マンチェスター・シティに重大な財務違反の認定 赤字超過と違う「申告の操作」と、これからの処分【海外の反応・解説】

プレミアリーグはマンチェスター・シティの9シーズンにわたる財務違反を認定。赤字の上限超過だったエヴァートンの減点と何が違うのか、処分と異議申し立てはどう進むのかを、クラブの歩みと海外の反応とともに解説。

今回の記事の重要ポイント(三点)

・プレミアリーグは9月29日、独立委員会がマンチェスター・シティの9シーズンにわたる重大な財務違反を認定したと公表した。処分は未定で、シティは異議を申し立てる方針。

・長くユナイテッドの陰にいたシティは、2008年のオーナー交代を境に優勝を争うクラブへ変わった。認定の対象は、その上昇期と重なる。

・エヴァートンやフォレストは赤字の上限超過、今回は申告の操作と調査への非協力が問われた。両クラブより重い処分も考えられるが、異議と処分の審理はこれから始まる。


▼この記事は動画でもご覧いただけます

シティの財務違反を独立委員会が認定

イングランド・プレミアリーグは9月29日、マンチェスター・シティの財務規則違反をめぐる独立委員会の判断を公表した。委員会は、2009–10から2017–18までの9シーズンについて、決算と支出制限に関する告発をすべて認定した。

調査への協力義務に関する告発は、4件のうち3件を認めた。

発表によると、シティは複数の商業パートナーと、実際の資金の負担を正しく反映しない見せかけの契約を結び、スポンサー料の一部だけをスポンサー企業が負担し、残りをオーナー企業のアブダビ・ユナイテッド・グループが負担していた。費用を低く見せる取り決めも認定され、収入の水増しと費用の圧縮は対象期間の合計で9億ポンド(約1900億円)を超える。

委員会は、クラブが規則の回避を意図していたと結論づけ、シティ側の重要な証人の一部の証言を虚偽と判断した。リーグのマスターズ最高経営責任者は「プレミアリーグ史上、最も重大な懲戒案件」と述べた。

処分は同じ委員会が別の審理で決める。規則上の選択肢には罰金、勝ち点の剥奪、その他の競技上の制裁があり、日程は発表されていない。

シティは同日の声明で無実を主張し、判断には法律・原則・事実の重大な誤りがあるとして異議を申し立てる方針を示した。申し立ての期限は10月2日となっている。


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「隣のクラブ」が優勝候補になるまで

オーナーがお金を出すと何が問題なのか

欧州のサッカーには、クラブが使えるお金を収入に応じて制限する規則があります。赤字の大きさに上限があり、収入が多いクラブほど選手の獲得や給料に多く使える仕組みです。プレミアリーグにも欧州サッカー連盟(UEFA)にも、同じ考え方の規則があります。

オーナーがクラブにお金を出すこと自体は認められています。ただ、出資はスポンサー料のような営業上の収入には数えられず、出資で埋められる赤字の額にも上限があります。企業が払うスポンサー料は収入に入り、その分だけ使える額が増えます。

委員会が認定したのは、この二つを入れ替える手口です。仮の数字で説明すると、スポンサー料を100と申告していても、スポンサー企業が実際に負担したのは20で、残りの80はオーナー側が出していた、という形になります。帳簿の上では100すべてが収入になり、その分だけ使えるお金が増えます。

判断文書によると、リーグもクラブの監査人も、長年この資金の流れを把握していませんでした。規則はクラブが出す決算書を土台に運用されているため、決算書の中身が実態と違えば、規則を守っているように見えます。


マンチェスターといえばユナイテッドだった

マンチェスターには二つのクラブがあります。世界的に知られてきたのはマンチェスター・ユナイテッドのほうです。ファーガソン監督が率いた27年間にリーグを13回制し、ベッカムやクリスティアーノ・ロナウドを擁して欧州の頂点にも立ちました。

同じ時期のマンチェスター・シティは、まったく違う場所にいます。1960年代の終わりにリーグ優勝を経験したものの、その後は1部と2部を行き来し、1998年にはクラブ史上初めて3部まで落ちています。2002年にプレミアリーグへ戻ってからも、順位は中位から下位でした。

