トランプ大統領「ウクライナは全領土を奪還できる」発言の真意とNATO・国際社会への影響

ニュース

トランプ大統領は、2025年9月に開催された国連総会を前に、ウクライナがロシアに奪われたすべての領土を取り戻すことが可能だとの見方を示した。ゼレンスキー大統領との会談後、トランプ大統領は「ウクライナはNATOの支援を受ければ全領土を回復できる」と発言し、これまで慎重だった姿勢から一歩踏み込んだ立場を明らかにした。

出典:AP News|Ukraine can win back all territory lost to Russia with NATO’s help, Trump says


関連記事

補足説明

ウクライナ戦争は2022年のロシア全面侵攻から3年以上が経過し、現在も続いています。ロシアは東部や南部の一部地域を占領していますが、軍事・経済両面での負担は大きく、戦争は膠着状態にあります。

ウクライナは欧米の支援を受けながら抵抗を続けており、その中でもアメリカ主導の軍事同盟 NATO(北大西洋条約機構) が提供する兵器や訓練は不可欠な要素となっています。ウクライナの目標は、2014年のクリミア併合を含むすべての占領地域を取り戻す「領土奪還」であり、今回の発言はその実現可能性をめぐる議論の文脈で出てきました。

トランプ大統領は当初、ウクライナに対して慎重あるいは妥協的な姿勢を見せることもありましたが、最近の国連総会やゼレンスキー大統領との会談を通じて態度を変化させたと報じられています。特に、戦争の長期化でロシア経済が深刻な打撃を受けている状況を踏まえ、「NATOと欧州の支援があればウクライナは全領土を回復できる」と強調するに至ったのです。


海外の反応


Trump on Truth Social:
“After getting to know and fully understand the Ukraine/Russia Military and Economic situation and, after seeing the Economic trouble it is causing Russia, I think Ukraine, with the support of the European Union, is in a position to fight and WIN all of Ukraine back in its original form. With time, patience, and the financial support of Europe and, in particular, NATO, the original Borders from where this War started, is very much an option. Why not? Russia has been fighting aimlessly for three and a half years a War that should have taken a Real Military Power less than a week to win. This is not distinguishing Russia. In fact, it is very much making them look like “a paper tiger.” When the people living in Moscow, and all of the Great Cities, Towns, and Districts all throughout Russia, find out what is really going on with this War, the fact that it’s almost impossible for them to get Gasoline through the long lines that are being formed, and all of the other things that are taking place in their War Economy, where most of their money is being spent on fighting Ukraine, which has Great Spirit, and only getting better, Ukraine would be able to take back their Country in its original form and, who knows, maybe even go further than that! Putin and Russia are in BIG Economic trouble, and this is the time for Ukraine to act. In any event, I wish both Countries well. We will continue to supply weapons to NATO for NATO to do what they want with them. Good luck to all!”

トランプのSNSでの発言
「ウクライナとロシアの軍事・経済状況を十分に理解した今、そしてロシアが抱えている経済的な困難を目にした結果、私はウクライナがEUの支援を受ければ国を元の形で取り戻し、勝利することができると思う。時間と忍耐、そして特にNATOからの財政支援があれば、この戦争が始まった当初の国境線を回復することは大いに可能だ。なぜ不可能だと考えるのか? ロシアは3年半も無目的に戦争を続けているが、本来なら真の軍事大国であれば1週間以内に終わらせられたはずだ。これはロシアを際立たせてはいない。むしろ『張り子の虎』のように見せている。モスクワをはじめ、ロシア中の都市や町や地区に住む人々が、この戦争の現実を知り、ガソリンを入れるために長い列を作らされ、経済の大半がウクライナとの戦いに費やされている実態を理解すれば、ウクライナは国を元通りに取り戻せるし、もしかするとそれ以上のこともできるかもしれない! プーチンとロシアは深刻な経済問題を抱えており、今こそウクライナが行動すべき時だ。いずれにせよ、私は両国の幸運を祈る。我々はNATOに兵器を供給し続ける。どう使うかはNATO次第だ。みんなに幸運を!」


After getting to know and fully understand the Ukraine/Russia Military and Economic situation
Mercy. When did this happen? lol

ウクライナとロシアの軍事・経済状況を理解したって? 勘弁してくれよ、いつそんなことが起きたんだよ(笑)


Must’ve gotten exposed to real info at the UN meeting. Don’t worry tho. He’ll forget once he turns fox news back on when he gets home.

