東海オンエア・てつやが岡崎に5年がかりの豪邸 なぜ「生活に必須ではない」トップYouTuberがこれほど稼げるのか【海外の反応・解説】

東海オンエア・てつや氏が5年がかりの豪邸を公開。なぜ生活に必須でないトップYouTuberがこれほど稼げるのか。限界費用・注意経済・スーパースター経済で市場の仕組みを解説。

今回の記事の重要ポイント(三点)

・東海オンエアのてつや氏が9月28日、構想から約5年かけた岡崎市の新居をYouTubeで公開した。建築費と収入の内訳は公表されていない。

・YouTubeは1本の動画を、追加の制作の手間をほぼかけずに何百万人にも届け、集まった視聴者の注意を広告費に変えて作り手に分ける。1人が同時に相手にできる人数に上限がある対面の仕事とは、市場の形が違う。

・市場が値を付けるのは必要性ではなく希少さと届く人数で、収入はごく上位の作り手に集まり大多数には生じない。介護や保育のように必要でも、1人が相手にできる人数に上限があり値段を国が決める仕事は、同じ市場の形にはならない。


▼この記事は動画でもご覧いただけます

東海オンエア・てつやが5年かけた新居を公開

YouTuberグループ「東海オンエア」のリーダー、てつや氏が9月28日夜、愛知県岡崎市に建てた新居を紹介する動画を個人チャンネルで公開した。1時間を超えるルームツアー形式で、2021年から計画を進め、完成まで約5年かかったと報じられている。

報道によると、外観はてつや氏のメンバーカラーであるオレンジを基調にした平屋で、駐車場は約10台分、玄関には静脈認証と1枚500万円の特注ガラスがある。動画の撮影部屋、編集部屋、ゲーム配信用の部屋も備える。

妻でタレントの峯岸みなみ氏も動画に登場し、新居の金銭的な負担はすべて夫が担っていると語ったと報じられている。建築費、資金の出所、てつや氏本人の収入の内訳はいずれも公表されていない。

東海オンエアは岡崎市を拠点にする6人組で、メインチャンネルは2013年10月に開設された。登録者数は10月1日時点で726万人、総再生回数は約169億回に達する。


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動画1本が何百万人に届く仕組み

岡崎の6人が全国の726万人に届くまで

東海オンエアは、メインチャンネルを開設した2013年から岡崎市を拠点に活動してきた6人組で、今もメンバー全員が岡崎に住んでいます。撮影の多くは市内で行われ、動画に出てきた場所を訪ねるファンが岡崎を訪れるようになりました。市の観光協会は2016年に6人を初代の「岡崎観光伝道師」に任命し、2026年度で11年目を迎えました。

岡崎市と所属事務所のUUUMが2026年9月に公表した共同調査では、2016年からの10年間で市への経済波及効果は約369億円と推計され、その大半はファンの来訪による観光消費でした。

リーダーのてつや氏は、2019年6月に公開されたヒカキン氏との動画で、地元の岡崎に豪邸を建てることを目標に挙げていたと報じられています。登録者726万人は、日本の総人口の約17分の1に相当する規模です。地方都市の6人組が、テレビ局も全国紙も持たないまま、この人数に自分たちの動画を届けています。


美容師は1時間に1人、動画は1本で300万人

美容師が1時間働けば、切れるのは基本的に1人の髪です。腕が良くても客が10倍になれば時間も10倍必要で、1日に受けられる人数には天井があります。飲食店の店員も、介護士も、保育士も、この天井の中で働いています。

動画は違います。仮に20分の動画を1本作って300万人が見たとしても、作り手が同じ動画を300万本作る必要はありません。見る人が10倍になっても、撮影と編集にかかった費用はほぼ変わりません。経済学では、客が1人増えたときに追加でかかる費用を限界費用と呼びますが、動画はこれがほとんどかからない商品です。