地元に根強いファンを持ちながら、タイトルは隣のクラブに集まる。2000年代半ばまでのシティは、そういう立場のクラブです。


2008年のオーナー交代で何が変わったか

転機は2008年9月です。アラブ首長国連邦アブダビの王族マンスール氏が率いる投資会社による買収が発表され、その日のうちに当時の英国最高額でブラジル代表のロビーニョを獲得しました。以後、アグエロ、ダビド・シルバ、ヤヤ・トゥーレといった各国の代表選手が次々に加わります。

2012年5月、シティは最終節の終了間際にアグエロが決勝点を挙げ、44年ぶりにリーグを制しました。勝ち点で並んだユナイテッドを、得失点差で上回っての優勝です。2016年にはグアルディオラ監督が就任し、デ・ブライネを中心とするチームはリーグ4連覇や欧州チャンピオンズリーグ初優勝を成し遂げました。

年出来事
1998年クラブ史上初めて3部に降格
2002年プレミアリーグに復帰
2008年アブダビの投資会社による買収
2012年44年ぶりのリーグ優勝(買収後初)
2014年買収後2度目のリーグ優勝
2016年グアルディオラ監督が就任
2018年買収後3度目のリーグ優勝
2021〜24年リーグ4連覇、2023年に欧州初制覇
2026年グアルディオラ監督が退任、マレスカ監督が就任

(リーグの判断文書と各報道から作成。認定の対象は2009–10から2017–18)

今回の認定の対象は、買収の翌シーズンから2018年の優勝までの9シーズンで、この間のリーグ優勝は3回です。当時の主力の多くはすでにクラブを離れ、現在のチームはマレスカ監督のもと、ノルウェー代表のハーランドやイングランド代表のフォーデンが中心になっています。


海外の反応

今回紹介するのは3つのスレッドです。中心は、サッカー総合掲示板r/soccerにプレミアリーグの声明をそのまま貼ったスレッドです。発表直後に立ち、1万件を超える賛同と3000件を超えるコメントを集めました。

論調は、厳しい処分を求める声が圧倒的です。降格やリーグからの追放、タイトルの剥奪、オーナーへの売却命令まで、処分の中身をめぐる書き込みが続きました。

シティを擁護する声や、タイトル剥奪に反対する声は少数にとどまりますが、以下の抜粋にはその少数意見も含めています。

コメントの中には、財務操作の累計額と赤字の超過額を混同した表現や、決まっていない処分を前提にした書き込みもあります。

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


(声明の「一連の仕組みの目的は、対象期間にクラブの収入の水増しと費用の圧縮を合わせて9億ポンド超にのぼる操作を行い、財務規則を守っているように見せることだったと認定された」という一文を引用して)

はした金だな、正直。


1シーズンあたり1億ポンドだぞ。しかも1億ポンドの重みが今よりずっと大きかった時代の話だ。こんな規模の不正は見たことがない。


エヴァートン(2023年に財務規則違反で勝ち点を剥奪されたクラブ)の最初の処分は、基準の5ポイントから10ポイントに引き上げられた。1500万ポンドの超過が「重大」とみなされたからね。

たった1件、1500万ポンドの違反で「重大」扱いだぞ。PSR(クラブの損失額に上限を設けるリーグの規則)違反が7件、合計9億ポンドを意図的に隠していたら、いったいどうなるんだよ。


エヴァートンやノッティンガム・フォレスト(2024年に同じ規則違反で勝ち点を剥奪されたクラブ)への処分は、シティに鉄槌を下すための前例づくりという面もあったんじゃないかと勘ぐってしまう。


俺はそうは思わない。リーグは本当は、シティに過去最高額の罰金を科して幕引きにしたかったはずだ。でもエヴァートンとフォレストにああいう処分を出した以上、もう逃げ道がなくなったんだと思う。


プレミアリーグの声明の言い回しは本当に容赦ない。リーグ史上最大の規則違反だとまで言っている。

正直、トーンを抑えて、シティを軽い処分で済ませる余地を残すと思っていた。でも9億ポンドの使いすぎは、とんでもない規模の違反だよ。

リーグは身動きが取れなくなっているように見える。エヴァートンやフォレストの件で、ずるをしたクラブを罰する前例を作ってしまったし、1件の違反には勝ち点剥奪という客観的な罰がすでにある。

