今回の記事の重要ポイント(三点)
・GACKT氏が1月の動画で語った「NISAが正しいとは思わない」が9月末にXで拡散し、NISAは投資商品ではなく非課税制度だという指摘が広がった。
・NISAは投資の利益にかかる約20%の税をなくす制度で、利益が出たときだけ働き、損失は防がない。国は2024年に非課税の期間を無期限にし、2027年からは対象を子どもにも広げる。
・使うかどうかは各家庭が決めることで、こどもNISAは名義・引き出し・使う時期まで見て判断するもの。仕組みを知ったうえで使わない判断と、知らないまま怖がる・流される判断は別のものになる。
GACKT氏の「NISAが正しいとは思わない」が9か月後に拡散
歌手のGACKT氏がYouTube動画で語ったNISAへの持論が、9月26日夜からX上で拡散し、批判と擁護が入り混じる議論になっている。
発言の出所は、YouTubeチャンネル「DROPOUT ドロップアウトした冒険者たち」が2026年1月16日に公開した約18分のインタビュー動画で、2025年12月に出した著書の制作特別インタビューとして収録されたものだ。
GACKT氏はこの中で「ボクはNISAが正しいとはまったく思わないね」と述べ、NISAを利用する人に「利益が生まれる構造を教えて?」と問いかけたうえで、仕組みを理解せずに周囲に合わせて始める姿勢を「思考が止まっている」と批判した。投資は「そんなに甘くない」とも語っている。
9月26日にX利用者がこの部分を引用して投稿すると、27日にかけて投資系のアカウントを中心に反応が広がった。批判は、NISAが投資商品ではなく非課税制度である点を取り違えているという指摘と、GACKT氏が関与した暗号資産スピンドルの2018年の急落を持ち出すものの二方向に分かれた。
一方で「論点はそこではない」とする擁護もあり、SmartFLASHが27日に報じた。今回の再拡散について、GACKT氏本人からの新たな説明は28日午前の時点で確認されていない。
同じ週、SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券が、2027年1月に始まる「こどもNISA」の口座開設の申し込みや事前受付を10月1日から始めると案内している。こどもNISAは0〜17歳が対象で、年間60万円、総額600万円まで非課税で積み立てられる制度である。
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NISAが効くときと効かないとき
利益が出たときだけ働く箱
NISAは「少額投資非課税制度」の略で、国の税制です。株式や投資信託を売って利益が出たり、配当や分配金を受け取ったりすると、通常はその利益に約20%の税金がかかります。NISA口座で買った商品については、この税金がかかりません。
数字にすると違いは単純です。10万円の利益が出た場合、通常の口座なら約2万円が税金として引かれ、NISA口座なら10万円がそのまま残ります。10万円の損が出た場合は、どちらの口座でも10万円の損です。
利益を生むのは、箱の中に入れた商品の側です。たとえば全世界の株式に投資する投資信託なら、世界の企業の利益と株価の動きに、円と外貨の為替の動きと運用の手数料が加わって値動きになります。NISAはその結果に税金をかけない箱で、箱そのものが増えたり減ったりすることはありません。
だから相場が下がれば、NISA口座でも損は損です。しかもNISAの損失は、ほかの口座で出た利益と相殺することも、翌年以降に繰り越して税金を減らすこともできません。非課税は利益や配当が出たときだけ働き、損が出たときには働かない仕組みです。
| 状況 | NISA口座での扱い |
|---|---|
| 10万円の利益が出た | 約2万円の税金がかからない |
| 配当・分配金を受け取った | 原則として非課税 |
| 10万円値下がりした | 損失はそのまま |
| NISAで損失、ほかの口座で利益 | 相殺できない |
| 長く持ち続ける | 非課税の期間に期限はない |
(金融庁「NISAを知る」「NISA早わかりガイドブック」から作成)
2024年に無期限になり、2027年に子どもへ広がる
NISAは2014年に始まりました。当初は非課税の期間が5年に限られ、枠も小さい制度でしたが、2024年の改正で非課税期間が無期限になり、生涯で1,800万円まで投資できる今の形になりました。つみたて投資枠と成長投資枠の二本立てになった経緯は、別記事で扱っています。