この違いは古くから知られていました。19世紀末の経済学者アルフレッド・マーシャルは、歌手の稼ぎには「声が届く人数」という上限があると書いています。録音、放送、そしてインターネットは、この上限を順に外してきました。動画は1本作れば、届く人数に物理的な天井がない商品です。


視聴者はお金を払っていないのに、なぜ作り手に入るのか

東海オンエアの動画を見る人の大半は、東海オンエアに直接お金を払っていません。作り手に入るお金の出どころは広告主です。広告主が買っているのは動画そのものではなく、その動画を見ている人の目と時間です。

仮に300万人が20分の動画を見れば、合計100万時間の人間の時間が1本の動画に集まります。広告主はこの時間に広告を差し込む枠を買い、YouTubeが広告収入を作り手と分けます。

YouTubeの公式ヘルプによると、通常の動画に流れる広告の純収入の55%がクリエイターに、残りがYouTube側に入ります。ショート動画は別の計算で45%です。この分配は作り手側の売上で、そこから機材や人件費、税金を引いた残りが本人の所得になります。

段階誰が何をするか
① 視聴視聴者が動画を見る(お金は払わない)
② 広告枠集まった視聴時間に広告を差し込む枠ができる
③ 広告費広告主がその枠を買い、YouTubeに支払う
④ 分配YouTubeが通常動画の広告純収入の55%を作り手に渡す
⑤ 波及人気が企業案件・グッズ・イベント・書籍にも広がる

(YouTubeヘルプ「YouTube パートナーの収益の概要」から作成。分配率は個別の契約で異なる場合がある)

情報が少ない時代には、情報そのものに値段がつきました。今は情報が無限にあり、足りないのはそれを受け取る人の時間です。

認知科学者のハーバート・サイモンは1971年に、情報が豊かになるほど、それを受け取る側の注意が希少になると指摘しました。今の言い方ではアテンション・エコノミー(注意の経済)と呼ばれる考え方の出発点です。

YouTuberが売っているのは動画ではなく、動画に集まった視聴者の注意だと言えます。


水はダイヤモンドより大切なのに安い

値段が「どれだけ必要か」で決まらないことは、経済学では古い問いです。アダム・スミスは1776年の『国富論』で、水ほど役に立つものはないのに値段がほとんど付かず、ダイヤモンドは使い道が少ないのに高く売れる、と書きました。

価値のパラドックスと呼ばれる問いです。後の経済学者たちは、値段を決めるのは「もう1杯」の値打ちだと説明しました。水は大量にあるので、もう1杯増えても値打ちは小さい。ダイヤモンドは少ししかないので、1個の値打ちが大きい。役に立つかどうかと、市場で高く売れるかどうかは、別々のものさしで測られています。

看護、介護、保育、清掃、農業は、生命と生活を直接支える仕事です。YouTubeの娯楽は、余暇の時間に応える仕事です。水とダイヤモンドの話が示すのは、必要なものほど高いとは限らないという一点です。介護や保育の賃金は、人手が足りない中でも値段を国が決める仕組みの下にあり、希少さだけでは説明できません。


海外の反応

東海オンエアの新居そのものを話題にした英語圏のスレッドは見当たりませんでした。ここでは、なぜ娯楽の作り手が不可欠な仕事より稼ぐのかという、記事と同じ問いを扱った二つのスレッドを紹介します。

一つ目は、質問掲示板r/AskRedditに立った「YouTuberが医者より稼ぐことをどう思うか」というスレッドです。2019年のもので、コメントは40件ほどと小ぶりですが、市場の説明と道徳的な反発が短い応酬の中にそろっています。

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


エンタメの世界の人間は、もっと大事な仕事をしている人よりいつだって稼ぐ。それでも気に入らないけどな。


医者は何十万人もいる。

PewDiePie(スウェーデン出身の人気YouTuberで、2019年当時は個人チャンネルとして世界最大級)は一人しかいなくて、プラットフォームにも広告主にも、誰よりも多くの稼ぎをもたらしてる。

なら、彼の方が稼いで何がおかしいんだ?