リーグにできるのは、もうフットボールリーグ(プレミアリーグの下で2〜4部を運営するEFLのリーグ)の外まで降格させることくらいじゃないかな。


プレミアリーグにできるのは、プレミアリーグから追い出すことだけだ。その先、下のリーグからも締め出すかどうかはEFLが決める。EFLには、プレミアリーグを失格になったクラブを受け入れる義務はない。


本気でシティを厳罰に処すつもりがないなら、こんな声明を出すべきじゃない。クラブの売却を強制して、トロフィーもメダルも全部取り上げて(2位のチームに渡さないとしても)、リーグから追放する。そういうレベルの話だろう。


どう転んでも、ほかのチームがメダルやトロフィーを受け取ることにはならないよ。あるのは補償金、それだけ。


タイトルはピッチの上で、11人対11人で勝ち取ったものだ。降格と重い罰金で十分だろ。いちばんいいサッカーをしていたチームからタイトルを取り上げるなんてばかげてる。ユナイテッドやアーセナルが格下相手にリードを守れなかったのは、シティのせいじゃない。


そうだね、数えきれないほど規則を破ったからこそピッチに送り出せた11人でね。そこが話の肝なんだよ。その選手たちを獲得できなければ、ペップ(グアルディオラ監督)もシティには来ていないし、タイトルも取れていない。不正がなければね。

ずるをした側の肩を持つのはやめてくれ。


ひとつだけ言わせてくれ。カルドゥーン(クラブの会長)にはUAEに帰ってクラブを売れと言い続けてきたけど、r/mcfc(シティファンの掲示板)ではかなり反発を食らった。本当のシティファンがいまどこにいるのかも分からない。でも、いまのオーナーのやり方にははっきり軽蔑を示して、もっと声を上げないといけない。


最悪の事態になっても、下のリーグまでついていくのか? だとしたら尊敬する。


この世に残っている自分の最初の映像は、親父がシティのユニフォームを着せた俺を抱いていて、ショーン・ゴーター(1998〜2003年にシティでプレーしたストライカー)たちのそれまでのハイライトが流れているものなんだ。何があってもついていく。でも、いまのオーナーには今後もはっきり反対し続ける。

国家が所有するクラブなんて疫病みたいなものだし、複数のクラブをまとめて持つグループ(シティの親会社が世界各地のクラブを保有している形態)も同じだ。うちはいまその両方を抱えているけど、どっちもいらない。


タイトルの扱いについては、公式発表の約2時間半前に立った別のスレッドでも議論になっていました。

元ユナイテッドのウェイン・ルーニー氏が、シティのタイトルを後から受け取っても意味がないと語ったという記者の投稿を扱ったものです。


タイトルの付け替えの話はもうやめてくれないか。剥奪はする、再授与はしない。それだけ。


完全に同意。シティにタイトルの資格はないが、2位に渡せば済む話でもない。不正がなかったらシーズン全体がどう展開していたかなんて、誰にも分からない。


再授与すべきだと思う。クラブが見返りを手元に残せるなら、不正を正当化することになる。罰が不正で得たものより小さければ、不正は得になる。


シティのサポーターが集まる掲示板r/MCFCにも、同じ声明を扱うスレッドが立ちました。

こちらでは、認定を受け入れる声、経営陣への怒り、そもそも規則が不公平だったという主張が入り混じっています。


オーナーと経営陣の言うことは、嘘をついていたと疑いの余地なく証明されるまでは信じて支える。ずっとそう言ってきた。あの声明を読んだ以上、シェイク(オーナーのマンスール氏)にはクラブを売ってほしいし、このことに関わった人や知っていた人は全員クラブを去って、二度とスポーツの仕事に就かないでほしい。

何が起きても、選手やコーチたちは全力で支えないといけない。いまこそファンが必要とされている。このクラブは、どのディビジョンにいようとホームにもアウェーにもついていく忠実なファンの上に築かれてきた。最悪の事態になったら、そのことを思い出そう。

しばらく勝てなくなるかもしれないからと応援をやめようと考えているファンがいるなら、最初からファンじゃなかったってこと。


今回の件で、もともとの考えは変わらない。「CTID(City Till I Die、死ぬまでシティというファンの合言葉)。規則を破ったんだから罰してくれていい。でもあの規則はでたらめだった」。

