今回の記事の重要ポイント(三点)
・民主党が上下両院を制した後、ナスダックは5日に5.52%急落し、6日の日本株は全業種が下げた。
・市場は選挙前から、民主党が勝てば電気料金や住民の反発を背景にデータセンター規制が進むと警戒していた。
・6日に報じられた民主党の法案計画は家計とAIの安全を守る狙いで、市場は投資の回収と建設の速さへの影響をみている。
米国でAI関連株が急落 日本株も6日に全面安
米国の株式市場は11月5日、AI関連株を中心に大きく下げた。ナスダック総合指数は5.52%安の24,315.00で引け、19か月ぶりの大きな下げとなった。S&P500は4.36%安、ダウ工業株30種平均は3.44%安だった。ロイターは、AI規制への懸念を下げの主な理由に挙げた。
前日の4日は、民主党が上下両院の多数派を奪還した結果を受けて、ダウが1,500ドルを超えて上昇していた。
6日の東京株式市場は全面安となった。日経平均株価は3,643円13銭安(5.96%安)の57,434円77銭で取引を終え、下げ幅は歴代3番目の大きさだった。TOPIX(東証株価指数)も5.90%安で、東証の全33業種が下げた。韓国総合株価指数は6.02%安、台湾の加権指数は4.51%安で引けた。
米国の6日の取引では、ナスダックが1.1%高、S&P500が0.3%高で引け、ダウは0.5%安と続落した。
ロイターは6日、民主党が来年1月に連邦議会の主導権を握った後、データセンターに伴う電気料金の上昇から消費者を守る法案、高度なAIを外部の専門家が試験する法案、AIが害を与えた場合の企業の責任を明確にする法案を出す計画だと、議員や議会関係者の話として報じた。
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AIデータセンターに積み重なっていた不安
設備は先に建て、稼ぐのは後になる
AIの計算はデータセンターに並べた大量の半導体で行われます。建物と設備の代金は先に払い、そこから得る収入は利用契約に沿って何年もかけて入ってきます。米国の大手IT企業はこの投資を年々増やしており、アルファベットだけでも今年の設備投資の見通しは約2,000億ドルにのぼります。
投資が大きいほど、株式市場は「いつ、どれだけ回収できるのか」を厳しく見ます。とくに借入で設備を建てる新興のAIクラウド企業は、貸し手の姿勢や金利の影響を受けやすい立場です。10月中旬には、その代表格のコアウィーブの株と社債が急落し、AI・半導体株全体に売りが広がりました。
10月下旬の決算でも、不安が表に出ました。アルファベットはAI設備への支出で手元に残る現金(フリーキャッシュフロー)が大きなマイナスになり、10月29日に株価が上場来最大の13%下落となりました。マイクロソフトは、他社から受け取る予定だったデータセンターの容量の引き渡しが遅れ、設備投資の時期がずれたと説明しています。
選挙の前から、「投資に見合う現金を生んでいるか」と「計画どおりに建てられるか」の二つが株価の材料になっていました。日本では、アドバンテスト(半導体の検査装置)、東京エレクトロン(製造装置)、キオクシア(データを保存する記憶用半導体)、フジクラなどの電線各社がAI向けの需要で大きく値上がりしてきたため、米国の投資が鈍るという見方が出ると売りが出やすい立場です。
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電気料金と住民の同意が建設の速さを決める
データセンターは大量の電気を使うため、半導体をそろえても、送電網につないで電気を引けなければ動きません。米国では、発電所や蓄電設備が送電網への接続を申請してから運転を始めるまで、中央値で5年を超えると報じられています。
建てる場所の住民の受け止めも厳しくなっています。電気料金の値上がり、水の使用、騒音への反発から、計画が町の段階で止まったり、開発業者が手を引いたりする例が出ています。データセンターは、知事選や電気料金を決める委員の選挙でも争点になっていました。
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選挙で決まったことと、州や地方の動き
11月3日の中間選挙では、民主党が連邦議会の上下両院で多数派を得ました。同じ日には州知事選や地方の住民投票もあり、建設の許可や送電網への接続を主に決める州や自治体にとっては、こちらのほうが個々の計画に近い選挙です。
10州で41件あったデータセンター関連の住民投票は、ノースダコタ州の1件を除いて開発に慎重な結果になったとCNBCが集計しています。設問は全面禁止や一時停止から用途地域の変更までさまざまで、拘束力のないものも含まれます。
テキサスでは、州議会が住民を守る法律を作るまで新たな承認を止めると表明していた民主党のジーナ・イノホサ氏が知事選で勝ちました。就任は2027年1月です。共和党の現職アボット知事も9月、送電網の監査が終わるまでデータセンターの許可を止めるよう州の環境当局に指示しており、二つの停止が切れ目なく続くかは決まっていません。