政府の狙いは「貯蓄から投資へ」という20年来の方針にあります。2001年の骨太の方針が預貯金中心の優遇から投資優遇への切り替えを掲げ、2022年の資産所得倍増プランがNISAの口座数と買付額を5年で倍にする目標を置きました。2025年末の口座数は2,821万、累計の買付額は71兆円で、買付額は目標を前倒しで超えています。
| 制度 | 開始 | 年間の枠 | 非課税期間 | 引き出し |
|---|---|---|---|---|
| 一般NISA | 2014年 | 120万円 | 5年 | 自由 |
| ジュニアNISA | 2016年 | 80万円 | 5年 | 18歳まで原則不可 |
| つみたてNISA | 2018年 | 40万円 | 20年 | 自由 |
| 新NISA | 2024年 | 360万円(生涯1,800万円) | 無期限 | 自由 |
| こどもNISA | 2027年 | 60万円(総額600万円) | 無期限 | 中学に入る年の1月まで原則不可 |
(金融庁の資料から作成。一般・ジュニア・つみたてNISAは2023年末で新規投資を終了)
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こどもNISAは子ども名義の箱
こどもNISAは、2027年1月に始まる17歳以下向けの箱です。年間60万円、合計600万円まで、長期の積立・分散投資に向くとして国が選んだ投資信託を積み立てる形に限られます。個別の株は買えません。途中で売ること自体はできますが、売った代金を箱の外へ自由に取り出すことはできず、箱の中にとどまります。
18歳になる年には、同じ口座のまま手続きなしで大人のNISAに引き継がれ、非課税のまま続きます。金融庁の資料では、非課税で持てる上限が600万円から大人の1,800万円へ広がる形で描かれています。
大人のNISAとの一番の違いは、お金が子どもの名義になることです。親や祖父母が入れたお金は子どもへの贈与にあたると専門家は説明しており、贈与税がかからない年110万円の枠は、その子が同じ年に受け取ったほかの贈与と合わせて数えます。
引き出しにも縛りがあります。中学校に入る年の1月(多くの子は小学6年の1月)より前は、災害や病気など一定のやむを得ない事情を除き、原則として引き出せません。その1月からは、子どもの教育費や生活費に使う場合に、子ども本人の同意を示す書面を添えて引き出せます。この条件を外れて引き出すと口座は廃止され、それまでの利益に遡って課税されます。
設計の意図として金融庁が挙げるのは、大学進学のような成人後の出費に長い時間をかけて備えることです。2016年から2023年まであったジュニアNISAは18歳まで引き出せない制度で、金融庁は利用実績が乏しかったとして新規の受け入れを終えました。こどもNISAは、この引き出しの条件を緩めた形になっています。
家計の半分近くが預金という数字の読み方
国が箱を広げ続ける背景には、家計のお金の置き場所があります。日本銀行の統計では、日本の家計の金融資産は半分近くが現金・預金で、株式は2割に届きません。米国は預金が1割ほどで株式が4割を超え、ユーロ圏はその中間にあります。
| 日本 | 米国 | ユーロ圏 | |
|---|---|---|---|
| 現金・預金 | 47.2% | 10.7% | 31.1% |
| 株式等 | 16.7% | 43.4% | 25.5% |
| 投資信託 | 6.9% | 13.3% | 12.1% |
(日本銀行「資金循環の日米欧比較」2026年8月公表、2026年3月末時点。家計全体の合計に占める割合)
この数字は国全体を足し上げたものです。日銀も、統計上の家計には年金の受給権や個人事業のお金が含まれるため、1人当たりに割った金額は実感より大きく出ると説明しています。米国の株式比率が高く見える理由の一つは計上方法の違いです。それでも、日本の家計が預金を中心に資産を持ってきたことは、この比較から読み取れます。
物価が上がらない時代のほうが例外だった
預金には価格が動かず、すぐ使えるという利点があります。1990年代の終わりから2021年ごろまでの20年あまり、日本の物価はほとんど動かず、前の年より下がる年も珍しくありませんでした。置いておくだけで預金の価値が減らない、世界的に見ると珍しい時代が続いたことになります。
