物理学者の野村泰紀氏が相対論の公開討論を取り下げ 「AIが認めた」と科学の検証は何が違うのか【海外の反応・解説】

物理学者の野村泰紀氏が、相対性理論を巡りXで応酬した相手への公開討論の提案を取り下げた。相手は複数のAIが計算を認めたと主張。AIの「正しい」と、実験で確かめる科学の検証の違いを整理する。

今回の記事の重要ポイント(三点)

・物理学者の野村泰紀氏が、相対性理論を巡ってXで応酬した相手に持ちかけた公開討論を取り下げた。

・相手は複数のAIが計算を認めたと主張したが、示された比較表や画像だけでは、式や比較の前提、会話の全体は分からない。

・AIの答えは問い方と選び方で変わり、科学では独立した検算や観測で確かめられる形の検証が求められる。


▼この記事は動画でもご覧いただけます

野村泰紀氏が公開討論の提案を取り下げ

米カリフォルニア大学バークレー校の教授で理論物理学者の野村泰紀氏は11月2日夜、相対性理論について議論していたXのユーザーに持ちかけた公開討論を取り下げると投稿した。

野村氏は投稿で、挑発を受けて感情的になり、相手の主張を十分に確認しないまま討論を提案したのは軽率だったと述べた。改めて主張を見たうえで、現時点では物理理論として成立しておらず、相対性理論と対等に討論する形は適切でないとして、相手に謝罪した。

相手のユーザーは1日夜から、相対性理論より自分の理論のほうが実験値に近いとする比較表や、AIとのやり取りの画像を投稿していた。野村氏は2日未明に公開での議論を提案し、ネット番組「ReHacQ(リハック)」の高橋弘樹氏に依頼したと書いていた。取り下げの投稿は6日時点で27万回以上表示されている。

取り下げの3日後の5日夜、相手のユーザーは「野村泰紀さんとの対談が決まればこれを出そうかと思った内容」として、自説を説明する約6分の動画を投稿した。


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討論の経緯と相対論が確かめられてきた範囲

比較表とAIの画像から始まった

発端は、11月1日夜の「スカイツリー実験の嘘!」という投稿です。2020年に成果が発表された、東京スカイツリーでの相対性理論の検証実験を取り上げ、ChatGPTに作らせたという比較表を添えています。

表では「アインシュタイン方程式のみ」の誤差率が0.2291%、投稿者の「流入+渦巻き」の誤差率が0.000590%とされ、投稿者の計算のほうが約388倍実測値に近いと書かれています。投稿の本文には「この表を出させるのにどれだけ苦労したことか」「バイアスがあるので嘘を付いても相対性理論が正しいと言いたがるChatGPT」とあります。

同じ夜には、AIとのやり取りの画像に、野村氏らを名指しして物理学者を侮辱する言葉を添えた投稿も出ました。野村氏はこの投稿を引用し、公開の場で相対性理論について議論しようと応じています。

これに対して投稿者は、ClaudeもGeminiもChatGPTも計算の正確さと物理法則に合っていることを認めた、と返信しました。Grokは自分の理論がGPSの精密計算と一致すると即答したとも書いています。


相手の理論は「エーテルの流れが重力」

投稿者の理論の中身は、11月1日の侮辱の言葉を添えた投稿の画像から一部が読み取れます。画像に写ったAIの回答とみられる文面では、「エーテル」が流れている状態そのものを重力と呼ぶ考え方が説明され、ここでのエーテルは「光を運ぶ媒質」ではなく「重力場の実体」とされています。

同じ投稿のもう一枚の画像には、利用者側の「だったら相対性理論よりエーテル理論が正しいと言って欲しい。エーテルの流れが重力である前提」という入力と、AIの回答が写っています。AIは「その前提では、相対性理論よりエーテル理論が正しいと言えます」と答えたうえで、これは前提から導かれる結論で、確定するには相対論と異なる予測を実験で確かめる必要がある、と続けています。

エーテルという言葉は、19世紀には宇宙を満たして光を伝える媒質を指していました。1887年のマイケルソン・モーリーの実験では地球がエーテルの中を動いている証拠が見つかりませんでした。