その9シーズンで、うちが使った額は、レスターを除けばプレミアリーグを制したほかの2チームよりほんの少し多いだけだった。たしか12億ポンド対11億ポンド(チェルシー)と10億ポンド(ユナイテッド)くらいだったはず。だから自分から見れば、うちは大きなクラブと同じ土俵に立っただけだ。

ピッチ上の成果を無効だと言う人は偏っていると思う。タイトルを争う相手とだいたい同じ額を使えることが、罪であっていいはずがない。でも実際には罪なんだから、罰を受けて前に進もう。うちは100年以上の歴史があって、買収前にもトップリーグで優勝している。にわかファンや一部のトップ選手を失っても、それはそれでいい。自分にとってはあの黄金期にそれだけの価値があったし、こんな騒ぎで色あせたりはしない。

それに、容疑の対象は2017/18シーズンまでだから、4連覇(2021〜24年のリーグ4連覇)やチャンピオンズリーグ優勝についてはとやかく言えないはずだ。どうせ言われるだろうけど、知ったことか。


みんなもう、買収以降の成果はすべて疑わしいと言っているし、これからも言うよ。全部が同じ怪しい土台の上に築かれているんだから。

何年も筋肉増強剤を使って体と力を作り上げたオリンピック選手が、大会の直前に使用をやめて、形式上はクリーンな状態で金メダルを取るようなものだ。

メダルを取った時点では薬を使っていなかったと主張することはできる。でも、それまでの何年もの使用が、その舞台にたどり着いたことと無関係だとは言えない。

シティが抱えている問題はそこだ。特定の期間で線を引いたとしても、その後の成功の土台が調査対象の期間に作られた以上、人はその後のすべてを疑い続ける。


まったく同じではないけど、言いたい理屈は分かる。

うちの容疑の大半は、ほかのクラブに追いつくために使えるお金を人為的に増やしたことだ。実質的には、毎年優勝を争うクラブが3〜4チームだったのを4〜5チームにしただけ。

ほかのクラブは薬物が禁止される前に使って体を作り、そのあとで薬物を禁止にしたけど、筋肉はそのまま残った。うちは禁止されてから薬を使って、いまはほかと同じ体つきになっている。そこは罰を受けるべきだと思う。


まあ、ある意味ではね。リヴァプールもアーセナルもユナイテッドも、自前で鍛え上げた体だ。スパーズ(トッテナム)がいまの位置にいるのは、主に抜け目ない経営のおかげ。君の言う例えに当てはまるのは、実際にはチェルシーくらいだよ。

ある程度は同情する。でも、いまだに現実から目を背けているシティサポーターがあまりに多いと思う。シティの成長が自然なものじゃないことは、誰の目にも明らかだった。

ようやく明るみに出てよかったよ。金の出どころを疑うたびに「あんた弁護士なの?」と言われるのには、ほとほと疲れていたから。何かがおかしいのは、あれだけ見え見えだったのに。

だから、心からの善意で言うけど、本当にリーグ2(4部)まで落ちればいいと思っている。罰としてだけじゃなく、何年もゆがめられてきた競争条件を本当に元に戻す方法は、たぶんそれくらいしかないから。もしそうなったら、上に戻るまでの道のりを楽しんでほしい。サポーターとしていちばん楽しい数シーズンになるかもしれないよ。


何が重く、これからどうなるのか

「使いすぎ」と「申告の操作」の違い

プレミアリーグでは2023年以降、エヴァートンとノッティンガム・フォレストが勝ち点を剥奪されています。どちらも、申告した決算の数字が赤字の上限を超えていたという違反です。問われたのは使った額の大きさで、決算書の中身の正しさは争点になっていません。

今回は、申告した数字の中身が問われています。委員会は、9シーズンにわたって収入と費用が実態と違う形で計上され、クラブに規則を避ける意図があったと認定しました。調査への非協力と、証人の虚偽の証言も加わります。期間、金額、意図、調査への対応のどれを取っても、過去の2例とは性質の違う案件です。