政府と日銀はこの状態をデフレとして問題視し、日銀は2013年に消費者物価の上昇率2%を目標に掲げました。物価が毎年少しずつ上がる状態を経済の通常の姿と見て、そこへ戻すという考え方です。
物価が年2%上がり続けると、同じ100万円で買える物は10年で2割近く減ります。預金の利息がそれを下回る限り、預金の実質的な価値はゆっくり目減りします。
国がNISAを広げてきた背景には、この転換があります。物価の上がらない時代に合理的だった「全部預金」は、緩やかに物価が上がる時代には目減りを受け入れる選択になります。
足元の上昇率は2%前後まで落ち着いていますが、2022年以降は毎年2%を超えて上がる状態が続いています。次の海外の反応で紹介する、11歳の子どもが「インフレなら自分の貯金の価値も下がるの?」と親に尋ねた話は、この変化を家庭の目線で言い当てたものです。
海外の反応
GACKT氏の発言そのものは英語圏では話題になっていません。ここでは、こどもNISAと子どもの投資をめぐるr/JapanFinanceのスレッドを2本紹介します。
r/JapanFinanceは、日本に住む外国人が家計・税金・投資について情報交換する英語の掲示板です。
1本目の投稿者は11歳の息子を持つ親です。親戚からのお祝いなどで10万円以上を貯めた息子が、インフレで自分の貯金の価値が下がっているのかと尋ね、急に投資をしたいと言い出したといいます。
返信は、子どもが投資に関心を持ったこと自体に好意的な声が多数派で、2027年1月に始まるこどもNISAを勧める声が複数並びました。11歳で投資をさせる意味を疑う少数意見もあり、支持を集めなかったものも含めて載せています。
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
来年から「こどもNISA」(未成年向けの非課税投資口座)が始まるから、タイミングとしてはちょうどいいね。
大賛成。1月に始まるこどもNISAの口座がぴったりだと思う。息子さんがアメリカ国籍じゃなければ、の話だけど。
その年でもう興味を持ってるなんて素晴らしい。自分もあの年頃にそういう関心があればよかった。
自分からのアドバイスは、シンプルにすること。世界中の株にまとめて投資する手数料の安い投資信託に入れて、あとは放っておく。これが大方の意見だろうね。
うちでは子どもたちに毎月1万円渡して、3つに分けさせてる。20年以上先のための長期の貯え(4,000円)、10年くらい先のための中期の貯え(3,000円)、残りは現金で、使ってもいいし好きに投資してもいい。
3つ目の枠では、電鉄会社とかディズニーとか、子どもが自分の好きな会社の株を選ぶことが多い。それはそれでいいと思ってる。
8歳くらいのとき、誕生日プレゼントにマイクロソフトの株が欲しいって親に頼んだことがある。そしたら「マイクロソフトはもうこれ以上大きくならない、お金の無駄だ」って言われた。1999年の話。
親御さんは正しかったんだよ。1999年4月にマイクロソフト株に1,000ドル投資していたら、それが1,000ドルの価値に戻るのは2014年3月、15年後になる(配当や株式分割を考慮しても)。しかもインフレを考えれば、2014年の1,000ドルは1999年の1,000ドルよりずっと価値が低い。
逆に2014年、君が23歳のときに1,000ドル分買っていれば、今では1万4,000ドル以上になってる。
8歳の頃の夢を持ち続けて、最初のちゃんとした仕事に就いたときにマイクロソフト株を買い始めていたらいいけど。タイミングとしては完璧だったはずだからね。
期待はほどほどにしておいたほうがいい。その程度の貯金は、彼が働く頃には給料の2週間分くらいにしかならない。子ども時代を犠牲にしてまでやらせることじゃないと思う。
(投稿主)
今の金額が大したことないのはもちろん分かってる。でも、貯めることと投資することの考え方は、息子にとって役に立つと思うんだ。この先もお祝いのお金はもらうだろうし、いずれアルバイトもするだろうしね。要は習慣づけのためだね。
貯めることは、ぜひ。すぐに使わずに待つことを教えるのはいい。でも、複利で増えていく仕組みや投資商品を理解できる年齢になる前に、わずかなお金を投資させても、そのお金を別のことに使った場合ほどの効果は本人にないと思う。
11歳の子が老後の心配をする必要もないし。