民主党が来年の議会で進めようとしていること
ニュースで触れた三つの法案は、共和党が主導する今の議会とは大きく違う方針です。今の議会はAIの開発を後押しすることを重視し、AIの一部の側面を制限する法律には消極的でした。民主党は、データセンターの費用が家計の電気料金に回らないようにすることと、AIの安全性や被害の責任をはっきりさせることを狙っています。
上院の院内総務に就く見通しのシューマー議員も5日、エネルギー費用の上昇から消費者を守ることを来年の優先課題の一つに挙げました。
背景には有権者の声があります。10月のロイターの世論調査では、米国の有権者の多くが、政権と議会はAIのリスクを十分に深刻に受け止めていないと答え、新しい規制を求めていました。下院科学委員会の委員長をめざすロフグレン議員は、イノベーションを育てながら責任あるAIの規制をつくると述べています。
委員会の主導権を握れば、法案が成立しなくても、公聴会を開いて企業の経営者に証言を求めることができます。民主党の下院議員は10月、OpenAIやAnthropic、グーグルなどに安全対策の報告を求めていました。
報じられたのは来年の議会に向けた計画で、法案はまだ提出されていません。新しい議会は1月3日に始まります。トランプ大統領はAIに義務的なルールを設けることに否定的で、大統領が拒否権を使えば、覆すには上下両院それぞれで3分の2の賛成が必要です。
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海外の反応
ここで紹介するのは、米国の株の掲示板で交わされた実際の議論です。中心は、米国のAI関連株が急落した5日の r/stocks のスレッドで、あわせて前日4日に住民投票の結果を話題にした r/StockMarket のスレッドの一部を紹介します。いずれも6日の米国市場の取引より前の議論です。
5日の昼前、r/stocks に「みんなAIの話ばかりだけど、今日は全部が崖から落ちている。何が起きているのか」という投稿が立ちました。投稿者は、見ている業種がどれも5〜20%下がっていて、資金がどこへ流れているのか分からないと書いています。
選挙の結果を理由にした売りは過剰反応だという声と、もともと割高だった、AI投資が鈍れば景気にも響くという声がぶつかり、700件近いコメントが付いています。
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
不合理なのは、メモリ不足で暴騰した相場のほうだよ。全部、利益の出ていない業界をあおるためだった。調整は必要だったし、遅すぎたくらいだ。
データセンターにNIMBY(自分の近所にだけは来てほしくないという反対)が起きてる。
3年前、うちの郡はアップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなんかにデータセンターを建ててほしくて、さんざんご機嫌を取っていた。それが突然、データセンターが悪者になった。
「突然」じゃない。かなり自然な流れだよ。こんな巨大な施設を見たことも、騒音や水・空気の問題を経験したこともなかったんだから。それに、電気代が2割上がったのも、ほとんどがAIのデータセンターのせいだと今は分かっている。建てたいなら建てればいい。でもその費用を1セントたりともこっちに払わせるな。
(「データセンターにNIMBYが起きてる」というコメントへの返信)
NIMBYの問題ですらないよ。Anthropic(米国のAI企業)の財務の開示内容がよくない。ほかの大手AI企業の多くも同じだ。市場の取り合いのために値下げ競争をしているように見える。データセンター不況が来たら市場は大きく打撃を受ける。
大したことじゃない。
ナスダックは最高値から13%くらい下がっただけ。10%の下落は平均するとほぼ毎年起きている。
手元に現金があるなら、また買いの好機が来ただけだよ。
最高値から13%下がったら調整局面だよ。正気か? それこそ文字どおり大したことだ。こんな値動きに慣れているなんて、暗号資産のトレーダーだろ。
1日で5%下がるなんて、めったにない。
AIへの支出は、GDPの伸びの25〜50%くらいを占めていた。個人消費は強かったけど、それは上げ相場で資産が増えた効果に支えられていて、その相場を支えていたのがAIとハイテク株だった。AIへの支出が鈍る、あるいは鈍ると予想されると、AI投資が減るのと、ハイテク株の暴落で市場全体が下がるのとで二重に効く。資産が減って消費も減り、悪循環に入る。
まさにそれ。AIへの支出が止まった場合に本当の景気後退が来る確率を、市場が高く見積もり始めたのかもしれない。
金融で働いている者として言うと、みんな何が起きているのかまったく分かっていないと思う。
(中略)
もしAIを禁止したり止めたりする法律が通れば、信用収縮(貸し渋りで資金が回らなくなること)に直面しかねない。AIの設備の建設には借入と出資で巨額のお金が入っている。元になる事業が止まったり、失敗したり、遅れたりすれば、金融全体の問題になる。