クラブ側はこの認定を全面的に否定しています。声明は、無実を裏づける証拠があり、判断には法律・原則・事実の重大な誤りがあると主張していますが、どの認定のどこが誤りなのかは示していません。公開された判断文書も一部が黒く塗られた版で、付属の資料はまだ出ていません。双方の主張を細部まで突き合わせる材料は、外からは見えない状態です。

委員会がシティの説明を受け入れた部分もあります。2012年に進めた収入を増やす取り組みの多くは正当なものと認め、クラブ側の主張の一部は違反の程度を小さくする材料として扱っています。

2020年にも似た場面があります。UEFAが欧州の大会への2年間の出場停止を決め、スポーツ仲裁裁判所がこれを取り消しました。仲裁裁判所の説明では、UEFAが認定した違反の大半は、立証されなかったものと、5年の時効で扱えなかったものに分かれます。調査に協力しなかった点は認められ、罰金は残りました。プレミアリーグの規則には同じ時効がなく、今回は42日間の審理で証人の証言が調べられています。

認定の対象は2017–18までで、その後も同じ行為が続いたとは認定されていません。後年のタイトルを含め、処分がどの範囲に及ぶのかはまだ決まっていません。

対象期間の投資がその後のチームの土台になったという見方から、2018年以降の成績も議論の対象になっています。認定された行為と後年の成績がどこまで結びつくのかは、判断文書からは分かりません。


過去の処分と比べる

財務や会計をめぐって処分を受けたクラブは、イングランドにもイタリアにもあります。

クラブ時期問われたこと処分
エヴァートン2023〜24年赤字の上限超過(2回)勝ち点を計8剥奪
フォレスト2024年赤字の上限超過勝ち点を4剥奪
チェルシー2026年前オーナー時代の未申告の支払い。クラブが自ら申告罰金。補強の禁止1年は2年間の執行猶予つき。勝ち点の剥奪なし
ユヴェントス2023年選手の売買を使った会計の問題勝ち点を10剥奪
ユヴェントス2006年審判の割り当てへの不正な働きかけ2部降格、優勝2回の取り消し
シティ2026年9シーズンの申告の操作と調査への非協力未定

(各リーグの発表と報道から作成。国やリーグによって規則と処分を決める機関が違う)

チェルシーについてリーグは、未申告の支払いを加えて計算し直しても赤字の上限を超えなかったと判断しています。新しいオーナーが自ら申告し、調査に協力したことも処分を軽くする理由になりました。

シティは、正確に申告していれば支出の上限を大幅に超えていたと認定され、調査への非協力も違反とされています。処分の審理では、この二つの違いがどう扱われるかが焦点になります。

降格とタイトルの取り消しまで進んだ2006年のユヴェントスは試合の公正さに直接関わる不正で、カルチョ・スキャンダルと呼ばれています。会計の問題だった2023年は、勝ち点10の剥奪でした。「ユヴェントスは降格したからシティも」という比較は、この2件を分けると成り立ちにくくなります。

プレミアリーグに今回と同じ性質と規模の前例はなく、財務違反の重さを点数に換算する決まった表もありません。エヴァートンの超過額とシティの9億ポンドは、種類の違う数字です。金額の比から減点を計算することもできません。

財務規則は、クラブが出す情報が正確であることを前提に動いています。その情報の操作が認定され、判断までに長い年月がかかった今回は、過去に得た有利さを後からの処分でどこまで埋め合わせられるのかが問われます。

罰金は資金力のあるオーナーには効きにくく、勝ち点の剥奪は現在の選手とファンが受け止めることになります。タイトルを取り消す場合も、当時の2位を優勝に繰り上げるかどうかは別の判断です。対象期間の優勝3回のうち2回は、2位がユナイテッドでした。


処分はいつ、どこまで進むのか

これから残っているのは、認定そのものへの異議申し立てと、処分を決める審理の二つです。異議は新しく選ばれる3人の委員会が扱い、処分は今回と同じ独立委員会が非公開で審理します。二つは並行して進む見込みだと英紙ガーディアンは伝えています。リーグは日程を公表していません。

異議の審理には数か月かかるとの見方が報じられています。英スカイスポーツは、リーグが今季中の決着を望んでいるとみられること、2020年のようにスポーツ仲裁裁判所へ持ち込む道はないことを伝えています。