国連で本当の情報に触れたんだろうな。でも心配すんな。帰ってFox Newsつけたらすぐ忘れるよ。


(長文のため要約)
The commenter feels Trump’s recent statement marks a significant shift. They suggest three triggers: the UK visit where he was flattered and likely briefed on Ukraine, the China-Russia-North Korea meeting that showed Putin isn’t siding with him, and Trump’s naive belief he can solve issues by befriending dictators. Altogether, they see this as a genuine change in Trump’s stance on Russia.

俺は今回の発言に大きな変化を感じる。その背景には、英国訪問での厚遇と情報提供、独裁国家の会合でプーチンに裏切られたと感じたこと、そして彼自身の独裁者への甘い期待がある。これらを踏まえると、ロシアへの見方が実際に変わりつつあると思う。


(長文のため要約)
The commenter suggests a fourth explanation: Trump believed he had a strong personal bond with Putin and could quickly end the war. He lifted sanctions and took a conciliatory stance, thinking he had secured talks. But Putin escalated instead, making Trump look manipulated. Combined with European diplomatic pressure, Trump may now be disillusioned and shifting toward a more pro-defense, military stance—a change that could be permanent.

第4の理由として、トランプはプーチンと特別な関係を築けたと信じて戦争をすぐに終わらせられると思い込んでいた。しかし現実には利用されただけで、逆に攻勢を強められた。ヨーロッパの外交圧力もあり、彼は幻滅して軍事支援重視の姿勢に傾き始めており、これは長期的な転換かもしれない。

I really think it comes down to how great his UK trip went. The King pulled out all the stops and Trump LOVED it, I’m sure he was very agreeable to whatever they asked.

結局、英国訪問が最高にうまくいったのが大きいと思う。国王が全力でもてなし、トランプは大喜び。きっと彼らに何を頼まれても気持ちよく応じただろう。


He has the memory of a goldfish, so the visit might just buy a tweet and nothing else. Macron pulled out the stops for Trump in 2017, made a good impression and now Trump hates him. Tomorrow or the next day he will go back to blaming Ukraine for the war.

彼の記憶力は金魚並みだから、この訪問の効果はツイート1回分で終わるかもしれない。2017年にはマクロンが最大限のもてなしをして好印象を与えたが、今ではトランプは彼を嫌っている。明日か明後日にはまたウクライナを戦争の責任者だと非難し始めるだろう。


That’s insulting to goldfish. They’ve proven that goldfish have better memory than him.

それは金魚に失礼だよ。金魚の方が彼より記憶力が優れているって証明されてるんだから。


I picture Buckingham Palace catered with multiple McDonalds trucks, like the In N Out truck.
“Ukraine needs more HIMARS Mr President.
And how is your McRib, by the way?”

バッキンガム宮殿にマクドナルドのトラックが何台も並んでいる光景が目に浮かぶ。『大統領、ウクライナにはもっとHIMARSが必要です。それと、マックリブのお味はいかがですか?』


Not just McDonald’s trucks. They pull out the stops and import from US McDonald’s, so Donald won’t be thrown off by the real meat used in UK McDonalds. One thing about US fast food chains is that they all taste better in other countries.

マクドナルドのトラックだけじゃない。わざわざアメリカのマクドナルドから輸入して、イギリスの“本物の肉”にドナルドが驚かないようにしてるんだ。アメリカのファストフードチェーンって、外国で食べる方が美味しいっていうのはよくあることだしな。


I can’t believe it has taken me this long to piece together… but:
What if the entire reason he loves McDonald’s is because it has Donald in the name? It has nothing to do with the food. He just likes seeing his name everywhere just like he plasters Trump on everything he does.

今さら気づいたんだけど…もしかして彼がマクドナルドを好きな理由って、“Donald”って名前が入ってるからじゃない? 食べ物とは関係なく、自分の名前がそこら中にあるのが好きなんだよ。自分の事業に“Trump”って貼りまくるのと同じでさ。


Hes a moron, dont read too much into his bullshit, its how we ended up with him as president.

あいつはバカだ。発言を真に受けるな。そういうのに振り回された結果、大統領になっちまったんだ。


He is, which means Putins praising tactic can likewise be implemented by EU allies which need usa industrial military might to keep Ukraine up since their own is rather behind.
And it seems it worked by the UK royals

その通り。だからプーチンが使った“おだて戦法”を、今度はEUの同盟国が応用できるんだ。自前の軍需力が不足しているから、アメリカの産業力が必要なんだよ。そしてイギリス王室のやり方は、実際うまくいったように見える。


All he needs is one phone call with Putin and his mind will change all over again.