医者はものすごく価値のある仕事をしてるからだよ。自分の命を救ってくれとPewDiePieに頼む人はいないだろ。


それを言うなら消防士もそうだ。医者ほどの教育も要らないし、市場での需要も違うのに、医者と同じだけ稼ぐべきなのか?

君の主張は感情論で、経済の話になっていない。


一部のYouTuberは医者より稼ぐよ。ものすごく人気があって、YouTubeでは成功した分だけ稼げるから。でもその仕組みのせいで、YouTuberの大多数、本当に圧倒的な大多数は、最低賃金にもまるで届かない。


そもそも比べ方がちぐはぐなんだよ。医者は何があっても医者で、そこはほとんど揺るがない。YouTuberは収益化の心配がつきまとうし、ある朝起きたら仕事も金も何もかもなくなってるかもしれない。そこまで稼げる地位にたどり着くまでの道も、ルールのない競争になる。

ギャンブラーと会社員を比べるようなものだ。会社員は最初からギャンブラーよりずっと多くもらえる。ギャンブラーは1ドルから始めて、カード1枚で全部失うかもしれないと分かったうえで、のし上がっていく。


スポーツ選手一人の稼ぎが、うちの店のスタッフ全員分を合わせたより多い。たぶん隣の店の分を足してもそうなる。

今に始まったことじゃない。でも、だからといって道徳的に正しいことにはならない。


二つ目は、英国の看護師が集まる掲示板r/NursingUKのスレッドです。英国の公的医療で働く看護師の給料は、国が定める全国一律の賃金表で決まります。値段を国が決める仕組みの中にいる点で、日本の介護や保育と重なる部分があります。

2026年7月、看護師だった投稿者が「命を救い、怒鳴られ、体液や感染症にさらされながら、在宅勤務のIT職のおよそ半分の給料しかもらえないことに腹が立たないか」と問いかけました。

投稿者はIT職の人を責めているのではないと断り、「向こうの分野の方がお金を生むからだとは分かっている」とも書いています。看護師本人たちが、ケアの仕事はなぜ安いのかを語り合ったスレッドです。

「給料が低すぎる」という点ではほぼ一致していますが、その理由については、市場の問題か、制度の問題か、社会の意識の問題かで意見が分かれました。

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


看護師の給料が足りないことには、それだけで怒っていい。ほかの職種の人が高い給料をもらっていることを妬む必要はない。それに、在宅でできる看護の仕事だってある。


ケアの仕事は全体として給料が低い。社会がそこにお金の価値を認めていないからだ。社会が手厚く面倒を見るのはお金を生むもの(ITや金融など)で、人の面倒を見る仕事じゃない。あべこべだけど、新自由主義(市場の競争と小さな政府を重んじる考え方)が行き着いた先がここにある。


(投稿主)

いつも言ってるんだけど、私たちは英雄だと持ち上げられるのに、扱いは最悪なんだよ。


まさにそのとおりだと思う。付け加えると、看護には「天職(お金のためではなく使命感でする仕事)」として扱われてきた歴史がある。そこに、人の世話は生まれつきの能力で女性の仕事だという社会の思い込みが重なって、これからも給料は低いままだろう。


IT職の人が稼ぐのは、仕事がお金を生むからというより、公的部門のような給与等級(NHS=英国の国民保健サービスの職員に全国一律で適用される賃金表)に縛られていないからだ。すぐ競合他社に移れるから、会社はそれに見合う額を払うし、本人も自由に交渉できる。

ただそのせいで、同じ仕事をしていても、交渉がうまいとか転職の回数が多いというだけの差で、同僚よりずっと安い給料のままの人もたくさんいる。


抽象的な意味で腹が立つのは、「需要と供給」が賃金格差一般を正当化するのに使われる一方で、医療職に限っては、国民保健サービスを守るために低賃金という犠牲を個人で払えと言われることだ。ここは豊かな国なのに、金持ちを税金から守ることがなぜか最優先のままだ。