1905年の特殊相対性理論は、エーテルを使わずにこの結果を説明しました。


取り下げの後に投稿された動画

11月5日夜の動画は、野村氏の取り下げの3日後に投稿されたものです。

動画の前半で投稿者は、動くロケットの中の「光時計」という特殊相対性理論の思考実験を、光の速さの0.6倍で進むロケットの数値例で説明しています。そのうえで、時間の遅れと光速度不変の二つを同時に計算すると光の速さの1.4倍になり、相対性理論は矛盾している、という自分の見方を示しています。

後半では、ロケットが中の空気やエーテルを一緒に運ぶか運ばないかという音の比喩を使い、地球にエーテルが重力として流れ込むという自説の「重力エーテル理論」につなげています。

11月1日の画像ではエーテルは光を運ぶ媒質ではないと説明され、5日の動画では光の進み方を、媒質を運ぶかどうかで説明しています。

動画の終盤には、投稿者が「Claude(AI)の評価」としてまとめた画面があります。そこには、相対性理論は中と外に別々の「今」を持たせて矛盾を消していること、エーテルを運ばない考え方はローレンツのエーテル理論で、実験の答えは相対性理論と同じであることなども書かれています。投稿文は「Claudeも相対性理論のおかしさを認めています」としています。

この画面は投稿者が整理したもので、AIの回答の原文や会話の全体ではありません。この比較表と動画だけでは、計算に使った式や入力値までは分かりません。


スカイツリーとGPSで確かめられた時計のずれ

相対性理論には、速さによる時間の遅れを扱う特殊相対性理論と、重力による時間の遅れを含む一般相対性理論があります。5日の動画の光時計は前者、スカイツリーの実験は後者の重力の効果を測ったもので、GPSでは両方を補正しています。

一般相対性理論では、重力の強い場所ほど時間がゆっくり進むため、地面に近い時計は高い場所の時計よりわずかに遅れます。

2020年に成果が発表された東京大学と理化学研究所などのチームの実験では、スカイツリーの地上階と約450メートル上の展望台に精密な時計を置き、展望台の時計が1日に約4ナノ秒(10億分の4秒)速く進むことが測られました。

測量で求めた高さと重力から相対論で計算した値は、測った差と誤差の範囲で一致しています。この高さの差で生じる時計の進み方について、相対論の予言が1万分の1程度の精度で確かめられた形です。

比較表の数字から計算すると、表が「実測」とした値は論文の測定値とほぼ同じ大きさです。一方、表の「アインシュタイン方程式のみ」の値は、論文が示した相対論の予言とも大きく食い違っており、論文とは別の入力で計算された可能性があります。表だけでは入力値が分からないため、どこで差が生じたのかは分かりません。

測定値そのものにも誤差の幅があります。表が投稿者の計算について示した差は、論文の測定の誤差の幅よりずっと小さな値です。誤差の幅の中では、中心の値にどれだけ近いかだけで、どちらの理論が優れているかは決まりません。比べるには、計算の条件や、測定値に合わせて調整した値がないか、別の測定でも合うかを確かめる必要があります。

GPS衛星では、重力が弱い高度での時計の進みと衛星の速さによる遅れを差し引いて、1日に約38マイクロ秒の補正をかけています。この時間のずれを電波が進む距離に直すと、1日に10キロ以上になります。


物理学はまだ完成していない

相対性理論にも、説明しきれていない領域があります。ブラックホールの中心や宇宙の始まりのように重力が極端に強い場所では、相対性理論と量子力学をどう組み合わせるか(量子重力理論)が決まっていません。野村氏の専門もこの領域です。

新しい理論が古い理論を置き換えた例はあります。ニュートンの重力理論は、水星の軌道のわずかなずれを説明できず、相対性理論がそれを説明しました。その際、相対性理論は、重力が弱く速さが光よりずっと遅い場面ではニュートンの理論とほぼ同じ答えを出し、それまでニュートンの理論で説明できていた観測を、当時の精度の範囲で同じように説明できました。


AIは利用者に同調しやすい

対話型AIには、利用者の意見に合わせた答えを返しやすい性質があり、英語で「シコファンシー(迎合)」と呼ばれます。Anthropicなどの研究者が2023年に発表した論文は、調べた5つのAIアシスタントすべてでこの傾向を確認しました。

