米中「第二次大戦の同盟国」を米国が公式文書に記載 旧敵国条項をめぐり、日米関係で何が変わり何が変わっていないのか【海外の反応・解説】

習近平氏の国賓訪米で米中は第二次大戦の「同盟国」と公式文書に明記。日本が旧敵国条項の削除を求めた同じ週の出来事を、歴代大統領の前例と日米電話会談から読み、米国の対日姿勢の何が変わったかを整理します。

今回の記事の重要ポイント(三点)

・9月24日、習近平氏を迎えた歓迎式典でトランプ大統領が米中は第二次大戦の「同盟国」だったと述べ、米中双方の公式文書にも同じ趣旨が記された。

・中国との戦時協力は歴代の米大統領も口にしてきた言い方で、今回新しいのは公式文書に書かれたこと。同じ週に日本は国連で旧敵国条項の削除を求め、中国は「今も重要だ」と反論していた。

・米国が日本への姿勢を変えたことを示す材料はなく、翌日の電話で同盟も再確認された。ただ、日本が和解を語り、米中が戦時の協力を語った一週間の差は、文書に残った。


「同盟国」発言が米中の公式文書に残った

トランプ米大統領は現地時間9月24日朝、ホワイトハウスで中国の習近平国家主席を国賓として迎えた歓迎式典で、両国民の共通の利益の追求が「第二次大戦で我々を同盟国にした」と述べ、中国で戦った米義勇航空部隊「フライング・タイガース」を称えた。習氏は、中米は肩を並べてファシズムの侵略と戦い、中国人民はその歴史を忘れていないと応じた。

同日夜の晩さん会では、習氏が乾杯の挨拶で「日本軍国主義の侵略者」と日本を名指しし、血と火で鍛えられた友情と語った。

ホワイトハウスが25日付で公表した公式文書(ファクトシート)には、両首脳が米中は第二次大戦の同盟国として肩を並べて戦い勝利した歴史を振り返ったと記された。中国外務省が26日に発表した8項目の成果にも、同じ趣旨の一文が入った。共同声明ではなく、米中がそれぞれ公表した文書に同じ趣旨が並んだ形で、両文書とも日本と台湾には触れていない。

日本政府は25日、木原官房長官が「高い関心を持って注視し、米国と緊密に連携する」と述べ、高市早苗首相は記者団に「第三国間のやりとりなので逐一コメントはしない」としたうえで、日米は戦争を経て和解を果たし、強い絆で結ばれた同盟国だと語った。

首相はその3日前の22日(日本時間23日)、国連総会の演説で国連憲章の旧敵国条項の「早急な削除」を求めており、中国外務省は23日の記者会見でこの削除要求に対し、同条項は「今日なお重要な現実的意義を持つ」と反論していた。

26日夜、トランプ氏から高市首相に電話があり、約20分の会談でトランプ氏が米中首脳会談の内容を詳しく説明した。外務省によると、両首脳は中国をめぐる経済安全保障や安全保障の課題を中心に意見を交わし、「揺るぎない日米同盟」を改めて確認した。首相は会談後、日米は今や最も信頼し合える同盟国だとトランプ氏に伝えたと説明した。

日本時間出来事
9月23日高市首相が国連総会で旧敵国条項の早急な削除を求める(現地22日)。同日、中国外務省が「重要な現実的意義を持つ」と反論
9月24日夜ホワイトハウスの歓迎式典でトランプ氏が米中は第二次大戦の「同盟国」だったと発言。習氏が「肩を並べて戦った」と応じる
9月25日朝晩さん会で習氏が「日本軍国主義の侵略者」と名指し
9月25日首相「第三国間のやりとりなので逐一コメントしない」。ホワイトハウスが公式文書を公表(25日付)
9月26日中国外務省が8項目の成果を発表。夜、トランプ氏から首相に電話、日米同盟を再確認

(ホワイトハウス、中国外務省、首相官邸、外務省の発表から作成。2026年9月27日時点)


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旧敵国条項と、米大統領が語ってきた戦争の歴史

旧敵国条項は「古い」と認められたのに消えない

旧敵国条項は、国連憲章に残る古い規定です。第二次大戦で連合国の敵だった国には、安保理の許可がなくても周りの国が力で対処してよい、という内容です。条文に国名はありませんが、日本とドイツを指すものと読まれてきました。

1995年の国連総会は、この条項は「もう時代に合わない」と認め、削除の手続きを始める意思を決議しています。2005年の首脳会合でも、各国首脳が「敵国という言葉を憲章から消すことを決意する」と文書に書き、反対なしで採択されました。外務省によると、中国もこの二つに賛成しています。