世間はこういう考えを受け入れがちだ。資本主義をいちばんうまく使いこなした人は報われるべきだ(「資本の近くにいて稼いだ金に、なぜ高い税金をかけられなきゃいけないんだ」)、一方で必要不可欠な分野で働く人は、自分の仕事を神聖な天職だと思え(「きちんと給料を払いながら国民保健サービスも維持する余裕はない」)、というわけだ。


お金は人の気持ちなんて気にしない。需要と供給がすべてだよ。

看護師の供給はいつだってかなり多い。そこまで難しい仕事でも、珍しい仕事でもないからだ。

道徳的には君はスーパースターだけど、お金の面では平均か、平均より少し上くらいだろう。この世界では、どれだけ道徳的かで給料が決まるわけじゃない。ほかの人が君の仕事にどれだけ価値を認めるかで決まる。

トップクラスのサッカー選手への需要はとてつもなく大きいのに、スーパースター級の選手はそう多くない。だから一握りの選手が何百万ももらう。不公平だと言うのは自由だけど、繰り返すと、お金は道徳とは関係なくて、ただの需要と供給なんだ。

残念だけど、そういうゲームになっている。


なぜ必要な仕事より「不要な仕事」が稼げるのか

てつや氏の新居は、生活に必須ではない仕事がどこまで稼ぎうるかを示す入口の例です。建築費も収入の内訳も公表されていないので、ここで見るのは新居そのものではなく、必要な仕事より娯楽の作り手にお金が集まる条件です。

介護を必要としている人は多く、その切実さは娯楽の比ではありません。それでも介護に払えるお金には、本人の家計と公費の予算という上限があります。娯楽は一人ひとりにとって小さな「楽しみたい」ですが、払える人が数百万人いて、その小さな支払いが広告を通して一人の作り手に集まります。市場が反応するのは必要の切実さではなく、払える人の数と、その支払いを集められる仕組みです。


小さな人気差が大きな所得差になる

経済学者のシャーウィン・ローゼンは1981年の論文「スーパースターの経済学」で、少数の人が巨額を稼ぐ現象を二つの条件で説明しました。二流を何度見ても一流1回の代わりにならないこと、そして1人の演者が同じ手間で多くの客に届けられることです。この二つがそろうと、才能のわずかな差が所得の大きな差に広がります。

昔なら、岡崎で一番面白い人がいても、その話を聞けるのは周りの数十人か数百人でした。テレビ放送は届く範囲を地域の外へ広げ、インターネットは国境も越えました。届く範囲が広がるほど、見る側は無料で選べる中から一番面白い人を選び、二番手を見る理由が薄れます。仮に面白さの差が100点と95点でも、収入の差は何十倍にも開きうる、というのがローゼンの論理です。

視聴者が1人1000円を払う形なら、300万人から集めるのは至難です。広告なら、1人あたり数円の価値を、払った感覚のないまま300万人から集められます。ネットは「薄く広く集める」を可能にし、集まった人気は企業案件やグッズ、イベント、書籍へも広がります。人気そのものが元手になる仕組みです。

この仕組みは、上位以外にはほとんど働きません。YouTubeの最初の10年分の動画を分析した2018年の研究では、全再生の平均85%が上位3%のチャンネルに集まっていました。米ゴールドマン・サックスの2023年の調査では、世界に約5,000万人いるクリエイターのうち年10万ドル超を稼ぐのは約4%です。

YouTubeは2027年2月から、新たに広告収益の分配に参加する作り手に対して、長尺動画では直近1年で8,000時間の有効な再生時間を求めると発表しており、新規参入の入口はさらに狭まります。

東海オンエアの収入は「YouTuberだから」ではなく、数百万人規模の市場で上位にいるから生まれています。複製に費用がかからないことは条件の一つで、そこに広告主の需要と、おすすめに載る配信の仕組み、他の作り手では代わりにならない個性がそろって初めて、上位の所得になります。


