局、今同じ姓にしなきゃいけないのは戸籍制度のせいですね。」


flower5214(投稿者)

Choosing for yourself is the best, right? Honestly, I think it’s incredibly troublesome administratively…「やっぱり自分で選べるのが一番ですよね。行政的に見ても、正直めちゃくちゃ面倒くさいと思います…。」


aizukiwi

In their home country (and many English-speaking countries!), they can choose one, use a different one, or combine them! For example, if the husband’s surname is Smith and the wife’s is Jones, they can also use a combined new surname like Smith-Jones or Jones-Smith.

「英語圏の国だと、夫の姓でも妻の姓でも選べるし、両方をつなげたダブルネームも普通です。たとえばSmithとJonesならSmith-JonesとかJones-Smithとかね。」


kenogata11(日本人)

This country’s administration is truly negligent. They dislike changing their own procedures and, without legal grounds, won’t consider convenience at all. Politicians actually say it’s possible even now, but when you actually try to go through the procedure, a mountain of obstacles arises.

「この国の行政は本当に怠慢ですよ。自分たちの仕組みを変えるのを嫌がって、法律上の根拠もなく“便利さ”なんて一切考えてない。政治家は“今でも可能だ”って言うけど、実際にやろうとすると山のような障害が出てくるんです。」


Freak_Out_Bazaar(日本人)

I’m neither for nor against it. Japan has a mountain of more important issues to deal with right now.

Incidentally, it’s also possible for the husband to take the wife’s surname. The only requirement is that the couple have the same surname.

「賛成でも反対でもないですね。今の日本にはもっと重要な問題が山ほどありますし。
ちなみに夫が妻の姓を選ぶこともできますよ。条件は“夫婦で同じ姓を名乗ること”だけですから。」


Gmellotron_mkii(日本人)

Before that… My father uses his maiden name. Isn’t it strange that it’s commonly known that wives always follow their husband’s surname? Do husbands in China and Korea use their maiden names?

「その前に…うちの父は結婚後も旧姓を使っています。“妻は必ず夫の姓を名乗る”って一般的に思われているのはおかしくないですか?中国や韓国では夫の方が旧姓を使い続けるんですか?」


flower5214(投稿者)

China and South Korea have separate surnames. It’s common for children to follow the father’s surname.

「中国や韓国は夫婦別姓で、子どもは父親の姓を名乗るのが一般的ですね。」


Gmellotron_mkii(日本人)

That’s right. In Japan, some married women keep their maiden names.

「そうですね。日本でも結婚後も旧姓を使い続ける女性はいますよ。」


flower5214(投稿者)

A surname is one’s own identity, so changing it is quite difficult, I think.

「名字ってその人のアイデンティティだから、変えるのはすごく大変なことだと思います。」


testman22(日本人)

Honestly, I don’t care, but in the case of separate surnames for married couples, there will undoubtedly be confusion. For example, what to do about the children’s surname, being mistaken for not being a couple, and paperwork procedures are also examples.

On the other hand, if couples don’t use separate surnames, the rate at which surnames decrease will accelerate.

「正直、個人的にはどうでもいいです。でも夫婦別姓になったら混乱は絶対に出ますよ。例えば子どもの姓をどうするかとか、“夫婦じゃないんですか?”って誤解されるとか、書類の手続きも複雑になるとか。
逆に別姓を認めないままだと、日本の姓の種類がどんどん減っていくのも事実ですけどね。」


kenogata11(日本人)

In every country, couples discuss and decide on their children’s surnames, and they discuss and decide on other matters as a couple, so what’s the big problem? Besides, it’s a system of optional separate surnames for married couples, so those who don’t want to change don’t have to.

「どこの国でも夫婦で話し合って子どもの姓を決めるんだから、そんなに大きな問題じゃないと思いますよ。それに選択的別姓なんだから、嫌な人は選ばなければいいだけでしょう。」


testman22(日本人)

Changing existing habits and systems means inviting chaos. You can’t easily change everything just because you want to.