(中略)
銀行が貸せなくなれば資金が干上がり、経済は大きく減速する。(中略)ただしこれは全部、AIと設備の建設を止めようとする大きな動きがある、という前提での話だけどね。
大統領はAIを禁止したり止めたりする法律を絶対に通さないよ。民主党には拒否権を覆すだけの票もない。
過剰反応だ。
(「どの業種も下がっている」という元の投稿への返信)
AI株は、コストコ(会員制の大型スーパー)みたいな銘柄よりずっと大きく下げている。
そうそう。AI中心ではないハイテクの例としてアップルを見れば、エヌビディアほどには全然下がっていない。
その前日、選挙の結果が出た4日には、別の米国株の掲示板 r/StockMarket に「米国人はデータセンターに圧倒的に反対票を投じた」という記事が共有され、住民投票の結果が話題になっていました。
結果をどう読むかで意見が分かれ、電気料金への不満や、反トランプの票ではないかという見方が出ています。住民投票は計画が持ち込まれた自治体で行われたもので、全米の世論を測ったものではありません。コメント中の数字は投稿者の主張です。
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
主に反対したのは電気料金の倍増と、データセンターがあらゆる段階の行政で生んできた癒着だよ。
そう。持続可能なデータセンターに反対している人なんていない。反対しているのは、裏で取引する政治家のせいで地元の水と電力会社が食い物にされることなんだ。
何十億ドルも持っている企業が建てる費用を、こっちが肩代わりしたくない。
Ballotpedia(米国の選挙情報サイト)を見てきた。自分たちの自治体での建設に反対票を投じたのは、50ほどの個別の市だった。
「圧倒的」にはほど遠い。ひどく大げさな記事だ。みんながノーを突きつけたのはトランプと戦争と関税、NATOとウクライナを遠ざけたことなんかだよ。
それに、すでにデータセンターの一時停止をしている自治体(約400)を足せば、それなりの数になる。データセンターが理由で当選・落選した候補も入っていない。
テキサス州知事選は、データセンターへの姿勢(新知事は当面、新しいデータセンターの一時停止を予定している)と移民政策の両方で決まったと見られている。
(中略)
特に農村部では、データセンターは議席がひっくり返った大きな理由の2つか3つのうちの1つになっている。
警戒されていた規制の現実味と、株価に表れた順序
選挙前の警戒が、大勝で現実味を帯びた
民主党が上下両院で多数派を取るかどうかは、選挙の前からAI投資の焦点でした。ロイターは10月22日、市場関係者が両院での民主党の勝利を、選挙の結果のうちAI関連でもっとも大きなリスクとみていると報じています。データセンターの電気料金や環境への負担に住民の反発が強まり、建設の制限を支持する人は民主党の支持層に多かったためです。
同じ分析でアナリストは、建設を大きく止める法律が成立する見込みは低いともみていました。トランプ大統領が拒否権で止める可能性が高く、見込まれていたのは公聴会や調査が増えることでした。せかはんの10月の記事でも、投資家が知事選や電気料金を左右する委員の選挙まで注視していることに触れています。
開票が進んだ4日、ロイターは、データセンターに反対する人々が民主党の大勝の最大の勝者の一つだと報じ、投資家は規制が強まるとみていると伝えました。5日のナスダックの急落は、選挙前から注視されていた方向が、大勝で現実味を帯びたと市場が受け止めた形です。
民主党の具体的な計画が報じられたのは、その後の6日です。ロイターの記事は、転載先の表示で米東部時間6日午前6時5分(日本時間同日午後8時5分)に出ており、東京の6日の取引が終わった後、米国の6日の取引が始まる前にあたります。5日の米国の下げと東京の6日の全面安は、この報道より前の値動きで、計画の報道は、市場が警戒していた方向を民主党自身が示したものといえます。
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開票中の4日と翌5日、値動きは銘柄ごとに分かれた
東京の取引は、同じ日付のニューヨークの取引より先に終わります。米国で開票が進んでいた日本の4日、日経平均は893円下げ、半導体株と電線株が売られました。同じ日の報道は、年内の追加利上げへの警戒やアップルの決算への失望も挙げており、10月下旬からの下げの延長に開票の途中経過が加わった形です。
米国の4日は、アマゾンやマイクロソフト、アルファベットが大きく上がる一方、コアウィーブは約10%下げました。資産運用会社の担当者は、選挙結果が市場の不確実性を取り除いたと説明し、米証券会社のベアードは、選挙結果をネオクラウド(AI向けの計算能力を貸す新興企業)への「心理面の逆風」と表現しています。
自前の資金で設備を建てられる大手と、借入で建てて大手に貸す企業とでは、建設が遅れたときの痛み方が違います。この日の値動きはその見方と合っていますが、各社には決算や財務の事情もあり、原因を一つに決めることはできません。