処分の中身について、英国では大幅な勝ち点の剥奪を予想する声が出ており、元イングランドサッカー協会会長がリーグからの除外を求めたと報じられました。いずれも外部の見立てで、委員会が何を基準にするのかは示されていません。除外はプレミアリーグのクラブでなくなる処分で、下のリーグへ移る降格とは別のものです。

見通しを難しくしているのは、処分を適用する時期です。異議の結論を待たずに勝ち点を引けば、後で認定が覆ったときに順位を元に戻せません。結論を待てば、シーズンの優勝争いや降格争いが、確定していない処分を抱えたまま進みます。どちらを選んでも、他のクラブの順位に影響が及びます。

周辺でも動きが出ています。ユナイテッド、リヴァプール、アーセナル、トッテナムの4クラブは2024年に、違反が認められた場合に賠償を求める権利を残す通知を出したと報じられました。通知は将来の請求に備えたもので、実際に提訴するのか、どの損失をシティの違反と結びつけるのかは、まだ明らかになっていません。

シティの側は、リーグの規則そのものにも異議を唱えてきました。オーナーと関係の深い企業との取引を制限する規則をめぐる2024年の仲裁では、規則の一部が違法と判断されました。この争いは2025年9月に和解で終わり、シティは現在の規則を有効なものとして受け入れています。

収入の大きい古くからの強豪ほど多く使える仕組みは、新しく投資するオーナーに不利だという批判も以前からあります。こうした規則の作り方への批判と、当時の規則を守っていたかどうかの認定は、別の問題として扱われています。


シティの15年に出た一つの判定

残るのは異議と処分の二つの審理

3部に落ちたクラブが、オーナーの交代から4年でリーグを制し、15年で欧州の頂点に立ちました。独立委員会の判断は、その前半の9シーズンについて、クラブが申告した収入と費用は実態と違っていたと結論づけています。シティはこれを否定し、異議を申し立てる構えです。

エヴァートンやフォレストとは問われた中身が違い、自ら申告したチェルシーとは調査への姿勢が違います。認定が維持されれば、エヴァートンやフォレストより重い処分が予想されています。その重さも、適用される時期も、まだ決まっていません。

勝ち点の剥奪が今季に適用されれば、優勝争いや欧州の大会への出場権、降格争いにも影響します。次の節目は10月2日の申し立て期限と、その後に示される審理の日程です。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。


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関連書籍紹介

『プレミアリーグ全史3』

ベン・メイブリー著(平凡社新書/2025年10月刊)

プレミアリーグの歩みをたどるシリーズの最終巻で、2008年のアラブ首長国連邦の資本によるマンチェスター・シティへの投資から始まり、昇格2年目のレスターが果たした2015-16シーズンの優勝、グアルディオラ監督とクロップ監督がもたらした戦術の変化、「ビッグ6」の時代までを描いた平凡社新書です。三笘薫選手や鎌田大地選手ら日本人選手の活躍にも触れています。

今回の記事で扱った、ユナイテッドの「隣のクラブ」だったシティが優勝を争うクラブへ変わっていく流れを、リーグ全体の歴史の中でたどりたい方に向きます。


『フットボール・マネー 資本主義と権力闘争のゲーム』

ミゲル・デラニー著、山中拓磨訳(平凡社/2026年4月刊)

英紙の記者が、アブダビ、ロンドン、パリ、モスクワ、ニューヨークなどでの取材をもとに、国家が関わるクラブの登場やワールドカップをめぐる動きなど、商業化が進む現代サッカーでお金と権力がどう絡み合ってきたかを描いた本です。マンチェスター・シティを扱う章もあります。

今回の記事で扱った「オーナーの資金とクラブの収入の境目」が、なぜこれほど大きな争いになるのかを、サッカー界全体のお金の流れから考えたい方に向きます。


参考リンク

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せかはん

国内外のニュースを「報道・海外の反応・背景解説」の三層で読み解く個人メディア『せかはん』運営者。2025年8月の開始から1年で300本以上を執筆し、noteフォロワーは2万人。特定の政党・組織に属さず、一次ソースの照合と左右両論の併記を編集の基本にしています。

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