それでも条文が残っているのは、国連憲章を変えるのがとても難しいからです。総会の3分の2の賛成に加え、安保理の常任理事国5か国すべてを含む加盟国の3分の2が国内手続きで承認しないと、条文は変わりません。常任理事国が1か国でも動かなければ、削除は決意のまま止まります。中国は去年11月と今年9月に、この条項を日本への批判に持ち出しました。日本政府は「もう効力のない条項」という立場です。


米大統領が「一緒に戦った」と語るのは初めてではない

米国の大統領が中国の首脳を前に「第二次大戦で一緒に戦った」と語るのは、これまでも何度もありました。クリントン氏は「同盟」、ブッシュ氏は「肩を並べて日本と戦った」、オバマ氏は「共に立った」とそれぞれ語っています。トランプ氏自身も、この5月に北京で「第二次大戦の同盟国として」と言っています。

一方で、こうした言葉が首脳会談の公式文書に書かれた例は、今回調べた範囲では見当たりません。1997年、2009年、2011年の共同声明にも、2015年や今年5月のホワイトハウスの文書にもありません。調べきれていない文書は残りますが、「同盟国」と公式文書に書き、中国側の文書にも同じ一文が並んだのは、この範囲では今回だけです。

時期場面首脳の言葉公式文書への記載
1997年10月江沢民氏訪米(クリントン)「両国民の同盟」なし
2008年8月北京(ブッシュ)「肩を並べて戦った」首脳会談の文書ではない
2011年1月胡錦濤氏訪米(オバマ)「共に立った」なし
2015年9月習氏訪米(オバマ)村人が米飛行士を救った話なし
2026年5月北京(トランプ)「同盟国として」なし
2026年9月習氏訪米(トランプ)「同盟国にした」米中双方の文書に「同盟国」

(各政権の公文書アーカイブから作成。1998年の訪中時の文書と2000年代の一部の首脳会談は未確認)


当時の中国は中華民国、中露は史観をそろえてきた

第二次大戦で米国と一緒に戦った中国は、蒋介石が率いる中華民国の政府です。1943年のカイロ会談にはルーズベルト、チャーチルと並んで蒋介石が出席しています。

今の中華人民共和国ができたのは1949年で、北京は自分たちを「中国という国を引き継いだ政府」と位置づけています。

北京が外交の場で「中国」を代表するのは、1971年の国連総会決議2758で中国の席が中華民国から移り、米国も1979年に北京を唯一の合法な政府と認めた積み重ねの結果です。

一方で、戦争のころの台湾は日本が統治していました。戦争のころの政府、今その国を代表する政府、今の台湾に住む人たちの意識は、それぞれ別のものです。

この戦争の歴史を国の記念日に組み込む動きは、近年ロシアと中国で進んでいます。ロシアは9月3日を第二次大戦が終わった日と定め、2023年にはその名前に「軍国主義日本に対する勝利」を加えました。2025年9月3日の北京の軍事パレードには、プーチン氏と金正恩氏が並んでいます。習氏が晩さん会で使った「日本軍国主義の侵略者」は、この見方の中で定着した言い回しです。


海外の反応

今回紹介するのは、日本関連の話題を扱う英語圏の掲示板「r/japan」のスレッドです。時事通信の英語配信記事「日本、トランプ氏の『中国は第二次大戦の同盟国』発言に戸惑い」をもとに立てられ、400件を超えるコメントが付きました。

投稿は日米首脳の電話会談の約7時間前で、議論は会談の前後にまたがって続いています。

序盤は「史実として正しいのに何に戸惑うのか」という書き込みが目立ち、そこから「当時の中国は今の中国なのか」「戸惑っているのは歴史ではなく、なぜ今それを言ったかだ」という応酬に広がりました。

国民党と共産党のどちらが戦ったかをめぐる長い議論も続きましたが、ここでは発言の時期と日米関係に関わるやり取りを中心に抜粋します。

以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。


歴史をちゃんと教えていれば、こんなに驚かなかったんじゃないか……

中国は連合国の主要4か国(米英ソ中の「ビッグ・フォー」)の一つだった……中華人民共和国という意味じゃないが、日本帝国と戦ううえで中国は同盟国だった。


それって台湾に移ったほうの中国のことだろ。


日本人として、かつてこの国と戦った「中国」は今の台湾であって、中華人民共和国ではないことはよく分かっている。

自分の国が過去に犯した罪は許されないものだからこそ、アメリカを代表するトランプが台湾をめぐる現実を知らず、その存在そのものを無視したことに衝撃を受けた。


台湾人として言わせてもらうと、かつて日本と戦った「中国」は今の台湾ではない。

台湾は1895年に清から日本へ割譲され、台湾の人たちは50年にわたって日本の植民地支配を経験した。戦後に中華民国がやって来たとき、最初は日本から解放してくれる存在だと思われたが、すぐに略奪とインフレを招く無能な統治者だと分かった。祖父母の世代には、中華民国の最初の統治は日本統治よりひどかったと言う人もいた。