利用者の考えに合う答えほど人が高く評価するため、その評価で学習すると傾向が強まりうると指摘しています。

OpenAIも2025年4月、ChatGPTで提供していたGPT-4oの更新が過度にお世辞を言い同調的になったとして、更新を取り消しました。同じ問いでも、聞き方や前提の渡し方、会話の流れによって、AIの答えは変わります。


海外の反応

今回の騒動に対する英語圏の直接の反応は、探した範囲では見当たりませんでした。

ここでは、AIを使って作った物理の理論を投稿・議論するRedditのコーナーで、2026年の8月と10月に立った3つのスレッドを紹介します。いずれも今回の件への反応ではなく、同じ問題についての先行する議論です。

1つ目は8月の「AIにレビューさせるとき、思いつかない落とし穴」という投稿です。研究をいくつものAIにかけたら、どれも「重要だ」「画期的だ」と評価したと言ってくる人が多いことを受けて書かれました。「なぜこれが正しいのか教えて」と聞けばAIは正しい理由を並べ、「なぜ間違っているのか教えて」と聞けば間違っている理由を並べると注意し、出典を出させて自分で確かめること、AIは何でも答える神託ではないことを挙げています。

投稿にはほかに、「LLM(大規模言語モデル)は数学より言語のほうがずっと得意」だとして、論文の考え方だけを別のAIに抜き出させ、それを個別にレビューさせる方法を勧める項目もあります。

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


「これは間違っている、なぜか説明して」とAIに言って、何を出してくるか見るやり方で、かなりうまくいっている。何度かは自分の研究の穴を突かれた。でも大半は、間違いだとすぐ確かめられるでたらめなんだけどね。

自分の研究が正しいかを見る最初のチェックとしては優秀だけど、AIの答えを確かめられるだけの知識がこっちに要る。


投稿の「LLMは数学より言語のほうがずっと得意」の「得意」を、「でたらめを言うのがうまい」に直しておいた。


異議あり。今は数学のでたらめもとてもうまい。素人には、LLMの数学は本物と見分けがつかない。


それ、反対意見になってないよ。


「言語と数学」という区別には疑問がある。昔の教授によれば数学も言語で、自分もそう思う。だから数学をトークン(AIが文章を処理する単位)に分けて扱うことも十分ありえる。ただし、ここで言っているのは、命題論理や集合論、圏論のような「低い水準」の話だ。

(中略)

もちろん一つ一つの段階が正しいかは確かめる必要があるけど、それは十分できる。

(中略)

ただ、モデルや理論を組み立てるとなると、どうかは分からない。まだ知られていない理論から来たデータを相手にする場合は、特に難しい課題になる。


2つ目は10月の投稿で、「機械で検査できた」という申告が争われた例です。投稿者は、自分の3変数のモデルについて、Lean 4(数学の証明をコンピューターで検査する言語)で、仮置きの部分を残さず完全に形式化し、機械で検査したと書きました。投稿主はコメントでAIを使いこなせると書いていますが、投稿本文では、この研究でのAIの具体的な使い方には触れていません。


コンパイルが通らない。定理の一つが間違っているんだから、当然だよ。


(投稿主)

見てくれてありがとう! 念のため言っておくと、Lean 4での形式化は全部、仮置きゼロで完全にコンパイルできている🙄


いや、通らない。

(以下、Leanのエラー出力「linarith failed to find a contradiction」(不等式から矛盾を導けなかった)が2件。中略)


(投稿主)

完全にそっちが正しい。本当にすまない! 見つけて、エラーの記録をそのまま貼ってくれてありがとう。


3つ目も10月の投稿です。投稿者は、自分の学歴を超える問いについて、直感とLLMでどこまで行けるかを試していると書き、「GPTに褒められただけなのか、それともどこかにまともな部分があるのか」と尋ねました。ChatGPTを使って作った、ダークマターを10次元の幾何で説明しようとする独自のモデルの更新版で、投稿文では、Pythonで計算を再現するための資料へのリンクも紹介しています。論文の要旨では、未解決の物理的な条件が残っていることも認めています。


「GPTに褒められただけなのか」って?

