今回の記事の重要ポイント(三点)
・国民民主党の玉木雄一郎代表は10月3日、全期間固定型「フラット35」の最頻金利が3.830%と現行制度で最高になったことを挙げ、住宅ローン減税に加えて国が利子を補う「利子補給型」の支援を提案した。
・固定金利は借りる時に決まり、変動金利は借りた後に日銀の政策金利につれて動くため、同じ「金利上昇」でも、これから借りる人と返済中の人では負担の増え方が違う。
・固定と変動のどちらが得かや次の利上げの時期は誰にも断定できず、確かめられるのは自分の契約の仕組み、残高、残期間と、家計が耐えられる返済額であり、備えはそこから始まる。
玉木氏がフラット35の金利を挙げて利子補給を提案
国民民主党の玉木雄一郎代表は10月3日、X(旧Twitter)に、住宅金融支援機構の全期間固定型住宅ローン「フラット35」の10月の最頻金利が3.830%となり、現行制度で過去最高の水準になったと投稿した。3,000万円を35年で借りた場合、金利が2.0%から3.83%に上がると毎月の返済額は約3万円、35年間の利息は約1,280万円増えるという試算を添えた。
現在の住宅ローン減税は適用金利にかかわらず年末残高の0.7%を税額から差し引く仕組みで、金利の高さは反映されないと指摘し、税額控除に加えて「利子補給」のような仕組みを年末の税制改正に向けて提案していくと述べた。
同日夜の補足投稿では、フラット35は全期間固定の住宅ローンであり、「変動金利が上がった分を国が補填すべき」という提案ではないと説明した。支援の対象、固定と変動の扱い、所得制限や補助率は制度設計として議論が必要だとした。
住宅金融支援機構によると、10月のフラット35(新機構団信付き、融資率9割以下、借入期間21〜35年)の最頻金利は3.830%で、9月の最低金利3.460%から0.37ポイント上がった。前年12月は1.97%だった。日銀は9月18日に政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げている。
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固定と変動で何が違うのか
固定は借りる時、変動は借りた後に決まる
全期間固定型は、借りる時に返済終了までの金利が決まります。フラット35はこの型の代表で、金利は取り扱う金融機関ごとに違い、各機関が毎月決めたものを住宅金融支援機構が集めて公表します。
契約した後は、市場の金利が動いても、借りる時に決まった金利と返済予定は変わりません。当初の金利引き下げが終わる時期など、契約時に予定された変更はあり得ます。
変動型は、借りた後も定期的に金利を見直します。多くの銀行で基準になるのは、銀行が優良企業に1年未満で貸す時の金利「短期プライムレート」で、日銀の政策金利につれて動きます。
9月の利上げを受けて、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は11月に短期プライムレートを0.25%引き上げると発表しました。
日銀は2024年3月のマイナス金利解除を含めて6回の引き上げで、政策金利を1.25%程度まで上げてきました。固定の金利が先に上がり、変動は後から追いかける形です。住宅金融支援機構の2026年1月の調査では、2025年4〜9月に借りた人の75%が変動型を選んでいます。
同じ3,000万円でも金利で返済額はこれだけ違う
3,000万円を35年で借りた場合の返済額を、金利だけ変えて並べます。元利均等返済(毎月の返済額が一定の方式)、ボーナス返済なし、金利は返済終了まで一定、手数料や保険料は含みません。
| 金利(年) | 毎月の返済額 | 35年間の利息の合計 |
|---|---|---|
| 1.3% | 88,945円 | 約736万円 |
| 2.0% | 99,379円 | 約1,174万円 |
| 3.0% | 115,455円 | 約1,849万円 |
| 3.83% | 129,791円 | 約2,451万円 |
(元利均等返済の計算式による試算。3.83%は2026年10月のフラット35最頻金利、2.0%は玉木氏の投稿の例、他は比較用)
2.0%と3.83%の差は、毎月で約3万円、35年の利息で約1,277万円です。この表は将来の変動金利の予想ではなく、同じ条件で金利だけを変えた仮定の比較です。すでに返済中の人は、今の残高と残りの期間で計算し直すと自分の数字が出ます。