プーチンから一本電話があれば、彼の考えなんてまたすぐに変わるさ。


Yep, watch what he does, not what he says.

そうだ、彼の言葉じゃなく行動を見ろ。


He’s just talking, worthless. Also notice how he emphasis EU financial support, no word about the US. I suppose he’s pretty happy to sell weapons for Ukraine to Europe, so it’s something.

ただしゃべってるだけで無価値だ。それに、EUの資金援助ばかり強調してアメリカには一言も触れてない。結局、ヨーロッパに武器を売ることが狙いで、それができれば満足なんだろう。


American Weapons Manufacturers: “Hey Trump, our euro buddies are pissed at you and are not spending as much with us. Some of them might stop altogether. We can’t have this, so how about we buy some TrumpCoin and then you go over there and make them like us enough to buy more of our stuff. Also we want Ukraine to keep fighting for a while because it’s good for our business and if they lose then we lose a lot of money, so do something to keep them around.”
Trump: Aight.

アメリカの軍需産業:『なぁトランプ、ヨーロッパの連中が怒ってて、うちからの購入額が減ってる。中には完全にやめそうな国もある。困るんだよ。だからトランプコインを買うから、ヨーロッパに行って俺たちのことを気に入らせて、もっと買わせてくれ。それに、ウクライナにはしばらく戦っててもらった方がビジネス的にありがたい。もし負けたらこっちは大損だ。だから何とかしてくれ。』
トランプ:『了解。』


Most likely situation really

たぶんそれが一番現実的なシナリオだろうな。


I appreciate the optimism (because overall it’s good for mental health), but he gets zero leeway until he puts action to his thoughts.
It’s been 5 years and he nearly always falls under the bar so I’m unconvinced.

楽観的な姿勢はいいことだ(メンタルにも良いし)が、彼が実際に行動に移さない限り、信用はゼロだ。彼はほとんど毎回期待を下回ってきた。だから俺は納得していない。


今回のRedditの反応を見ると、トランプ大統領の発言を「本当に変化の兆し」として捉える声と、「どうせすぐに意見を変えるだろう」と冷ややかに見る声がはっきり分かれていました。英国訪問や国連総会での影響を指摘する意見も多く、外交イベントが彼の態度に影響を与えた可能性を示唆しています。

ただし、共通しているのは「言葉より行動を見ろ」という姿勢です。いくら力強い発言をしても、具体的な支援や政策が伴わなければ信用できないという厳しい見方が根強く、楽観と懐疑が交錯する状況が続いています。


考察と分析|トランプ大統領の「全面奪還」発言が意味するもの

1. 発言の転換とその背景

トランプ大統領の「ウクライナは全領土を奪還できる」という発言は、これまでの姿勢からの大きな転換です。従来の彼は、支援に消極的だったり「領土の一部を譲る妥協案」に言及したりすることが多く、ウクライナの全面回復を正面から支持する発言は避けてきました。
こうした態度の変化にはいくつかの要因が考えられます。まず、国連総会で各国首脳から直接働きかけを受けたこと、そしてゼレンスキー大統領との会談で戦況の実態に触れたことが挙げられます。また、直前の英国訪問で国王から厚遇を受けたことも、外交舞台で「強いリーダー」として振る舞う動機を強めたとみられます。さらに、ロシア経済が制裁と戦費で疲弊し、国際社会で「ロシアは弱体化している」との見方が広がっている点も、今回の強気発言を後押しした可能性があります。

2. NATOと欧州への責任転嫁

今回の発言で最も重要なのは「NATOの支援があれば」という条件です。これは表向きは同盟国との連帯を強調する言葉ですが、裏を返せば「米国単独での関与は限定的にする」というシグナルでもあります。国内世論では「ウクライナへの過剰支援」に反発する声が強く、選挙を意識するトランプ大統領にとって米国の負担軽減は欠かせない要素です。
ただしNATO内部には大きな温度差があります。ロシアと国境を接するポーランドやバルト三国は積極的に支援を訴えていますが、ドイツやフランスではエネルギー危機や財政負担が国民の不満を高めており、「支援疲れ」が深刻化しています。つまり、トランプ大統領の言う「NATOの支援」とは必ずしも一枚岩ではなく、欧州各国の政治的現実を踏まえると、実際の行動につながるかどうかは不透明です。