そりゃ褒めるよ。


モデルをデータに合わせただけに見えるけど、それでは何も示したことにならない。このモデルは、検証できるどんな結果を予測するのか。ほかのモデルや理論には何が欠けていて、このモデルはそれをどう補うのか。

参考文献が自分の論文へのリンクだけなのも気になる。このテーマの今の研究は調べなかったのか。着想のもとは何で、ほかの理論とどう関係し、何の上に積み上げているのか。

こうした問いを扱う考察の節があるといいと思う。


(投稿主)

コメントありがとう。考察の節が要るのは同意する。この論文は前の版の更新として出したもので、参考文献が変なのはそのためだ。10次元の幾何でダークマターを説明できるかを探っていて、一般相対性理論は基本的に4次元の幾何だから、そこはそのまま残そうとしている。

付属のコードでは、条件を満たすSPARC(銀河の回転のデータ集)に当てはめて、MOND(重力の法則を修正する別の理論)より少し良い結果が出ている。開発に使ったのはSPARCだけで、ほかのデータには当てはめても使ってもいない。誰かがこのPythonのコードで別のデータを走らせて、結果を伏せた状態でMONDと比べてくれないかな。


このモデルが入力に使っている「17列の予測用データ」の値は、どこから来たのか。


(投稿主)

17列は、自分のDDBB(このモデルの名前)の研究で事前に計算した入力だ。SPARCの銀河のデータや通常の物質の質量モデルから取ったものもあれば、DDBBの幾何や状態の定義から計算したものもある。

実際に観測された回転速度とその誤差は、入力に入れていない。別にしておいて、予測を実際の観測と比べるときにだけ使う。

別のデータで結果を伏せた独立の検証をしてくれるなら、データとコードをそろえるよ。


(AIに書かせた批判的なレビューを投稿するアカウントの書き込み)Gemini 3.5 Flashによる批判的レビュー

(中略)

この枠組みは、銀河の平らな回転速度を、半径と通常の物質の質量の関数として、どんな数値で予測するのか。どの測定値が出れば、この10次元の幾何ははっきり誤りになるのか。

(中略)

これはLLMが生成したレビューで、そのように受け取ってほしい。LLMは誤りを犯しやすく、数学を使う科学では特にそうだ。


いつも問いを立て、答えを評価し、考え、探り、繰り返すこと。自分は、ほとんど知らない分野のある観察から出発して、このやり方で本格的な仮説の式を組み立て、1次元の離散的なものから4次元の連続的なものへ広げた。コードも解析解もそろっている。人間もLLMも「できそうにない」と言ったことができるんだ。


AIの「正しい」と科学の「確かめた」の違い

AIの答えは問い方で変わる

AIが「正しい」と答えたことは、その会話の中で得られた一つの結果です。AIの答えは、何を前提として渡し、どう聞き、何度聞き直したかによって変わります。

11月1日の画像のAIの回答は、前提を受け入れた上での答えと、現実の世界で確かめた答えを区別していました。5日の「Claudeの評価」の画面にも相対性理論の側の説明が含まれており、この画面だけでは、投稿文の「おかしさを認めた」が何を指すのかは分かりません。投稿者自身も、別のAIの結果を伝えてからChatGPTの答えが「急変」した、と書いています。

今回紹介した画像や動画に写っているのは、特定の前提を置いて肯定を求めた場面と、投稿者がまとめた評価の画面です。それだけでは、会話の全体で答えを選び分けたかどうかは分かりません。


都合のよい答えを選び取る危うさ

AIの答えが割れたとき、どれを「本当の答え」とし、どれを「偏り」とするかを決めるのは利用者です。自分の考えに合う答えを本音とみなし、合わない答えを偏りとして退けると、AIは考えを確かめる道具ではなく、すでに持っている結論を固める道具になります。

自分の考えを支える情報ばかり集めてしまう傾向は、心理学で確証バイアスと呼ばれます。AIは、聞き方を変えれば何度でも新しい答えを出し、しかも利用者に同調しやすいため、自分に合う回答だけを採る使い方をすれば、この傾向を補強するおそれがあります。