変動型は返済額の見直し時期を確かめる
変動型で実際に払う金利は、銀行が公表する「店頭金利」から契約時に決まった引き下げ幅を引いたものです。店頭金利が上がれば、払う金利も同じ幅で上がります。見直しの時期と反映の仕方は銀行や商品ごとに違い、契約書か商品説明書に書かれています。大手銀行の変動型で最も低い金利は、10月時点で1.2〜1.7%程度と報じられています。
ただ、大手銀行などに多い元利均等返済の契約では、金利が上がっても毎月の返済額は5年間変わらず、6年目に見直す時も直前の1.25倍までという決まりがあります。三菱UFJ銀行はこの決まりを変動型の元利均等返済に適用し、元金均等返済には適用していません。PayPay銀行のように、どちらの決まりも設けていない銀行もあります。
返済額が据え置かれている間は、毎月の返済額のうち利息の割合が増え、元金の減りが遅くなります。利息が返済額を超えると、超えた分は「未払利息」として後に回り、返済が終わる時に残っていれば原則としてまとめて払います。1.25倍の上限は毎月の返済額にかかるもので、金利や総支払額には上限がありません。
固定期間選択型は期間が終わると計算し直す
「10年固定」のような固定期間選択型は、決めた期間だけ金利が固定され、終わると改めて固定か変動かを選びます。その時の返済額は、残高と残りの期間と、その時点の金利で計算し直すため、期間中に金利が上がっていれば返済額もその水準に合わせて上がります。
この型には、変動型にある1.25倍の上限が付かない契約もあります。三菱UFJ銀行の住宅ローン規定では、固定期間が終わった後の返済額の見直しに変動型の上限は適用されません。「固定」という言葉は同じでも、全期間固定と中身が違う商品です。
借換えや繰上返済には費用と失うものがある
変動から固定への借換えには、事務手数料や保証料、登記費用などの諸費用がかかります。三井住友銀行のコラムでは合計で30万〜100万円ほどが目安とされています。借換え先で団体信用生命保険(団信。借り手が亡くなった時などに残高が保険で返済される仕組み)に入り直すため、健康状態によっては借換えができないこともあります。
繰上返済には、残りの期間を短くする型と、毎月の返済額を減らす型があります。どちらも元金が減るぶん利息は減りますが、手元の資金も減ります。住宅ローン減税は返済期間が10年以上あることが条件で、繰上返済で10年を切ると、その年から控除を受けられなくなります。
海外の反応
まず紹介するのは、日本在住者が多く集まる資産運用・税金の掲示板r/JapanFinanceのスレッドです。玉木代表の提案が出る4日前、2026年9月29日に、住宅ローンを持たずに株式投資をしている会社員が「金利上昇は経済全体にどんな影響があるのか」と問いかけました。
前半は企業の投資や賃金をめぐるやり取りで、ここでは途中から始まる住宅ローンの話題に絞って抜粋します。
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
家を買うときに変動金利を選んだ。だから今はきつい。
日本の住宅ローンの75〜80%は変動金利だとどこかで読んだ。だから金利をほどほどに抑えようとするんじゃないか。
(前略)幸い、変動金利には5年ルールと125%ルール(多くの銀行の変動金利型ローンに付く返済額見直しの取り決め)があって、5年ごとの見直し時期までは金利上昇が実際には響かない(編集注:据え置かれるのは返済額で、金利は見直され、元金の減りが遅くなる。補足説明参照)。見直しの際も、125%ルールによって元本返済額の増加は前回の返済額の最大125%までに抑えられる(編集注:多くの銀行では毎月の返済額の上限を指す。補足説明参照)。
そういう仕組みは痛みを先送りするだけだ(しかも実際には痛みを膨らませる)。
おかげで何とか持ちこたえられる人はいるが、その代わりに返済期間はずっと長くなり、支払う利息も金利上昇分から想定される以上に膨らむ(編集注:契約上は返済期間が自動で延びるのではなく、満期に残った未払利息や残高を一括で返す場合がある。三菱UFJ銀行のFAQによる)。
変動金利の住宅ローンは絶対に組むな。いつもそう言っている。先行きは今かつてないほど読めない。固定金利一択だ。金利は上がってほしい……銀行預金は増えるし、円は強くなるし、日本経済はこの30年みたいに眠ったままではなく、また成長するかもしれない。近いうちにもう一度利上げがあると見ている。