1947年には、権利を求める台湾人の抗議を中華民国の軍が鎮圧し、数千人が殺された。今では二・二八事件(国民党政権による台湾住民の弾圧事件)と呼ばれている。その2年後、国共内戦に負けた国民党が台湾に逃れてきたが、移ってきた人たちは台湾の人口の15〜20%にすぎなかった。それでも国民党は、当時世界最長の戒厳令で支配を固めた。

台湾は80年代末から90年代初めに民主化し、今では住民の大多数が、日本と戦った中国の後継者だとは思っていない。


何に戸惑ってるんだか。高市首相や日本にとっては認めたくないことかもしれないが、事実として正しい発言だ(トランプにしては珍しく正しい)。中国もアメリカも、第二次大戦で日本と戦った同盟国だった。


歴史に戸惑ってるわけじゃないのは明らかだろ。問題は、習近平の最新の「敵国条項、日本軍国主義うんぬん」という語りに、なぜトランプが乗っかっているのかだ。しかもほんの数日前、ニューヨークの首脳会談(国連総会に合わせた日米の会談)では、中国の威圧に対して足並みをそろえる立場を示したばかりなのに。


トランプは、自分が思いついた突拍子もない案に習近平の支持が欲しいんだよ。イラン、天然ガス、AI、レアアース(先端産業に欠かせない希少金属)とかな。日本はそういう分野に何の影響も与えられる立場にない。


あの異様な歓迎ぶりを見れば、そうなのかもしれない。でも、だからといって日本の反応がおかしいことにはならない。


日本人が戸惑っているのは、そんな話を信じるほどお人よしだからだ。高市はアメリカが変わったことを認めないまま、アメリカとの連携に全部賭けている。

彼女はこの連携で日米がパートナーになれると思っているが、アメリカの考えは、日本を都合のいい駒にしておくという方に近い。


トランプの発言には何の問題もない。事実として正しい。今の都合で自分たちの歴史をなかったことにはできない。


ちゃんと話の中身を知ってから言ってくれ。問題は、ついこの前の24日(原文ママ。日米首脳会談は現地22日)に協力を深めると約束したばかりのトランプが、2026年の日本を「敵国」として描こうとする習近平の語りに、なぜ乗っかっているのかだ。


なんでここの連中は見出しが100%正確だと思い込むんだ?

高市首相は金曜日、東京で記者団に「第三国同士のやり取りの一言一句にコメントはしない」と述べた、とある。


日本がこれを読んでいるなら言っておく。お前たちは枢軸国側で、中国は連合国側だった。第二次大戦に負けたんだし、国連憲章の旧敵国条項(第二次大戦の敵国を対象にした規定)は、二度とあんな真似をさせないためにある。なくなることはない。


俺たちは何も学んでいないから、こういう語りを許して、次の拡張主義の独裁国家に手を貸そうとしているわけだ。


これは首相の政治生命に関わる問題だ。彼女の土台は日本の再軍備を進めることだった。日本の再軍備はいずれアメリカと戦うことを意味するから、トランプはその扉を閉じたんだ。

本人はそうじゃないふりができても、日本人も含めて周りはみんな、この意味をもう分かっている。


「アメリカ全体が日本を見捨てつつある」

それはさすがに飛躍しすぎで、そんなことを示すものは何一つない。今回の件だって、習近平が帰った途端に釣り合いの取れた対応がもう取られている。


トランプはそういうことを気にもしないし、考えもしないからだよ。アメリカが日本との安全保障同盟から抜けるわけでもあるまいし。


アメリカから見て際どい問題、たとえば南シナ海や台湾で中国に圧力をかけ返すときには、それが効いてくるんだよ。


中国に何の圧力をかけるって? ふわっとした言葉でか? その一方で中国は、台湾を愛してるだの平和を望んでるだのと言いまくってるのに、そっちは無視するのか。


上の立場からひどい発言が出てくるのはお互い様で、そういう場合には釣り合った対応が必要だ。実際に行動で対抗しなきゃいけなくなったとき、それまでの記録がものを言うんだよ。