みんな「こどもNISA」って言うし、それはいいんだけど、11歳の子が本当に夢中になれるかは疑問なんだ。自分なら、NISAには親としてお金を入れてやる。それとは別に本人の10万円があるなら、興味のある会社、好きなものや毎日使っているものの会社の株を買わせてみる。
そうすれば、お金と会社がどう動いているかを説明できるし、最初の値下がりで売っちゃいけない、とかも教えられる。定番の低コスト投資信託「eMAXIS Slim」を買うより、そのほうが勉強になるし楽しいはず。
基本が分かってきたら、おなじみの全世界株式のインデックスファンド(市場全体の値動きに連動する投資信託)のほうが、なぜ大抵は安全な選択で、投資の大部分をそれにしたほうがいいのかを説明すればいい。
なんでみんな11歳の子を褒めてるのか分からない。11歳ならお金や投資のことなんか考えずに、勉強と外で遊ぶことに集中するべきだろ。
両方やっちゃいけない理由はないよ。
収入を得ることと、自分自身への投資の大切さを話すのがいちばんじゃないかな。個人の資産の大半は、運用益じゃなくて収入から生まれるものだから。
家の掃除や庭仕事みたいな小さな商売を始めてみて、スキルやビジネスの経験に投資する、という話をしてみてもいいかもしれない。ただ、学校の決まりに触れないようには気をつけて。日本の学校はそのあたりが結構厳しいことがあるから。
2本目は、同じ掲示板に2026年7月に投稿された相談です。子どものための貯金を子ども名義の預金に置いておくより、親のNISAで運用して、将来その一部を子どもに渡せばいいのではないか、という内容です。
投稿者と子どもはアメリカ国籍で、アメリカの税制の事情からこどもNISAを使いにくい立場にあります。
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
みんなも言ってるとおり、引っかかるのは贈与税。ただ、よほど余裕があるのでない限り、まず自分のために貯めて、子どもが必要になったときに助けるほうがいい。子どもは将来、年間110万円までなら税金なしで受け取れる。教育費を出してやるのも非課税だし。
年間110万円までなら税金なしであげられるし、学費として払うお金はそこに含まれない。
だから毎月いくら積み立てているか次第で、何年かに分けて渡しきれるかもしれない。逆に時間がかかりすぎて、贈与税を払うしかないという結果になるかもしれない。
「年間110万円までなら税金なしであげられる」
その言い方には注意したほうがいい。非課税になるのは、子どもが受け取る額の合計で、年間110万円まで。贈る人全員の分を合わせての話。
投稿者が上限の110万円をあげたうえで、祖父母が50万円くれたら、非課税の枠を超えてしまう。
そのやり方に落とし穴はない。むしろ親に会うたびに、飛行機の決まり文句「他の人を助ける前に、まずご自分の酸素マスクを着けてください」に従えって言ってるくらい。
「でもこれはおじいちゃんおばあちゃんが子どもにくれたお金だから」と別にしておきたがって、気持ちの問題で税の優遇をみすみす逃している親にしょっちゅう会う。
気持ちは分かるけど、18歳で子どもを家から追い出すつもりでもない限り、投資の判断としてはまずいね。
贈与税などは別にして、あなたの家計の事情も知らずに言うけど、いちばんの落とし穴は、自分の老後資金を手放すことになる点だろ。NISAを趣味でやっていて、死ぬまでお金に困らないなら、あげてもいいかもしれない。そうでないなら、人を助ける前に自分の将来を固めておくことだ。
知ったうえで各家庭が決めるために
国が税収を減らしてまで箱を広げる理由
国がNISAを広げてきた背景には、物価が上がる時代に備えて家計の安定した資産形成を促し、預金に偏る家計資産を投資へ向ける政策があります。非課税は税収を手放すことと同じで、それでも非課税の期間を無期限にし、子どもまで対象にしました。政府の構想では、預金に眠るお金が企業の成長資金に回り、その果実が家計に戻る。資産所得倍増プランはこれを「成長と分配の好循環」と呼びました。
構想どおりに動いた部分と、そうでない部分があります。累計の買付額は目標を前倒しで超えましたが、口座数は目標に届いていません。一方、新NISAで買われたお金の多くは全世界株や米国株の投資信託に向かい、国内企業への資金供給というより、家計による海外投資の受け皿になりました。個人にとって合理的な選択が、まとまると円売りの要因の一つになり得るという試算や指摘もあり、この点は別記事で扱っています。