日本の5日は、前日の米国で半導体株指数が3%下げた流れを受けて日経平均が1,110円下げましたが、TOPIXは1.16%上がりました。日経平均への影響が大きいアドバンテストや東京エレクトロンに売りが集中し、市場の多くの銘柄は上がったためです。
5日、売りは市場全体へ広がった
5日には大手のハイテク株も含めて全面安になり、フィラデルフィア半導体株指数は12%超下げました。ロイターがAI規制への懸念を主な理由に挙げた一方、AP通信は借入コストの上昇でデータセンターの建設が鈍るという心配と、AI株は上がりすぎているという見方を伝えています。
同じ日には、マイクロソフトがネオクラウド各社のデータセンター案件の監督を強め、リスクがあると見た案件から手を引いているとブルームバーグが報じました。10月下旬からの「計画どおりに建てられるか」という不安が、具体的な案件の話になった形です。半導体大手クアルコムの決算が予想に届かず、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官が先々の利上げの可能性に触れたことも重なりました。
AI以外の銘柄まで売られた背景には、市場の仕組みの側の動きもあります。アナリストは、前日に大きく上がった分と、買いが集中していたAI関連の持ち高を手じまう売りが多かったとみています。株価の急落に備える保険にあたるプットオプションの保険料は、ふだんの約2倍に上がりました。野村は、レバレッジ型ETF(上場投資信託)が引け際に約470億ドルの株を売ると見込んでいましたが、これは見込みの数字です。
どの材料がどれだけ効いたのかは、報道からは分けきれません。規制への懸念は、回収と建設への不安や持ち高の偏りと重なって働いた可能性があります。
6日の東京とアジアは、市場ごとに下げ幅が分かれた
6日の東京は業種を問わず売られ、日経半導体株指数の下落率(5.94%)もTOPIX(5.90%)とほぼ同じでした。5日は特定の銘柄に売りが集中し、6日は持ち高を全体に減らす売りが広がった形です。
それでも同じ半導体関連の中で、キオクシアホールディングスは8.72%安の8,511円、東京エレクトロンは5.60%安、アドバンテストは4.99%安、ディスコは1.42%安と、下げ幅は開いています。全面安は、すべての企業で業績の見通しが同じように悪くなったことを示すとは限りません。
アジアでも下げの大きさは市場によって違いました。韓国は取引開始直後に8%を超えて下げて売買が20分間止まり、台湾も大きく下げました。一方、豪州のS&P/ASX200は約0.5%安で引け、中国本土と香港の下げも、日本時間の昼の時点で1%以下でした。
日本・韓国・台湾は、AI向けの半導体や製造装置の企業が株価指数の中で大きな比重を占める市場です。比重が大きい市場ほど下げが大きかった形ですが、各市場には為替や金利、個別の材料もあり、この一つの理由だけで下げ幅の違いを説明することはできません。
政策の狙いと、市場がみる回収と建設の速さ
民主党の側から見れば、データセンターの費用の分担とAIの安全性は、電気料金を払う住民や、AIを使う人の暮らしを守るための政策です。電気や水の設備にかかる費用を、使う事業者に負担させるべきだという考え方もあります。市場や企業の側から見ると、同じ政策が、巨額の設備投資を予定どおりに回収できるかと、建設をどれだけの速さで進められるかに関わってきます。
ロイターは、連邦の規制が新しいAIの公開を遅らせたり、製品の動き方を変えさせたりすれば、業界の利益を損ないうると伝えています。ゴールドマン・サックスは、州や地方での民主党の勝利が建設計画の一時停止につながり、米国で予定されたデータセンターの容量の拡大の約45%に影響しうる一方、その期間は短いとみています。
HSBCのアナリストは、全面的な停止ではなく監督の強化にとどまる可能性や、建設がテキサスから他の州へ移る可能性を挙げています。BNYウェルスのアナリストは選挙前、政策の不透明さはAI投資の流れを崩すほどではないものの、建設の時期と費用を乱しうると述べていました。業界団体は、データセンターが雇用と税収をもたらすと訴えています。
野村のアナリストは、2027年に動き始めるデータセンターの多くはすでに建設中で、許認可の遅れや規制の不確かさの影響を受けやすいのは2028年以降に計画された分だと分析しています。この見方に立てば、今回の値動きには、数年先の供給を先回りして見積もった部分が含まれている可能性があります。
規制の決まり方は、連邦・州・自治体で道筋が違います。連邦の法律には大統領の拒否権が及びますが、許認可や用途地域を決めるのは主に州と自治体です。一律の停止は建設の遅れと資金の負担を大きくし、費用の負担や情報の公開を求める規制なら、建設を続けながら住民の負担を減らす余地が残ります。