場合によると思う。毎月の差額を利息に払う代わりに、NISA(日本の少額投資非課税制度)か何かに回したほうがいいケースもある。
次は、英国の個人向け家計・資産運用の掲示板r/UKPersonalFinanceのスレッドです。2026年9月22日の投稿で、日本の金利や玉木代表の提案とは関係のない、英国の住宅ローンの相談です。
英国では数年の固定期間付きのローンが一般的で、固定期間が終わると、そのときの金利で借り換えるか同じ銀行で商品を切り替えることになります。日本の固定期間選択型の期間が終わる場面に近い状況です。
スレ主は約1%の5年固定が終わり、約4.7%の商品に切り替える予定です。月々の返済は約1,700ポンドから約2,400ポンドに上がり、残り約18年の返済期間を延ばすべきかどうかを尋ねています。
以下はスレッド内のユーザーコメントの抜粋・翻訳です。
金利が変わらないなら、期間を延ばして余裕があるときに繰上げ返済すればいい。何の損もない。何百万人も同じ状況だ。あの1%の商品にはもう二度とお目にかかれない。
期間を延ばしたほうがいい。
働いている持ち家の人の大半は、住宅ローンを抱えたまま退職の頃に完済するのを目標にすべきで、それよりずっと早く返す必要はない。そうすれば、より早く、より多くのお金を持って引退できる。
(中略)
「ローン完済」は実は経済的自由の足を引っ張る。早く投資を始めて、長く運用益を得る力を削いでしまうからだ。
でも、その考え方にはかなりのリスクがある。二人とも失業の影響を受けにくい職業なら話は別だが。無理なく払える小さめのローンを短い期間で返すほうが、住まいに背伸びしすぎるのを防いでくれることが多い。
ローン完済は、FIRE(経済的自立・早期リタイアを目指す人たち)の間でも有力な戦略として広く受け入れられていて、積極的な投資と並行して目指すものだと思う。
ローンを限界まで繰上げ返済して、他に何もお金が残らない状態のほうがずっとリスクが大きい。
同じお金をあらゆる金融商品に回したほうが、何も生まない資産につぎ込むより、圧倒的に早くFIREにたどり着ける。
貸し手が認めてくれるなら、自分なら期間はそのままにして、増えた返済額でやっていけるか様子を見る。ただし、固定期間の途中でも期間延長ができる場合に限る。たぶんできるとは思うが、必ず確認したほうがいい。
理由は二つ。今延ばしてしまうと、いざというときにもう一度延ばせないかもしれない。それに、繰上げ返済するつもりでも、生活に追われたり、単にやらなかったりすることはよくある。だから、継続して繰上げ返済できるだけの自制心が必要だ。
自分は2年のトラッカー型(英国の政策金利に連動する変動型)だから、金利の上昇は少しずつやってきて、あなたみたいに一夜で900ポンド跳ね上がるほどではなかった。期間を短くして金利が上がらないことを祈るという手もあるが、結局のところ誰にも未来は予測できないから、何が最善かは誰にも分からない。
契約と家計から備えを組み立てる
これから買う人は上がった後の返済額で予算を決める
銀行が貸してくれる上限と、家計が払い続けられる額は別の数字です。フラット35の審査では、年収に占める年間返済額の割合が年収400万円以上で35%以下なら基準を満たします。これは借りられる上限を示す数字で、払い続けられる額は家計ごとに別です。
金利が上がる局面で変動型を選ぶなら、今の金利ではなく上がった後の返済額を出し、教育費や貯蓄を削らずに払えるかで予算を決める、という考え方があります。
例えば年1.3%から3.0%へ上がった場合、表の条件では毎月およそ2.7万円増えます。全期間固定を選べば借りる時に決まった金利と返済予定は変わりませんが、今は変動より高い金利から始まります。どちらが得かはこれからの金利次第で、借りる時には誰にも分かりません。
金融庁のライフプランシミュレーターや住宅金融支援機構の計算ツールを使うと、収入と支出の見通しに返済額を重ねて試せます。物件価格が上がっている時ほど借りられる額いっぱいまで使いたくなりますが、金利が上がっても続けられる額で予算を決める方が、後の選択肢が残ります。
返済中の人は見直しの時期と手元資金を先に確かめる
変動型で返済中なら、確かめる項目は三つです。次に金利が見直される月、返済額が据え置かれる決まりが自分の契約にあるか、返済予定表で毎月の返済額のうち元金と利息がいくらずつか。固定期間選択型なら、固定期間が終わる年月と、その時の残高と残りの期間を先に見ておくと、再計算後の返済額の見当がつきます。