必要な仕事が同じ形にならない理由

介護士は同時に100万人を介護できません。利用者が10倍になれば、職員もほぼ10倍必要です。動画のように届く人数を増やしても費用が変わらない、という形にはなりません。売上に人数の天井があるので、どれだけ腕を上げても1人の稼ぎが桁で跳ねることはない仕事です。

もう一つの理由は、値段を自分で決められないことです。介護サービスの単価は国が定める介護報酬を土台にしており、認可保育の単価も公定価格として国が決めます。

人手が足りなくても利用料金が市場の値段のように上がることはなく、賃金への反映も制度の改定を通すことになります。厚生労働省の2025年の統計では、保育士と介護職員の月給は一般労働者全体の8割前後です。

対面の仕事にも高い給与はあります。同じ統計で医師の月給は全体の3倍で、免許と養成の定員で参入が限られ、責任の重さと長い訓練の分だけ代わりが利きません。実際の稼ぎは「届く人数の大きさ」「代わりの利かなさ」「稼いだ分を自分の取り分にできる立場」の組み合わせで決まり、トップYouTuberはこの三つがそろった位置にいます。

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「動画にすれば経費になる」は本当か

YouTuberには、ふつうなら消費でしかない行為を生産に変えられる特殊さがあります。会社員が100万円の時計を買えばそれは所得を使う行為ですが、人気YouTuberが同じ時計を買って開封する動画は、数百万人が見る商品になりえます。旅行も、車も、家も同じです。ここから「高い物を買って動画にすれば全部経費」という俗説が生まれました。

所得税法の基準は、動画に映ったかどうかではなく、その支出が収入を得るために必要だったか、そして私生活にも使う物なら仕事に使った分をはっきり区分できるかです。区分できなければ経費にはなりません。カメラを一瞬回しただけで、私物が経費に変わることはない仕組みです。

ケース考え方
撮影用のカメラ・マイク・編集用パソコン仕事の道具として説明しやすい
レビュー企画のために買い、企画で使い切る商品収入との関係が明確で説明しやすい
高級車を撮影にも私生活にも使う仕事に使った割合だけを区分して経費に
家族旅行の途中で少しだけ撮影する旅行の実態が私的なら、その部分は経費にならない
私物を一度だけ動画に出し、その後は普段使い映した事実だけでは全額経費にならない

(所得税法37条・45条、同施行令96条、国税庁タックスアンサーNo.2210の考え方から作成。個別の判断は使用の実態による)

高い物を買った年にまとめて経費にできるわけでもありません。原則として、10万円以上で長く使う物は、使える年数に応じて分けて経費にします。

例外は限られています。10万円以上20万円未満の物を3年で均等に分ける方法と、青色申告をしていれば40万円未満の物を一括にできる特例です。家も同じです。自宅と仕事場を兼ねるなら、建物のうち仕事に使っている部分を使い方の実態から区分し、その部分を何十年かに分けて経費にするのが基本です。土地代や暮らしている部分は対象になりません。

経費になっても、そのお金が戻ってくるわけでもありません。経費は税金をかける前の所得から引かれるだけです。100万円の支出が全額経費になり、所得税と住民税を合わせた税率が仮に半分の人でも、減る税金は約50万円で、残る50万円は本人の財布から出ています。「税金で買える」ではなく、「仕事に使った分には税金をかけない」という制度です。

国税庁はネット広告やデジタルコンテンツで稼ぐ個人を重点的に調べています。国税庁が2025年12月に公表した調査結果では、2024年7月からの1年間でこの分野の実地調査は1,155件、申告漏れの所得は合計184億円でした。

国税庁の案内は、店と住まいを兼ねた家の費用を例に、区分できる金額だけが経費になると説明しています。


「稼ぎすぎ」という声と、作り手の側の理由

てつや氏の新居公開の直後、日本のXでも同じ論争が起きました。消防士の家族を名乗る投稿が、夫の手取りと「なくても困らない仕事の人が建てた豪邸」を並べて問いかけ、のちに削除されました。拡散したのは反発そのものより、「人が集まるところにお金も集まる」「言う相手が違う」という反論の側でしたが、必須職の待遇をまず問題にする声も残りました。