政策の狙いと、それが実際にもたらす効果は別の問題です。どの法案が出て、どこまで成立するか、電気料金や建設の速さ、AIの安全性が実際にどう変わるかは、まだ分かりません。連邦議会選と州や地方の選挙のどれが、どれだけ株価に効いたのかも、値動きからは分けられません。
米国6日の小幅高は下げの一部にとどまる
米国の6日は、ナスダックが24,579.42、S&P500が7,376.86で引け、戻ったのは前日の大きな下げの一部でした。ダウは51,285.73と続落し、AP通信によるとS&P500の構成銘柄では値下がりが値上がりを上回っています。S&P500は週間で2.7%下げました。
銘柄ごとの戻り方も分かれました。6日の終値と前日比、選挙の日(3日)の終値との比較は次のとおりです。
| 銘柄 | 事業 | 6日の終値(前日比) | 3日の終値との比較 |
|---|---|---|---|
| エヌビディア | AI向け半導体 | 186.64ドル(2.78%高) | 約1割低い |
| マイクロン・テクノロジー | 記憶用半導体 | 690.00ドル(5.12%高) | 約2割低い |
| コアウィーブ | AI向けの計算能力を貸す | 46.40ドル(6.28%高) | ― |
| ウエスタンデジタル | データを保存する装置 | 263.78ドル(1.44%安) | 4分の1近く低い |
上がった銘柄があることも、続落した銘柄があることも、それだけでは先行きを示しません。一日の小幅な値上がりから、下げ止まったのかどうかや、規制や投資回収への懸念が薄れたかどうかは判断できません。報道の後に開いたこの日の取引に、民主党の計画がどう効いたのかも分かりません。
市場の仕組みで大きくなった売りが巻き戻されたり、規制の中身が具体的になって不透明感が薄れたりすれば、今回の下げの一部は一時的な売りだったと見られやすくなります。大手の設備投資や半導体の注文が実際に鈍る、金利が上がる、借入に頼るAIクラウド企業の資金繰りへの不安が強まる、といった材料が出れば、見通しそのものの変化として受け止められやすくなります。
6日に公表された10月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が16万5,000人増え、失業率は4.1%でほぼ変わらず、金利の見通しへの響き方が一つの材料になります。コアウィーブは10日(米国時間)に第3四半期決算の説明会を開く予定で、借入で設備を建てる企業の資金繰りを測る手がかりになります。
回収と建設への不安に選挙の結果が重なった
選挙前からの疑いに、民主党の大勝が加わった
米国のAI関連株の急落と6日の日本株の全面安は、選挙の結果だけで起きたものではありません。AIデータセンターには、投資を回収できるのか、計画どおりに建てられるのかという疑いが選挙の前から積み重なっていました。
そこに民主党の大勝が加わり、選挙前から警戒されていた規制が現実味を帯びたと市場は受け止めました。その後に報じられた民主党の計画は、家計の電気料金を守り、AIの安全性と被害の責任をはっきりさせることを狙うものです。市場が見ているのは、その政策が投資の回収と建設の速さにどう響くかです。
同じ政策が、住民の側からは暮らしを守る手段に、企業の側からは費用と遅れの要因に見えます。法案がどんな形で出て、どこまで成立し、建設を続けながら住民の負担を減らす形に落ち着くのかで、今回の下げの意味も変わってきます。
AIの需要が強いことと、それを支える設備を予定どおりに建てられることを分けて見る視点は、これからも株価を読む手がかりになります。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
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関連書籍紹介
『AIバブルの不都合な真実』
クロサカタツヤ著(日経BP/2025年09月刊)
生成AIへの投資の広がりを、2000年前後のドットコム・バブルやスマートフォンの普及期と重ねて検討し、バブルがはじけた後に何が残るのかを論じた本です。熱狂の中で何が幻想で、何が現実の変化なのかを見分ける視点を示しています。
今回の記事で扱った、AIの需要が強いことと、巨額の設備投資を予定どおり回収できることの違いを考える手がかりになります。AI関連株の値動きを、技術の将来性とは別の物差しで捉え直したい読者に向いています。
『バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓』
ウィリアム・クイン、ジョン・D・ターナー著、高遠裕子訳(日経BP/2023年03月刊)
18世紀のパリとロンドンから、1980年代の東京、1990年代のシリコンバレー、2000年代以降の中国まで、300年にわたる株価と資産価格の膨張と崩壊をたどった本です。バブルが生まれる条件を整理し、技術の普及を後押しした「良いバブル」とそうでないものを分けて論じています。