「習慣や制度を変えるのは混乱を招くものです。やりたいからといって簡単に全部変えられるもんじゃない。」


kenogata11(日本人)

This issue has been discussed in the Diet and among the public for over 10 years, and the discussion is not immature enough that someone can change it “easily”.

「この問題は国会でも国民の間でも10年以上議論されてきました。“簡単に変えられる”なんて段階の話じゃないですよ。論点はほとんど出尽くしてますから。」


TawnyOwl_296(日本人)

The problem is the lack of choice, and the vast majority of women have to take the husband’s surname (very rarely does a man take the wife’s surname. Very rarely). I’m against it. Which country in the world does that? But if you think changing your surname is no big deal, then the men who say it’s no big deal should do it, from social procedures and everything else.

「問題は“選択肢がない”ことです。現状では圧倒的に女性が夫の姓を取らされる(男性が妻の姓を取るのはごく稀)。私は反対です。こんな制度を持ってる国なんて他にありますか?“名字を変えるのは大したことない”って言う男性は、まず自分がやってみればいいんですよ。手続きから何から全部ね。」


831tm

I changed my surname to my wife’s when I married my Japanese wife. I hated my maiden name, so it was a good opportunity to change it. Officially, either surname can be freely chosen, but only about 5% of people choose the wife’s surname; in reality, it’s a forced change to the husband’s surname.

「私は結婚のとき妻の姓に変えました。自分の旧姓が嫌いだったのでちょうどいい機会でしたね。形式上はどちらの姓でも選べるけど、実際に妻の姓を選ぶのは全体の5%程度。事実上、夫の姓に変えるのが強制みたいになっています。」


(この後もコメントは続きますが、流れとしては「便利だから選べる方がいい」「伝統と戸籍を守るため反対」「別姓は混乱を招く」「政治の優先課題ではない」といった意見が入り混じっています。)


選択的夫婦別姓とは?日本の現行制度と国際的背景

日本の民法第750条では「夫婦は婚姻の際に同じ氏を称する」と規定されています。結婚の際には夫か妻の姓を選ばなければならず、結果的に女性が改姓するケースが95%以上に上ります。

この仕組みは世界的にも例外的であり、アメリカやヨーロッパ諸国はもちろん、中国や韓国でも結婚による改姓は義務づけられていません。国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)からも、日本に対して制度改革を求める勧告が繰り返されています。


賛成派が主張するポイント

ジェンダー平等と個人の尊厳
姓は個人のアイデンティティであり、強制的な改姓は人格権を侵害するとの批判があります。特に女性に負担が集中している現状は、憲法13条(個人の尊厳)や24条(婚姻の自由)の理念にもそぐわないと指摘されています。

職業・社会生活上の不利益解消
改姓によって、学術論文、資格証明、銀行口座、免許証などに不整合が生じ、キャリアや生活に支障をきたします。これを避けるために選択的別姓を求める声が強まっています。

結婚のハードルを下げる
「名前を変えたくない」ために結婚をためらう人が存在し、制度改革により結婚への心理的負担を軽減できるとされています。

社会的合意の広がり
経団連や日弁連など、経済界・法曹界からも導入を求める声が強く、国際社会の基準に合わせるべきだとする意見があります。


反対派が懸念する問題点

家族の一体感
同じ姓を名乗ることが「家族の絆」を象徴すると考えられており、別姓の導入はその象徴性を失わせると懸念されています。

子どもへの影響
親と子で姓が異なる場合、学校生活や社会的関係に混乱や心理的負担が生じるとの声があります。

戸籍制度との整合性
日本の戸籍制度は「家」単位で管理されるため、別姓導入によって制度全体の見直しを迫られる可能性があります。

伝統・文化の維持
「夫婦同姓は日本の伝統」として守るべきだとする立場も根強く、国際基準に合わせる必要はないと考える人も少なくありません。


妥協策として広がる「旧姓使用」|メリットと限界

近年、一定の妥協策として「旧姓使用の拡大」が進められてきました。
公務員や大企業では旧姓を業務で使えるようになり、パスポートや免許証、マイナンバーカードでも旧姓併記が可能になっています。