同じ戦争を三か国が別の目的で使った週

米国は昔からの言い方を、今回は文書に残した

米国がなぜ今この言葉を使ったのか、その理由を示す公開資料はありません。分かるのは、歴代の政権が国賓を迎える場で使ってきた「一緒に戦った」という言い方を、トランプ氏が5月の北京に続いて繰り返し、今回はそれが文書にも残ったという流れです。

朝鮮戦争で敵として戦い、今は競争相手である米中にとって、気持ちよく共有できる歴史は1940年代に一緒に戦ったことと、1970年代に国交を結んだことくらいしかありません。

今回はその話が乾杯の挨拶で終わらず、公式文書に入りました。中国側の8項目にも同じ一文が並んでいますが、事前に話を合わせたのか、会談の場で一致したのかは、公開資料から分かりません。トランプ氏が交渉上の気配りとして選んだ可能性はありますが、見返りと結びついていたことを示す資料も見当たりません。軍事や経済で譲るのと違い、歴史の話は儀礼の中で使いやすい言葉だった、とは言えます。

文書はこの一文のすぐ後に、戦後は米軍が前に出て駐留してきたからインド太平洋は自由で開かれた場所であり続けた、と続けています。米国は自分を「戦争に勝った国」であり「戦後の秩序を支えてきた国」として描いています。この一文は米側の文書だけにあり、日本の名前はどちらの文書にもありません。


中国は「消す」と決めた条項を「重要」と言い換えた

中国は2005年に、旧敵国条項を消すという首脳の決意に加わりました。その中国が今年9月には、同じ条項を「ファシズムと軍国主義が再び脅威になるのを防ぐ重要な仕組み」と呼んでいます。20年のあいだに、条項は「消すべき古い規定」から「日本を批判する根拠」へと役割を変えました。

中国政府が挙げる理由は、日本の防衛力の強化と憲法改正の議論です。日本は軍国主義と手を切ることを前提に国連に入ったのだから、その前提が揺らぐなら条項は生きている、という理屈です。日本側の受け止めがどうであれ、中国側にはこの説明に沿った理由があります。

戦争に勝った側の歴史は、この対日批判の土台であると同時に、「今の国際秩序は勝者である自分たちが作った」という主張や、共産党の統治を抗日戦争の勝利に結びつける国内向けの物語にもつながり得ます。米国は日本を名指ししていませんが、習氏は式典で「中国人民はこの歴史を忘れていない」と述べ、晩さん会では「日本軍国主義の侵略者」と日本を名指ししました。米国の言葉を自分の物語に組み込める位置に、中国は立ちました。


日本は和解を語り、米中は戦時の協力を語った

米国が日本の国連演説を受けて「同盟国」という言葉を選んだ、という証拠は公開資料にありません。米中の発言や文書のどこにも、日本の演説や旧敵国条項は出てきません。旧敵国条項のやり取りは、米国がこの言葉を使った理由ではなく、日本から見て同じ週に並んだ出来事です。日本政府の中でも、トランプ流の演出であり大げさに読む必要はない、という受け止めが多いと報じられています。

それでも、日本側の居心地の悪さには理由があります。同じ週に、日本は「敵国」という言葉を憲章から消してほしいと訴え、中国はその言葉は今も必要だと答え、米国は中国と「同盟国」として戦った歴史を公式文書に残しました。首相が9月25日に「戦争はあったが、しっかりと和解を果たした」と述べたのは、2016年にオバマ氏が広島を、安倍氏が真珠湾を訪れたときに日米が共有した物語の言い回しです。

今回の文書が示したのは、日米同盟が何を含み、何を含まないかです。同盟は防衛の約束と話し合いの仕組みを含みます。米国が第三国に向けて語る歴史の言葉は、その外側にあります。2016年に広島で和解を語った同じ米国が、2026年には北京の首脳と「同盟国」の歴史を確認する。この両方が同時に成り立つのが、同盟を持つ国の現実です。


何が変わり、何が続いているのか

日本国内の受け止めは、大きく四つに分かれています。「史実として正しく、珍しいことでもない」と「外交儀礼のリップサービス」は、発言そのものの性質を見た見方です。

「象徴としての意味がある」と警戒する見方は、口頭の挨拶が文書に格上げされ、中国の主張に米国の公式な言葉が添えられた形になった、という言葉の効き方を見ています。「文書の言葉より制度と政策の行動を見よう」という見方は、会談翌日の電話会談や日米韓外相会合で確認した日本防衛への「揺るぎない約束」が続いていることを見ています。

今の材料で言えるのは、対日政策が変わったことは公開資料からは確認できず、言葉の効き方には変化があった、という組み合わせです。電話会談は同盟が続いていることを示す材料で、歴史の言葉の埋め合わせとして行われたのかは、日本側の発表からも分かりません。