娯楽で大きく稼ぐ人への反発の根には、看護や介護、保育の担い手が足りない状態が続き、その値段を公費で決める仕組みが社会全体の負担に直結している現実があります。英国のシンクタンクは2009年に、病院の清掃員は賃金1ポンドあたり10ポンド超の社会的な価値を生むという試算を出しました。方法論に異論はありますが、「必要な仕事ほど安い」という感覚が数字で語られてきた歴史があります。

作り手の側にも理由があります。視聴は誰にも強制されておらず、726万人が自分の時間を使って選んだ結果です。機材や拠点、編集や運営のチームへの先行投資は作り手が負い、そこで働く人の雇用も生んでいます。

広告単価の変動や収益化の停止、炎上のリスクも引き受け、上位に残る人の裏には同じ努力をして収入が生じなかった大多数がいます。動画に入る広告の分配は事業の売上で、本人の所得はそこから費用と税金を引いた先にあります。

どちらの見方にも根拠があります。市場の値段と社会にとっての必要さは別のものさしで決まる、というところまでが市場の仕組みの説明です。そのずれをどこまで税と制度で埋めるか、埋めないかは、市場ではなく社会が選ぶ問題です。


新居から見えた「必要な仕事」と「稼げる仕事」のずれ

数百万人の視聴が積み重なった先にある収入

岡崎に建った大きな家だけを見ると、動画を投稿してなぜここまで稼げるのかと不思議に感じます。その収入を数百万人の視聴者に分けて考えると、1人が生んだ経済価値はとても小さく、それが数百万人分、しかも10年以上にわたって積み重なった先にあるものです。

1本の動画を、追加の制作の手間をほぼかけずに何百万人にも届け、集まった注意を広告費に変え、上位の作り手に集める。てつや氏の新居は、この市場の形を目に見える形にした例の一つです。

かつて働く人の収入は、おおむね労働時間と時給の掛け算でした。インターネットはこれを「作ったもの×届く人数」の掛け算に変えました。社会に必要な仕事と市場で稼げる仕事は、別々のものさしで値段が付いています。そのずれをどこまで市場に任せ、どこから税や社会保障、公定価格のような制度で補うのか。それは一人のYouTuberの収入とは別に、社会全体で考える問いとして残っています。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。

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関連書籍紹介

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デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹訳(岩波書店/2020年7月刊)

人類学者の著者が、本人すら意味がないと感じながら続けている仕事がなぜ増えるのかを、職場にひそむ精神的な暴力や封建的な構造から分析した本です。人の役に立つ仕事ほど給料が低いという逆転や、働くこと自体を美徳とする考え方にも踏み込み、仕事の「価値」とは何かを問い直しています。

今回の記事で扱った、社会に必要な仕事と市場で稼げる仕事が別々のものさしで値段を付けられている問題を、働く側の実感と社会のあり方から考えたい方に向きます。


『成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学』

ロバート・H・フランク著、月沢李歌子訳(日本経済新聞出版社/2017年3月刊)

才能と努力があっても経済的に成功するのは一握りで、その明暗をささいな運や偶然が分けていると論じる、コーネル大学の経済学者の本です。「ひとり勝ち市場」での運の役割や、なぜ最上位の年収がとてつもなく高くなるのかを、さまざまな事例と実験から説明しています。

今回の記事で扱った「小さな人気差が大きな所得差になる」スーパースター経済の仕組みを、上位に残った人と残れなかった大多数の両方の側から考えたい方に向きます。


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国内外のニュースを「報道・海外の反応・背景解説」の三層で読み解く個人メディア『せかはん』運営者。2025年8月の開始から1年で300本以上を執筆し、noteフォロワーは2万人。特定の政党・組織に属さず、一次ソースの照合と左右両論の併記を編集の基本にしています。

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