メリット

  • 改姓によるキャリアの断絶をある程度防げる。
  • 政治的に制度改正より導入しやすく、保守層にとって受け入れ可能な落とし所になり得る。

限界

  • 法的な「姓」は変わらず、戸籍名は依然として同姓に統一される。
  • 書類や制度によっては旧姓が使えず、二重管理による混乱も生じる。
  • 選択的夫婦別姓を求める人々にとっては「不十分な便宜」でしかなく、本質的な解決にはならない。

旧姓使用拡大は「現実的な緩和策」ではありますが、根本問題である「姓を変えることの強制性」を解消するものではありません。むしろ「旧姓で十分」として政治的に制度改革が先送りされる可能性もあるでしょう。


国際比較から見える夫婦別姓の標準化

  • 欧米諸国:結婚後の姓は完全に選択制。同姓・別姓・複合姓など多様。
  • 中国・韓国:結婚による改姓は義務ではなく、夫婦別姓が基本。
  • 日本:夫婦同姓の強制を維持する数少ない国。国連からも繰り返し是正を求められている。

この比較からも、日本の制度は国際的に見れば特異であり、批判の対象になっています。


選択的夫婦別姓が社会分断を深めるリスク

ここで重要なのが、拙速に選択的夫婦別姓を導入すると 社会的分断が深まる可能性がある という点です。

背景要因

  1. 議論の土俵が違う
    推進派は「権利と個人の尊厳」、反対派は「家族と伝統」を重視しており、噛み合わない。
  2. 世代間ギャップ
    若年層は改革支持が多いが、中高年層は現状維持を望む傾向が強い。
  3. 政治利用の危険性
    保守 vs リベラルの対立軸として争点化されやすく、選挙戦略に組み込まれると分断が深刻化する。

慎重論の根拠

  • 世論は賛否が拮抗しており、拙速な制度化は反発を招く。
  • 「選択制なら自分に影響はない」という説明も、価値観の衝突を和らげる力は限定的。
  • 国際的な批判に押される形で進めれば、「外圧に屈した」として保守派の反発を強める可能性もある。

見落とされがちな6つの重要視点

1. 子どもの姓をどうするか

  • 選択的夫婦別姓を導入する際、最も大きな実務的論点は「子どもの姓をどう扱うか」です。
  • 選択肢としては、
    • 両親のどちらかの姓に統一
    • ダブルネーム(ハイフン付き)
    • 成年時に自分で選択
      などが考えられますが、どれも一長一短があります。
  • 現状の議論では「子の福祉」に与える影響が十分議論されていない部分があります。

2. 戸籍制度そのものとの関係

  • 日本の戸籍制度は「家単位」の登録が基本で、同姓によって一体感を可視化する仕組みを担ってきました。
  • 別姓が認められると、戸籍制度を「家」単位から「個人」単位へと見直す必要が出る可能性があります。
  • 制度改革は「姓」だけの問題にとどまらず、戸籍・住民票・マイナンバーなど基幹的な行政制度に波及する点が議論の盲点です。

3. 法制度以外の社会的影響

  • 職場や地域コミュニティで、姓の違う夫婦や親子が「違和感を持たれる」リスク。制度が変わっても社会的認識が追いつかなければ差別や偏見を生む可能性があります。
  • 保険・相続・税制などでの実務処理。例えば配偶者控除や相続登記など、姓の違いが事務的にどの程度の負担になるかはまだシミュレーションが不足しています。

4. 国際結婚の現状

  • 日本人と外国人が結婚する場合は、すでに「別姓」が事実上存在しています。
  • ただし戸籍に記載される日本人側は改姓が必要で、結果として「国際結婚だけ例外が認められている」状態になっているのは不公平との指摘もあります。
  • この視点は国内だけで議論すると抜け落ちがちです。