備えは、返済額が上がる前に始めると選択肢が多くなります。上がった後の返済額との差額を今から積み立てれば、据え置きが終わった時の負担増をならせます。繰上返済で元金を減らす手もありますが、手元資金を使い切ると、収入が減った時に打つ手がなくなります。
固定への借換えは、返済額が今から上がる代わりに将来の上昇を止める保険のような選択です。表の条件では1.3%と3.83%で月約4.1万円の差ですが、借換えでは現在の残高と残りの期間、提示された金利で計算し直します。比べるのは、残りの期間で払う利息の差と諸費用の合計、そして団信に入り直せるかです。
返済が苦しくなりそうな時は、延滞する前に借入先へ相談する道があり、住宅金融支援機構や民間銀行に返済期間の延長などのメニューがあります。審査があり、認められるかは借入先の判断ですが、延滞してからより前に相談した方が選べる道は多く残ります。
利子補給の賛否と、待てない家計の準備
玉木氏の提案には、支持する理由があります。住宅ローン減税の控除率は適用金利にかかわらず0.7%で、金利の高さは反映されません。金利が低い前提で作られた制度が、利払いが重くなった時代に続いているという指摘は、制度の経緯と合っています。
慎重な見方にも理由があります。Xでは「変動金利を選んだ人を税金で救うのか」という受け止めが先に広がり、玉木氏は同日夜に「変動の補填ではない」と補足する形になりました。すでに借りた人や賃貸の世帯との公平、財源、住宅価格への上乗せといった論点は残り、家計の負担を軽くする一方で需要を下支えし、利上げの効果を一部弱める可能性もあります。影響の大きさは制度設計によります。
提案の対象や固定・変動の扱いは未定で、年末の税制改正に向けた議論はこれからです。制度がどう決まるにせよ、その前に家計の方は動いています。自分の契約と家計を先に確かめた人にとって、制度はあとから乗る補助になります。
金利の予想より、自分の契約を先に読む
確かめる順番は契約、残高、残期間、耐えられる返済額
フラット35の金利が3.8%台になったというニュースは、これから借りる人には現実の数字で、変動型で返済中の人には、いつ、どれだけ効くかが契約ごとに違う話です。固定か変動かの勝敗や次の利上げの時期は誰にも断定できず、確かめられるのは、自分の契約がどの型で、いつ見直され、残高と残りの期間がいくらで、返済額が上がった時に家計が耐えられるかです。
利子補給の提案は、金利のある時代に合わせて支援の形を見直そうという問いかけで、賛否のどちらにも理由があります。制度の議論は年末まで続きますが、家計の確かめは今日からできます。金利の予想を当てるより、自分の契約を一度読み直す方が、備えとしては確実なのかもしれません。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。
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大手銀行の住宅ローンの固定金利が上昇局面に入った時期に、すでに返済中の人と、これからローンを組んで家を買う人の不安や疑問にQ&A形式で答えた本です。著者は宅地建物取引士でファイナンシャルプランナー(CFP)の資格を持ち、住宅ローンの相談に5,000件を超えて応じてきました。
今回の記事で扱った「同じ金利上昇でも、これから借りる人と返済中の人では負担の増え方が違う」という点を、自分の立場の疑問から確かめたい方に向きます。刊行は2023年のため、その後の利上げや税制改正は含まれず、最新の金利は各機関の公表で確かめる前提で読むのがよさそうです。
『一番トクする住宅ローンがわかる本 ’26~’27年版』
新屋真摘著(成美堂出版/2026年8月刊)
全期間固定・変動・固定期間選択型といった金利タイプの違い、元利均等と元金均等の返済方法、諸費用、フラット35と民間ローンの比べ方から、ライフプラン別の選び方、購入後の繰り上げ返済や金利上昇時の付き合い方、返済が苦しい時のQ&Aまでをまとめた年度版の入門書です。巻末には返済額と借入可能額の早見表が付いています。
今回の記事で扱った「借りられる額と払い続けられる額は別」という予算の決め方や、契約の型ごとの違いを、手を動かして試算しながら考えたい方に向きます。