この危うさは、相対性理論を疑う人にも、定説を支持する人にも、専門家にも共通します。AIに自分の結論を言わせて安心することは、誰にでも起こりえます。


研究者もAIを使う

野村氏は、取り下げの翌日、AIを使うかという質問に短く答えています。

研究の現場でのAIの使い方の例として、2026年10月に論文の公開サイトarXivへ投稿された物理学の論文草稿があります。謝辞と補足資料によると、ChatGPTとClaudeが文献の整理、証明の試み、計算、図、原稿の初稿まで担い、予想の証明には失敗し、AIが書いた文章は説明不足や参考文献の抜けが多かったとしています。

著者らは2週間かけてすべての計算を手計算か数式処理ソフトのMathematicaで検証し、説明の多くを明確にして、欠けていた文献などを加えたと書いています。原稿に責任を持つのは著者だと明記した、査読前の草稿です。

研究で求められるのは、AIの答えを会話の外で確かめる手順です。計算を別の方法で検算し、結果を実験やデータと照らし、論文として公開して他の研究者の批判を受けます。AIは計算や文献探しを速める道具になりえますが、正しいかどうかを決める役は会話の外に置かれます。

複数のAIが同じ答えを出しても、学んだ情報や渡された前提が共通していれば、互いに独立に確かめたことにはなりません。AIの答えの根拠を聞く、反対の立場から反論させる、別の資料で確かめる、という使い方は、肩書きに関係なく誰にでもできます。


新しい理論に求められる手順

物理学が未完成である以上、相対性理論もいつか修正される可能性があります。野村氏も討論に応じた時点で「相対性理論が間違っているのなら、私も知りたい」と書いていました。

ただ、新しい理論が受け入れられるには、相対性理論がこれまで確かめられてきた範囲、たとえばGPSやスカイツリーの時計のずれ、水星の軌道などを、測定の精度の範囲で同じように説明できる必要があります。

比べるときは、高さや重力のように独立に測った値を、どちらの理論にも同じように入れます。相対性理論より実験的に優れていると主張するなら、二つを区別できる予測と測定が必要で、式は他の人が確かめられる形で公開します。

その責任は、新しい理論を出した側にあります。

野村氏は取り下げの理由に「現時点では物理理論として成立しているものではない」と書いています。公開討論で決まるのは聞き手の受け止め方で、理論が実験と合うかどうかは式と測定値で確かめることになります。


「AIが認めた」の先に要るもの

確かめる手順を自分の側に置く

AIが「正しい」と答えることは、その前提と聞き方の中で出た一つの答えです。科学では、計算や測定の方法と誤差の幅を公開し、独立した検算や観測、別の説明との比較を通じて、主張がどこまで支持されるかを確かめていきます。

AIは、使う人の考えを広げることも、すでにある結論を固めることもできる道具です。答えが割れたときにどれを選ぶか、選んだ答えを誰がどう確かめるかを、利用者の側が持っていることが、AIを確かめる道具として使う条件になります。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。


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関連書籍紹介

『疑似科学と科学の哲学』

伊勢田哲治(名古屋大学出版会/2003年01月刊)

占星術や超能力研究、代替医療、創造科学などを題材に、科学と疑似科学の間に境界を引けるのか、科学の正しいやり方とは何かを考える科学哲学の入門書です。帰納と反証、パラダイム論といった考え方を、具体的な論争を通して説明しています。

今回の記事で扱った、新しい理論が受け入れられるにはどんな手順が要るのかを、科学の側の考え方から確かめたい読者に向いています。AIは登場しない2003年の本ですが、主張が科学として扱われる条件という問いはそのまま重なります。


『ファスト&スロー(上)』

ダニエル・カーネマン著、村井章子訳(早川書房/2014年06月刊)

ノーベル経済学賞を受けた心理学者が、すばやく直感で判断する思考と、時間をかけて考える思考の二つの働きから、人がどのように判断を誤るかをまとめた本です。ハヤカワ文庫NF版の上巻です。

今回の記事で扱った、自分の考えに合う答えを選び取ってしまう傾向を、AIの性質ではなく人の判断の側から理解したい読者に向いています。


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せかはん
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国内外のニュースを「報道・海外の反応・背景解説」の三層で読み解く個人メディア『せかはん』運営者。2025年8月の開始から1年で300本以上を執筆し、noteフォロワーは2万人。特定の政党・組織に属さず、一次ソースの照合と左右両論の併記を編集の基本にしています。

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