5. 「通称利用」と「法的姓」の二重構造の混乱

  • 旧姓使用が広がったことで、既に「戸籍名と社会的通称名の乖離」という問題が顕在化しています。
  • 契約・金融・医療など「本人確認が厳格に必要な分野」で二重管理が混乱を招きやすい。
  • 「中途半端な妥協策」の副作用として、この二重構造がむしろ制度導入よりも社会の負担を増やす懸念もあります。

6. 地方と都市での温度差

  • 都市部では「キャリアや国際比較」を背景に導入賛成の声が強い一方、地方では「家制度や地域コミュニティ」との関係で慎重論が強い。
  • この地域差が国民的合意形成を難しくしている点も見落とされがちです。

今後のアプローチ|段階的導入と国民的合意形成

段階的導入:旧姓使用をさらに法的に整備し、姓の多様性を社会に根付かせる。

国民的合意形成:子どもの姓や戸籍制度との関係について具体的に検討し、推進派と反対派双方の懸念を吸収する。

社会的慣れの醸成:行政や企業レベルでの実践を広げ、日常生活に自然に浸透させる。


まとめ|日本が直面する夫婦別姓の本質的課題

日本における選択的夫婦別姓の議論は、単なる「姓の問題」にとどまらず、憲法の理念、戸籍制度、家族観、社会的合意形成の在り方まで含む複雑なテーマです。

旧姓使用の拡大は現実的な妥協策として一定の効果を持ちますが、それが永続的な解決策になるわけではありません。最終的には「姓を変える自由を法的に認めるか」という本質的課題に向き合う必要があります。

ただし、拙速に制度改革を進めれば社会的分断を深めるリスクも大きいため、段階的な導入と丁寧な合意形成が不可欠となるでしょう。


それではまた、次の記事でお会いしましょう。



記事の修正

記事公開後、SNS上で以下のようなご指摘をいただきました。
ありがとうございます。

  • 「子どもの姓をどうするか」は1996年の法制審答申以来、最大のテーマであり「見落とされがち」という表現は不正確であること。
  • 日本の戸籍制度は戦前の「家制度」とは異なり、現在は「夫婦+未婚の子」を単位としており、記事の表現が混同を招くおそれがあること。

ご指摘の通り、これらは正確に押さえておくべき重要な点です。
一方で、現状の議論において「子どもの福祉に具体的にどのような影響を与えるのか」という実証的な検討や、「制度運用の中でどのような課題が生じているのか」という観点が必ずしも十分に議論されているとは言い切れません。

その意味で、本記事では「これまでの論点整理」とあわせて「今後さらに深めるべき論点」として提示したものです。


関連書籍でさらに深掘り

選択的夫婦別姓や戸籍制度についてもっと理解を深めたい方には、以下の書籍も参考になります。

  • 『夫婦別姓──家族と多様性の各国事情』(栗田路子ほか、ちくま新書
    夫婦別姓が可能な欧米から中国・韓国まで、各国の制度や実情を実体験を交えつつ読みやすくまとめた一冊。日本で選択制が進まない背景も明確に解説されています。
  • 『「選択的」夫婦別姓──IT経営者が裁判を起こし、考えたこと』(青野慶久)
    夫婦別姓を求めて裁判を提起したサイボウズ社の社長による臨場感ある体験と制度への問題提起が魅力の入門書です。制度を個人の視点から考えたい方におすすめ。
  • 『18歳から考える家族と法』(二宮周平)
     現代の家族のあり方と法制度の関係を網羅的に整理したテキスト。制度改正の論点を幅広く押さえられます。
  • 『ジェンダー法学入門〔第3版〕』(三成美保ほか)
    ジェンダーと法の基本的な概念や法制度構造を学べる入門書。ジェンダー法学の学び直しとして活用しやすく、理解の土台作りとして重宝します。

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