今回の記事で扱った、新しい材料が出るたびに市場が同じ疑いを値段として測り直す動きを、歴史の中に置いて考えられます。目先の値動きから一歩引いて、技術革新と株価の関係を長い時間で見たい読者に向いています。
参考リンク
- Nasdaq posts biggest daily drop in 19 months on fears of AI regulations|Reuters(Investing.com掲載)
- Democrats planning flood of AI bills when they take control of Congress|Reuters(StreetInsider掲載)
- Trump’s midterm drubbing demonstrates the power of data center opponents|Reuters(Investing.com掲載)
- Investors see risk from US midterms to AI trade as data center backlash builds|Reuters(Investing.com掲載)
- Markets today: A wipeout for AI stocks sends Wall Street reeling|AP(BNN Bloomberg掲載)
- 米国株式市場 11月6日の終値|AP通信
- 米国株式市場 11月6日の相場記事(引け後の更新版)|AP通信
- Employment Situation Summary(2026年10月)|米労働統計局
- エヌビディア(NVDA)の過去データ|Investing.com
- マイクロン・テクノロジー(MU)の過去データ|Investing.com
- コアウィーブ(CRWV)の過去データ|Investing.com
- ウエスタンデジタル(WDC)の過去データ|Investing.com
- Voters rebuff data centers in every ballot measure except one during the 2026 midterms|CNBC
- Hyperscalers and Apple surge after election results remove investor uncertainty|CNBC
- How the midterms could fuel the K-shaped AI trade|CNBC
- Phones ‘explode’ on Wall Street as ‘steamroller’ shows up for the AI trade|Reuters(Investing.com掲載)
- Microsoft tightens oversight of neocloud data center projects, Bloomberg News reports|Reuters(Investing.com掲載)
- Voters in ten states will vote on data center-related ballot measures November 3|Ballotpedia News
- Governor Abbott Directs TCEQ To Halt Data Center Permits|テキサス州知事室
- Gina Hinojosa won the governor’s race. What happens to Texas data centers now?|The Texas Tribune
- Alphabet tanks nearly 13% for worst day ever losing $500 billion value|CNBC
- 日経平均寄与度ランキング(大引け)~日経平均は大幅に4日続落|フィスコ(Investing.com掲載)
- 日経平均大引け 5日続落 3643円安の5万7434円|日本経済新聞
- キオクシアホールディングス(285A)の株価|SBI証券
- 市況解説(2026年11月6日 大引け)|岩井コスモ証券
- Seoul stocks crash for 2nd day on AI rout after U.S. midterms|聯合ニュース
- 台股跌1873.08點|中央社(經濟日報掲載)
- Asia stocks tumble as AI rout batters Japan, S. Korea|Investing.com
- Australia Stock Market Index|Trading Economics



まったく不合理だ。特にAIは。民主党がどうだろうと、データセンターは建ち続けるし、決算もここまでおおむね好調だ。原油も下がったし、そのうち落ち着く。そもそも民主党の議員だってこういう株を持っているし、バイデン政権のときはAIを問題にしていなかった。米国経済のいちばんの原動力はAIで、それはしばらく前からそうだ。前回半導体株が急落したのは2022年だけど、その後どうなったか見てみろよ。