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余裕のある家庭ほど使える、という批判の筋
こどもNISAへの批判の中心にあるのは、年60万円を子ども名義で積み立てられる家庭が限られる、という指摘です。政府自身の調査でも、投資をしない理由の1位は「余裕資金がないから」で、半数を超えます。非課税の恩恵は投資できる人にしか届かないので、制度を広げるほど、使える家庭と使えない家庭の差が次の世代に持ち越されます。
批判はほかにも二つあります。非課税は国が税収を手放す政策で、教育費や老後の不安への対応を市場での運用に寄せる形になること。そして、親のNISA枠を使い切っていない家庭が大半なのに、親名義より自由の利かない子ども名義の箱を新たに用意する必要があるのか、という点です。
財務省はこの批判を意識して、こどもNISAの枠を大人より小さくしたと説明しています。年60万円という上限は、格差の固定化につながらないよう配慮した結果だと広報誌に記しました。批判側からすれば、上限を下げても恩恵の向く先は変わりません。
推進側にも筋があります。投資に縁の薄い世帯でも、物価が預金の利息を上回れば預金で買える物は減っていきます。箱を用意しないことが公平だとも言い切れず、両方の筋が残ったまま制度は始まります。
使わない判断が合理的な家庭
制度を知ったうえで使わない、という判断が合理的な家庭は少なくありません。数年のうちに使う予定のあるお金は、相場が下がったときに待てないので、預金のほうが向いています。生活費の数か月分にあたる予備のお金も同じです。金利の高い借金があるなら、返すほうが確実な利回りになります。
こどもNISAには固有の事情も加わります。子ども名義にした時点で親の家計には戻せず、自由に使える予備費には向きません。判断の物差しは子どもの年齢そのものより、進学など使う予定までの期間と、そのとき相場が下がっていたら先延ばしできるかにあります。0歳から始めれば18年ありますが、11歳なら7年で、大人の老後資金より短い時間で結果を受け取ることになります。
18歳で相場が下がっていても、進学費に充てないなら売る必要はありません。同じ口座のまま大人のNISAに引き継がれるので、持ち続けて回復を待てます。その年に使う予定の家庭だけが、下がった値段で売ることになります。
親のNISA枠が余っている家庭なら、親名義で積み立てて後で渡す選択もあります。親名義なら家計に戻せる代わりに、渡すときに贈与の扱いを考えることになり、子ども名義なら持ち主も使い道も子どもに固定されます。どちらが向くかは、そのお金を家計の一部として持ちたいか、子どもの物として切り離したいかで分かれます。親自身の老後資金を先に固めるという順番にも、十分な理由があります。
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GACKT氏の問いは中身に向ければ正しい
GACKT氏が動画で示したのは、利益が生まれる仕組みを説明できないまま始める人への警告でした。制度の名前を知っていることと、何に投資しているかを理解していることは別で、この警告には筋があります。
制度の名前に国のお墨付きが感じられると、何に投資しているのか、手数料はいくらか、値下がりしたらどうするかを考えずに始める人が出ます。投資はそんなに甘くない、という言葉は、そういう人に向けたものとして読めば妥当です。
議論がすれ違った理由の一つは、その問いが制度と中身を分けないまま語られた点にあります。動画の中でGACKT氏はNISAに含まれる「主要株」や、NISAで何%の配当がつくのかを尋ねており、NISAを中身のある商品として扱っていました。
NISAは箱で、利益が生まれる理由は中に入れた投資信託や株式の側にあります。「NISAが正しいか」と問うと、税制の評価と中身の収益性が一つに混ざり、答えようがなくなります。
分けて考えれば、両方に答えがあります。税制としてのNISAには、損失を相殺できない、対象商品が限られるといった評価の対象になる点があります。中身の収益性は、世界の企業が利益を出し続けるかという、NISAとは別の問いです。GACKT氏の問いの価値は後者にあり、その答えは制度を使う人が自分で持つものです。
知ることと使うことは別