変わったかどうかを判定する材料は、これから出てきます。台湾向けの武器売却の承認や、旧敵国条項の削除への米国の対応がそれで、9月末の時点ではどちらもまだ新しい発表がありません。

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次に見る場所は、制度と政策への米国の対応

日本政府は今回、米中の一言一句に抗議するのではなく、首脳同士で今の同盟関係を確認する対応を取りました。首相は「逐一コメントしない」と述べ、電話会談では「最も信頼し合える同盟国」とトランプ氏に伝えたと説明しています。米国には中国やロシアと歴史認識で争う動機が薄く、歴史の言葉に抗議しても同盟国が第三国との儀礼に口を挟む形になる、という見方がこの対応の背景にあります。

今後、米国の対日姿勢を測る材料は、歴史をめぐる発言の外側にあります。旧敵国条項の削除は、憲章を変える手続きを進めるかどうかで米国の態度がはっきり表れる案件です。2005年の決意には米国も加わっています。

日本が総会で手続きを始めようと呼びかけたとき、米国が賛成に回るのか黙っているのかは、歴史の言葉より重い判断材料になります。条文が実際に消える見込みは当面ありませんが、同盟国の態度はその手前で分かります。

効力のない条項を求め続ける意味を疑う見方もあります。中国が持ち出すたびに反論すれば足りる、という考え方です。一方で、憲章に「敵国」の語が残る限り中国はそれを制度の裏付けとして使い続ける、という見方もあります。どちらを取るにしても、台湾や安全保障の具体的な政策とあわせて、米国の対応を見る場所はそこにあります。


歴史の言葉と同盟の政策を分けて読む

米国は相手ごとに違う歴史を語り、政策は別に動く

トランプ氏の「同盟国」発言は、歴代の米大統領が国賓を迎える場で繰り返してきた言い方の繰り返しです。今回新しいのは、その言葉が米中双方の公式文書に残ったことで、なぜそうしたのかは公開資料から分かりません。米国が日本への政策を変えたことを示す材料はなく、翌日の電話会談で同盟は再確認されました。

それでも同じ一週間に、日本は憲章から「敵国」を消してほしいと訴え、中国はその言葉は今も必要だと答え、米国は中国と「同盟国」だった歴史を公式文書に残しました。米国は2016年には日本と和解の歴史を語り、2026年には中国と戦時の協力の歴史を語っています。相手ごとに違う歴史を同時に語るのが米国の外交で、同盟の政策はその言葉とは別の場所で決まります。

問われるのは、米中が関係を調整していく中で、日本に関わる案件が具体的にどう扱われるかです。旧敵国条項の削除に米国がどう応じるか、台湾向けの武器売却がどう決まるかは、歴史の言葉より確かな答えを持っています。米中の言葉に一喜一憂するより、その答えが出る場所を見ていく方が、同盟の現在地は正確に分かります。

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。


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『「歴史認識」とは何か 対立の構図を超えて』

大沼保昭著、江川紹子聞き手(中央公論新社/2015年7月刊)

日本と中国・韓国のあいだで、過去をめぐる受け止め方がなぜ食い違うのか、そもそも一致させることはできるのかを、国際法学者の大沼保昭氏がジャーナリストの江川紹子氏の問いに答える形で語った中公新書です。韓国併合や満洲事変から東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題まで、具体的な出来事に沿って「歴史的な事実が歴史認識の問題に変わる」経緯をたどります。

今回の記事で扱った「同じ戦争の歴史が、日本・米国・中国でそれぞれ別の目的で語られる」という構図を、日本の戦後処理の積み重ねから落ち着いて考えたい方に向きます。


『国連の政治力学 日本はどこにいるのか』

北岡伸一著(中央公論新社/2007年5月刊)

国連大使として国連代表部で2年半を過ごした著者が、国連の意思決定が実際にどう動くのか、米国の存在感の中で日本がどこに立っているのかを描いた中公新書です。安保理改革と日本の常任理事国入りをめぐる交渉の難しさにも紙幅を割いています。

今回の記事で扱った「削除が決まったはずの旧敵国条項が、憲章を変える手続きの重さで残り続ける」という事情の背景を、国連の現場の力学から知りたい方に向きます。


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国内外のニュースを「報道・海外の反応・背景解説」の三層で読み解く個人メディア『せかはん』運営者。2025年8月の開始から1年で300本以上を執筆し、noteフォロワーは2万人。特定の政党・組織に属さず、一次ソースの照合と左右両論の併記を編集の基本にしています。

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