3. ウクライナとロシアへのメッセージ

この発言は、ウクライナとロシアそれぞれに異なる意味を持ちます。ウクライナにとっては、米大統領が「全面奪還」を可能と公言したことは、士気を高め国際社会への訴えにも利用できる強力なメッセージです。国民にとっても「戦い続ければ報われる」という希望を強化するものとなります。
一方で、実際に必要なのは兵器供与や資金援助、防空システムの維持といった具体的支援です。発言だけで戦況が変わるわけではなく、もし行動が伴わなければ失望に転じるリスクもあります。
ロシアに対しては、「張り子の虎」と揶揄した点が象徴的です。長期戦にもかかわらず決定的な成果を出せないロシア軍を侮蔑することで、国内外に「ロシアは脅威ではない」と印象づける狙いがあります。これはモスクワ市民を含む国民の不満を煽り、プーチン政権の統治基盤を揺さぶる心理的圧力としても作用します。

4. 選挙戦略と外交カード

トランプ大統領の発言は、米国内向けの選挙戦略とも密接に結びついています。孤立主義的な支持層には「米国の負担は抑える」と伝え、国際社会には「強いリーダー像」を打ち出すという二重のメッセージが込められています。これは彼の支持基盤を固めつつ、外交舞台での存在感を誇示する狙いです。
さらに、彼が過去に「領土交換」を示唆したことを踏まえると、今回の強硬発言も交渉上のカードである可能性が否定できません。まず「全面奪還」を掲げて強い立場を演出し、その後の交渉で譲歩を引き出す布石とするのは、彼らしい交渉術といえます。つまり、この発言はそのまま額面通りに受け取るのではなく、「外交的な駆け引きの一環」として理解する必要があります。

5. NATO全体への脅威拡大

戦争の影響はウクライナにとどまらず、NATO全体の安全保障に直結しています。最近、ロシア製とみられるドローンがポーランド領空に侵入して撃墜される事件が起き、ルーマニアやバルト三国でも領空侵犯のリスクが繰り返し指摘されています。これらの事例は偶発的な衝突や、場合によってはNATO条約第5条(集団防衛)の発動を連想させるものであり、事態は単なる「ウクライナ支援」では済まされません。
このような状況下でのトランプ大統領の発言は、ウクライナだけでなくNATO諸国全体に向けて「今後の防衛姿勢をどうとるか」という問いを突き付けています。欧州に責任を押し付ける意図があるにせよ、この発言は「NATOの結束が試されている」という現実を改めて浮き彫りにしたといえるでしょう。


総括|全面奪還論の現実性と課題

トランプ大統領の「ウクライナは全領土を奪還できる」との発言は大きな転換であり、ウクライナにとっては士気を高める政治的メッセージとなりました。しかし、軍事的にはロシアが依然として広大な地域を支配しており、全面奪還は容易ではありません。

一方で、ロシア経済が制裁と長期戦で疲弊していること、そしてポーランドへのドローン侵入など戦火がNATO全体に波及しつつある現状を考えれば、国際社会の結束は一層求められています。発言が現実の政策や支援にどこまで結び付くのか、今後の欧州と米国の対応がカギとなるでしょう。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。



おすすめ書籍

『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』 (小泉 悠/文春新書)
ロシア・ウクライナ戦争を第一線で分析してきた気鋭の研究者による最新の視点。戦争がなぜ長期化し、国際秩序にどのような影響を及ぼすのかを読み解きます。ウクライナ情勢だけでなく、世界の安全保障の未来を考える上でも必読の一冊です。


『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』 (高橋杉雄 編著/文春新書)
軍事研究者や専門家が結集し、現代の戦争の特徴を「情報戦」「経済制裁」「世論操作」といった側面から多角的に検証。従来の軍事衝突だけではなく、デジタル時代の「総力戦」としてのウクライナ戦争の姿を解説しています。


『諜報国家ロシア ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで』 (保坂三四郎/中公新書)
旧ソ連のKGBから現代のFSBに至るまで、ロシアが「情報と諜報」をどのように権力維持に利用してきたかを追った力作。プーチン体制の背景を理解することで、今回の戦争やロシアの意思決定の根底が見えてきます。


参考リンク一覧

1件のコメント

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です