NISAのメリットを知っておくことと、NISAを使うことは、別々の判断です。今は投資に回す余裕がない家庭でも、証券会社や銀行の窓口で、あるいは子どもの進学や親の相続の場面で、いつかはこの箱を勧められます。そのとき「約20%の税をなくす選択肢」として自分の家計に当てはめて評価できるかどうかが、知っておく理由です。
仕組みを知ったうえで、うちは今は使わない、と決めるのも一つの判断です。仕組みを知らないまま、怖いから預金だけにする、みんなやっているから始める、と決めるのとでは、同じ結果でも中身が違います。
知っておく最低限は三つで足ります。非課税は利益が出たときだけ働くこと、損失は防がないこと、そして知ったうえで使わない選択があること。この三つがあれば、証券会社の勧誘にも、政府の推進にも、有名人の否定にも、自分の家計を物差しにして向き合えます。
箱を知って、中身は自分で決める
「うちに合うか」を決めるための知識
NISAのメリットを知ることは、NISAを始める約束ではありません。利益が出たときの税金をなくす選択肢を、自分の家計に使うかどうか判断できるようにする知識です。利益を生むのは中に入れた商品の側で、箱を知れば「何で儲かるのか」という問いは中身に向き、その問いには使う人が自分で答えることになります。GACKT氏の発言をめぐる議論は、この箱と中身を分けずに言葉がすれ違ったところから始まりました。
こどもNISAは、子どもの名前で長い時間をかけて積む箱で、向く家庭と向かない家庭がはっきり分かれます。年60万円を回せる余裕、使う予定までの期間と下がったときに待てるか、親名義との比較、親自身の老後資金との順番。どれも各家庭にしか答えの出ない問いです。
自分のお金のうち、当分使わない分がどれだけあり、その分をどこに置くと決めているか。この問いに答えを持っているかどうかで、箱を使うにせよ使わないにせよ、判断の中身は変わります。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
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関連書籍紹介
『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』
山崎元、水瀬ケンイチ著(朝日新聞出版/2022年03月刊)
経済評論家の山崎元氏と水瀬ケンイチ氏が、手数料の安いインデックスファンドを中心に、手間をかけずに長く続ける投資の考え方と具体的なやり方を示した朝日新書です。7年ぶりの全面改訂で、iDeCoやNISAを「有利なお金の置き場所」として使う方法にも触れ、2024年からの新NISAにも対応しています。
今回の記事で扱った「NISAは箱で、利益を生むのは中に入れる商品の側」という区別を、中身の選び方まで含めて確かめたい方に向きます。
『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』
田内学著(東洋経済新報社/2023年10月刊)
元ゴールドマン・サックスの著者が書いた小説仕立ての本で、中学生の主人公が大富豪の「ボス」との対話を通じて、お金そのものには価値がないこと、お金では解決できない問題があることを学んでいきます。所得や投資だけでなく、社会の中でお金が何をしているのかを物語で追える一冊です。
今回の記事で扱った「利益はどこから生まれるのか」という問いを、投資の損得より手前の社会の仕組みから考えたい方や、子どもとお金の話をしたい家庭に向きます。
参考リンク
- こどもNISA(未成年者向けつみたて投資枠)|金融庁 アクセスFSA 2026年2月号
- 令和8(2026)年度税制改正について 税制改正大綱における金融庁関係の主要項目|金融庁
- 2027年1月開始 「こどもNISA」の概要|大和総研
- NISAを知る|金融庁 NISA特設ウェブサイト
- NISA早わかりガイドブック(2023年7月)|金融庁
- 資金循環の日米欧比較(2026年8月31日)|日本銀行
- 2%の「物価安定の目標」|日本銀行
- ファイナンス 2026年4月号(令和8年度税制改正特集)|財務省
- 「こどもNISA」口座開設の事前受付を2026年10月1日より開始|SBI証券
- 「利益が生まれる構造を教えて」GACKT、NISAに投資する人を「思考停止」と疑問視も「スピンドルは?」かつての騒動がブーメランに|SmartFLASH


